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第十章 クリスフォード・ラックスファル侯爵領
心を擽る夢のアイテム?ー②
しおりを挟む‥‥あ、それって魔道具の小箱だよね?
義兄は徐に胸の内ポケットから小箱を取り出した。
‥‥うん、めっちゃナチュラルに出したね、今。自然過ぎてスルーしそうになったわ。…あのさぁ、サイズ的に可笑しいよね、ソレ。どっからどう見てもポケットに納まるサイズじゃないでしょ?
多分、この時の俺の顔は不細工だったのだろう。ジェフリーに『お嬢様、お顔がぁ~』って指差しやがったからね。いやそんなことよりも‥‥
引き続き胸の内ポケットから取り出したのは15㎝ほどの‥‥え? 財布?!
公爵子息が財布など庶民アイテムを持つのだろうか? もう違和感しかない。どうみても身分的に不似合いなのだ。貴族然としたお顔とも似合わない。
それを楽しそうに取り出す義兄を、高位貴族の常識眼で照らしては良くないのだろう‥‥と、どうでも良い事を考えていた俺に、義兄は種を明かしてくれる。
庶民アイテムと誤認したソレは、な、なんとビックリ、空間収納の機能を持つ魔道具だったのだ。
【空間収納財布】?の披露にジャジャーンって効果音が脳内にこだましたね今。
そうか小箱はここから出したのか。
そうかあるんだ。魔法の国っぽいアイテム。
目の前の四次げ…‥‥んんん~と。
俺の心を擽る夢のアイテムポケットを見せられて、平常心を保っていられるのか。否、無理だわ。テンション爆上がり。
あっ、大丈夫! 魔力操作に影響はないよ、俺って優秀だからね。ふふふ。
ジェフリーの呆れた目はマルっと無視で。毎度のことだ。
「レティに見せていない? ああそうだったね。見た目が見た目だからかな? まさか革袋が希少な魔道具とは思わないね。ふふ、私も人前で何かを取り出したりしない、ローブを着用していれば別だけどね」
‥‥あっ! いつぞやの刀! あれは四次げ…ううん、ポケットから出したのか! 謎が解けてスッキリ!
「まあ! そんな希少な物をどこで入手なさったの? わたくしも欲しい!」
「‥‥レティだったら欲しがるのをうっかり失念していたね。‥‥レティ、今は事情があって譲れなくて、ごめんね。だけど別の物をプレゼントするよ? それまで待ってて? いい?」
いずれ手に入るとあれば、少々待たされても。待つなど吝かではない!
「嬉しい!! 約束! 約束しましたわよお義兄様!」
これは予想外。めちゃくちゃ嬉しい!
「若、お嬢様って絶対この空間収納の魔道具の価値をご存じないですよ。入手困難なのに。それよりも、若~どこから調達します? 所有者は秘密にしてますもんね~。探させますか?」
「ククク、問題ありませんよ。上手く隠したところでバレるものです。そのうち人を差し向けましょう。快く差し出せば悪いようにはしませんが…。それよりも今はこれを」
義兄は小箱の蓋を開け中の箱を取り出し説明を始めたのだが‥‥
「レティ、この小箱も空間干渉を活かしたつくり…‥聞いていませんね」
「あ~、意識持ってかれてますね? 若、どうします?」
「‥‥ふぅ、別枠で教える日を設けましょうか。今日は仕方ありません」
「ですよね~」
脳内テンション、狂喜乱舞真っ盛り中。な俺に二人の不穏な遣り取りが耳に入ることは無かった。無論、義兄の能力を知る折角のチャンスも不意にしたことも。
はぁ~希少な空間収納の魔道具をここで出してくる義兄が悪いよ~。
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