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第十章 クリスフォード・ラックスファル侯爵領

既製品かぁー①

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「お嬢様、若は長考に入られましたね。休憩にしましょうか?」

俺も思考が逸れていたわ。どうやら続行は無理っぽいね。
それならばと気持ちを切り替え、契約魔法の仕組みや魔法陣を簡単でいいので教えてくれと強請ってみたのだが‥‥

契約魔法の歴史は古く、その殆どが継承の術。それもあって未だ術の全貌は明かされていない。と言うよりも明かしては駄目らしい。皆は術の仕組みを知らないで、その効果を利用しているのだ。

‥‥ブラックボックスみたい。

禁術も古い歴史を有するが研究自体禁止されている。これでは解術技術は生まれないだろう。そもそも契約魔法を不当に解く行為が禁術なのだ。詐欺契約が蔓延る理由も頷ける。

‥‥何だか儘ならないね。



魔法陣は調合された専用の道具で描くのが常識。効率性重視で今に至るのだと。先人の苦労が偲ばれますね~と軽いコメント付きである。
何とも言えない微妙な表情で話の続きを待つが一般的な話ですよと終わられた。


‥‥マジ簡単過ぎね? 手抜き過ぎ、義兄にチクられたくないでしょ?



「‥‥今、無闇矢鱈に知識を詰めても混乱しますよ?」

ぐぅ。真っ当な表情で窘められると言葉に詰まる。確かに。今は術を解くことに集中すべきなのはわかる。でもね、肝心の義兄がだんまり中だよ? もうちょっと教えてくれてもいいじゃん。


その『仕方ないですね』って子供に向ける眼差しは止めれ。


魔法陣の術式も今は定式を書き込めば誰でも同じ効果を発揮する定型式。ただし調合次第で大きく結果が変わるそうだ。このご時世、調合から手掛けて魔法陣や魔道具を作製はしない。専門職人の調合製品を購入しそれを使う、既製品が当たり前らしい。


帝国は魔法術関連の調合も国が主導。かと言って個人制作を禁止にしていない。高位貴族は家門に腕のいい職人を囲い込み独自に研究をさせる。金にモノを言わせってやつか。

貴族は各々伝統のレシピやノウハウを持つ‥‥のだが余程資金に余力がないと自作はしない。国営の既製品で事足りればそれで済むと割り切っている。正確には技術も魔力も足りなくて調合できないだけらしい。能力の低下。均一化に慣れ親しんだ弊害ですよと意外にシビアなジェフリー。


「素材回収から自ら手掛ける若がどれだけ才能に恵まれたお方か。魔道具制作者でも調合が不得手って恥ずかし気もなく言いだす者は少なくないですが、ショボい腕なら辞めればいいですよね? それに比べて若は調合も術式構築も、才能の塊ですからね~」

取り敢えずお前って義兄を褒めるよね? 他は塩対応なのに。まぁお前のその態度嫌いじゃないよ? ウザいと思うけど。


術式に使われる言語は定式化されている。世界的に国力が大きい帝国様式が主流らしいが各国にも自国の術式がある。と言っても描かれるのは数字や神聖文字に記号が殆どなので基準はそう変わらないのだと。逆に文字式は珍しい。
なるほど??
それって、プログラミング言語みたい。
昔は配列や術式の構築を一々計算して描いていたって。今は定式化されているので用途に合った術式を選べばいいそうだ。うわ~先人様ありがとう!
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