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別視点
仮説 義兄視点
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「若君は、ジオルド様が嵌められた理由にお心当たりはございませんか」
何かに耐えるような押し殺したダルの声に、はっとします。考えに没頭し過ぎましたね。
‥‥知りませんよ。そもそも何故私に聞くのですか? 相手を間違えているでしょう。
私を探るように視線を向けるダルの物言い、少々耳障りですね。まるで私が元凶だと仄めかしていませんか。ふふ、私にもそう聞こえたのです。護衛の彼は‥‥ほら、御覧なさい。ギウが殺気漲らせてお前の首に暗器を突き付けたじゃないですか。これ、やんちゃしない。
「私を狙った凶行ですから私達の間に諍いがあったのか知りたいのですね。ですが、収監先に面会と称して値踏みに来られたあの日が初めて会話を交わしたのです。ああ、そういえば付き人はお前ではありませんでしたね」
むさい顔が『初めて聞きました』と雄弁に語っていますね。おや、知らない話でしたか? 覚えがないのか聞いていないのか。常に行動を共にしていたわけではないのですね。
‥‥ふむ、穿った目で見れば閣下の行動は腹に一物抱える者、ですね。態々謀反の容疑者に面会とは酔狂ですよ。敵に付け込まれたとしても自業自得です。
「あの面会は領地に籠られていた閣下にしては大胆でしたね。それまで交流の無い私達です。悪評のある閣下が容疑者に面会とは、目的がどうであれ誤解を招くに充分効果的でしたか。相手に不信感と簒奪の疑いを抱かせた。悪印象を与えたのは他ならぬ閣下です」
「そ、それは‥‥」
口惜しそうなダルには申し訳ありませんが、王弟と共に行動をしていた者に話を聞けれ…‥できれば良かったのですが。今更ですね。
「‥‥若君、申し訳ない‥‥です‥‥ジオルド様が殺されないうちに救出を…‥でなければ…‥」
苦虫を嚙み潰したような顔で私を見ないで下さい。今のお前はむさ苦しいおっさんではありませんか。正直鬱陶しいです。
…‥成程ねぇ。『でなければ』何でしょうか。悲壮な表情で懇願するお前は、主を思う侍従の姿に見えなくはない…ですが。まあ、良いでしょう。私も気になる点を追求しましょうか。
見苦しいダルを正面に捉えたまま、揺さぶりを賭けます。何、杞憂であればそれで良いのですよ。
「‥‥ダル、閣下の生死如何でお前の任務に支障が生じるのですね‥‥」
一瞬、強張った表情を浮かべましたね。ふふ、直ぐに取り繕いましたか。
「あの、若君?…」
『何を言われたのか判らない』そう示す気ですね。
「お前が恩義を感じて仕える話は閣下に容易く付け入る為の設定ですね」
私はダルの強張った顔を‥‥むさ苦しさが増しましたねぇ。見る気が失せました。
「‥‥‥」
「ふふ、閣下との偶然の出会いを仕組みましたね。姉の恩人だと偽り信を得ましたか。潜入目的はジオルド閣下の調査か‥‥。それで、閣下はお前の姉をどこで見つけました…どうやって探し当てたのですか」
「?!」
「お前の焦りは、閣下の身柄を確保できないからでは? 答えなさい」
ダル、否定しない無言は肯定したと同じですよ。さっさと白状なさい。
目を見開くダルの答えをじっと待ちま…‥待てませんね。
はぁ‥‥どこまで義母上は関わっているのでしょうか。いえ、筋書を書いた人は誰でしょうね。まどろっこしいですよ。何ですか、じわじわと私に謎解きをさせるのは。いい加減にして頂きたい。何でしょうね、じっくり観察されている気分です。
「閣下はまだ余罪追及中ですよ、おまけに暗殺事件の判決もまだです。私の予想では閣下は病気療養の名目で隔離されます。ですので直ぐに殺されることはありません‥‥そうやって身柄を拘束ですよ。怨恨や排斥の念と違う理由」
グッと息を飲む気配に怒気が含まれています。ダルの怒りですか。その感情は任務遂行を妨害された怒りでしょうか。それとも‥‥
レティが狙われている理由を思い出しました。それにこの館で保護した二人。帝国人の誘拐事件。頻繁に狙われる魔力保持者‥‥‥ですので閣下の冤罪も、その類ではと推察します。
「思い浮かんだのでしょう? 閣下の必要性。本当に目障りな存在なら罪人として処分すればよい、にも拘らず判決を先送りしています。それは何故です」
「‥‥なぜ‥…」
「‥‥目的は?」
「もくてき‥‥」
何ですか、私の言葉を繰り返すだけじゃないですか。しっかりしなさい。
「閣下の魔力系統や固有の能力を教えなさい。調査済みですね」
レティだって稀有な魔力の噂だけで再三狙われたのですよ。王弟が狙われないと言い切れません。仮説にすぎないでしょうが考慮してもよいでしょう。
王弟に利用価値を見出した人物がいてもおかしくないのです。
「ジオルド様は複合型魔力系統でした。固有は『魔力の可視化』です。あっ、公爵ご夫妻もお嬢様もご存じです…‥若君はご存じありませんでしたか」
なんでしょう、めちゃくちゃムカつきました!
何かに耐えるような押し殺したダルの声に、はっとします。考えに没頭し過ぎましたね。
‥‥知りませんよ。そもそも何故私に聞くのですか? 相手を間違えているでしょう。
私を探るように視線を向けるダルの物言い、少々耳障りですね。まるで私が元凶だと仄めかしていませんか。ふふ、私にもそう聞こえたのです。護衛の彼は‥‥ほら、御覧なさい。ギウが殺気漲らせてお前の首に暗器を突き付けたじゃないですか。これ、やんちゃしない。
「私を狙った凶行ですから私達の間に諍いがあったのか知りたいのですね。ですが、収監先に面会と称して値踏みに来られたあの日が初めて会話を交わしたのです。ああ、そういえば付き人はお前ではありませんでしたね」
むさい顔が『初めて聞きました』と雄弁に語っていますね。おや、知らない話でしたか? 覚えがないのか聞いていないのか。常に行動を共にしていたわけではないのですね。
‥‥ふむ、穿った目で見れば閣下の行動は腹に一物抱える者、ですね。態々謀反の容疑者に面会とは酔狂ですよ。敵に付け込まれたとしても自業自得です。
「あの面会は領地に籠られていた閣下にしては大胆でしたね。それまで交流の無い私達です。悪評のある閣下が容疑者に面会とは、目的がどうであれ誤解を招くに充分効果的でしたか。相手に不信感と簒奪の疑いを抱かせた。悪印象を与えたのは他ならぬ閣下です」
「そ、それは‥‥」
口惜しそうなダルには申し訳ありませんが、王弟と共に行動をしていた者に話を聞けれ…‥できれば良かったのですが。今更ですね。
「‥‥若君、申し訳ない‥‥です‥‥ジオルド様が殺されないうちに救出を…‥でなければ…‥」
苦虫を嚙み潰したような顔で私を見ないで下さい。今のお前はむさ苦しいおっさんではありませんか。正直鬱陶しいです。
…‥成程ねぇ。『でなければ』何でしょうか。悲壮な表情で懇願するお前は、主を思う侍従の姿に見えなくはない…ですが。まあ、良いでしょう。私も気になる点を追求しましょうか。
見苦しいダルを正面に捉えたまま、揺さぶりを賭けます。何、杞憂であればそれで良いのですよ。
「‥‥ダル、閣下の生死如何でお前の任務に支障が生じるのですね‥‥」
一瞬、強張った表情を浮かべましたね。ふふ、直ぐに取り繕いましたか。
「あの、若君?…」
『何を言われたのか判らない』そう示す気ですね。
「お前が恩義を感じて仕える話は閣下に容易く付け入る為の設定ですね」
私はダルの強張った顔を‥‥むさ苦しさが増しましたねぇ。見る気が失せました。
「‥‥‥」
「ふふ、閣下との偶然の出会いを仕組みましたね。姉の恩人だと偽り信を得ましたか。潜入目的はジオルド閣下の調査か‥‥。それで、閣下はお前の姉をどこで見つけました…どうやって探し当てたのですか」
「?!」
「お前の焦りは、閣下の身柄を確保できないからでは? 答えなさい」
ダル、否定しない無言は肯定したと同じですよ。さっさと白状なさい。
目を見開くダルの答えをじっと待ちま…‥待てませんね。
はぁ‥‥どこまで義母上は関わっているのでしょうか。いえ、筋書を書いた人は誰でしょうね。まどろっこしいですよ。何ですか、じわじわと私に謎解きをさせるのは。いい加減にして頂きたい。何でしょうね、じっくり観察されている気分です。
「閣下はまだ余罪追及中ですよ、おまけに暗殺事件の判決もまだです。私の予想では閣下は病気療養の名目で隔離されます。ですので直ぐに殺されることはありません‥‥そうやって身柄を拘束ですよ。怨恨や排斥の念と違う理由」
グッと息を飲む気配に怒気が含まれています。ダルの怒りですか。その感情は任務遂行を妨害された怒りでしょうか。それとも‥‥
レティが狙われている理由を思い出しました。それにこの館で保護した二人。帝国人の誘拐事件。頻繁に狙われる魔力保持者‥‥‥ですので閣下の冤罪も、その類ではと推察します。
「思い浮かんだのでしょう? 閣下の必要性。本当に目障りな存在なら罪人として処分すればよい、にも拘らず判決を先送りしています。それは何故です」
「‥‥なぜ‥…」
「‥‥目的は?」
「もくてき‥‥」
何ですか、私の言葉を繰り返すだけじゃないですか。しっかりしなさい。
「閣下の魔力系統や固有の能力を教えなさい。調査済みですね」
レティだって稀有な魔力の噂だけで再三狙われたのですよ。王弟が狙われないと言い切れません。仮説にすぎないでしょうが考慮してもよいでしょう。
王弟に利用価値を見出した人物がいてもおかしくないのです。
「ジオルド様は複合型魔力系統でした。固有は『魔力の可視化』です。あっ、公爵ご夫妻もお嬢様もご存じです…‥若君はご存じありませんでしたか」
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