転生先は小説の‥…。

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別視点

別行動の裏側 義兄視点ー②

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王家と三公爵の言動に矛盾を感じます。

裏切り者の存在を匂わせますが、確証がないのです。
我等公爵家を蚊帳の外に置き、その後の対応も十全ではありません。

今も監視対象のクリスフォードを野放しに、領地内も荒れています。魔力保持者を隷属の契約で奴隷扱い。もう犯罪ですよ。


『邪魔者義父上をこれ幸いに』と野心を隠さない輩もいるのでしょう。

‥‥三公爵は、敵か味方か。

現状では判断出来兼ねます。迂闊な素振りを見せれば義父上にご迷惑が掛かります。どうしても慎重ならざる負えません。当の義父上はこれ幸いと高みの見物を決め込まれ、隠居状態です。
義母上は多分、ヤキモキされていらっしゃる。それでライオネル達は駆り出されたのでしょう。ふふふ、もう一人、義母上と取り引きされた人物もね。






邸に潜入したのは正解でした。思わぬ収穫です。


初めはレティの突拍子の無いお願いに戸惑いましたが、義父上からレティの希望は極力叶える事と厳命されていますし、痺れを切らした義母上からの密令もあり急を要したのも事実。
ですが、クレア情報をチラつかせるなど、何をお考えでした? 少々やり過ぎですよ。義母上。





取り敢えず、報告を終わらせましょうか。


「報告の続きを」


「主。事前情報の領兵の件です。やはり噂通り悪習が蔓延していました。平民の兵士だけでなく騎士も悪事に手を染めています。どうも素行の悪い者の集まりのようですね。中には元傭兵と噂のある者もいました。調査時間を掛ければ詳細を調べることが出来ますが」

報告者は私の影の護衛です。先行で領兵の調査をさせていました。町の食堂の一件で、です。彼には直ぐに調査を命じました。

「そうですか。ご苦労でしたね。ですがこれ以上の捜査は不要です。後は領主…いえ後任に任せましょう」

時期が来れば領主交代です。領内改革は次代の領主がされるでしょう。これ以上は越権行為、手出し無用です。露見すれば困るのは私です。立場上不味いのです。



他に報告は、なさそうですね。


「では、保護された者と後で会います。可能であれば解術を試みたいですね。その前に彼等の事情聴取を。ライオネルとハイデ、任せました。あと邸の探索ですね。念のためですが通信用や武器となる魔道具を探して見つければ確保です。くれぐれも壊さぬように。これにはミリアとマリア、それにガザ。頼みましたよ」


私は部下たちを見回し‥‥ある一点に視線が止まります。
おや、視線が合いましたね。残念ですが後回しです。



「不審人物の尋問と移送ですが、これは困りました。引き渡し先をどなたにすべきか悩みますね。王家も三公爵も当てになりませんし‥‥」


肝心の監督役であった王家の手の者、そして囮計画の発案者の三公爵。揃いも揃って疑わしいのです。引き渡し後、無罪放免されたら私の苦労はどうなりますか。許せませんね、確実に取り調べる人物に渡したいです。

…‥そういえば今は眠っていました。では暫く放置で。


尋問はクリスフォードから始めましょう。話の中で不審人物が特定できるやもです。後は随時致しましょう。




「何か質問は?」


確認のために言葉を掛けましたが、一人挙手する者がいます。


「若様、ギルガの拷問、私やっちゃっていいですか?」


余りの意気揚々さに呆けてしまいました。

…‥誰ですか、お馬鹿を紛れ込ませたのは。お馬鹿はジェフだけで充分です。
ちっ、そうでした部下の増員要請しましたね、私が。己の迂闊さは甘んじて受け入れましょう。


質問があるかと聞きました。貴女の希望は聞いていませんよ、ミリア。
調きょ‥‥いえ、教育的指導の不足です。戦闘能力のみで選抜をしたお義祖父おじい様に『粗悪品』と返品札を貼って押し付けたいです‥‥返品不可と返されそうなのでしませんが。


ああ、現実逃避はいけませんね。



ギルガを疑っていたので捕縛させました。皆も躊躇い無く行動したので気持ちは同じだったのでしょう。ミリアは目を輝かせて手に怪しげな機材を持っています。物騒ですからソレはしまいなさい。


彼については私が請け負います。

ですが、今は時間が無いので後回しです。転がしておきなさい。撤収時、回収し忘れのないよう頼みますよ。

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