転生先は小説の‥…。

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第九章 王国の異変

裏がある?

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はぁ、気が削がれた。
正直、この男と真面な会話は望み薄だ、疲れる。

それに義兄達に任した以上、信じて待つしかない。戦力外の俺に出来ることは無い‥‥のかな? 会話を止め周囲を見渡した、思い出すのは義兄とギルガの不可解な行動。二人は何かを捜していた。それって何だったのだろう‥…


「お義兄様の探し物は、領主を失脚させるため? わたくしも手伝えるかしら」

つい、呟いた独り言に、会話を諦めた相手が律儀に答えてきた。

「探し物‥…お嬢様、知りたいですか?」
「そうね、知りたいと聞かれたら知りたいわ。わたくしだけ何も聞かされず、知らないのよ。それは嫌だわ。わたくしも少しは役に立ちたいの」
「お嬢様‥‥」
「それにギルガは帝国の指名手配犯の情報が欲しいのでしょう? 手掛かりを探すぐらい。手伝っても良いわね」
「お嬢様‥‥若は大人しくって言ってましたね。怒られますよ~」
「はうっ! そ、そうでした、迂闊な行動はお義兄様に怒られるわ」

やばっ。


目の前に犯罪の証拠物があると思えば気も漫ろだよ。手持ち無沙汰で指遊びしててもね。心は物品証拠に。
皆、早く戻って来ないか、そればかり気になる。

気が漫ろな俺はジェフリーが思案顔でこちらを見ていたことに気が付かないでいた。

「お嬢様、この領地の領主をご存じありませんでしたね」

不意に声を掛けられたと思えば領主について?

「‥‥そうね、全く知らなかったわ」
「領主就任も最近でしたのでご存じないのも仕方ないです。ではお聞きしますお嬢様。元第一王子殿下の処遇をどう思われました?」

はっ? 何を? ジェフリー、それ聞く?! 

「クリスフォード様の? ……陛下の御沙汰です。思うも何も、わたくしに何を言わせたいのかしら」

思わず睨みつけたが、真顔で問うてくるこの男に悪意は見受けられない。
義兄には忠誠心厚く、命令に嬉々として従う変態なのはわかってる。でもレティエルに対しての忠誠心は‥‥? 公爵家に仕える者だから主君の娘にも仕えている感じだ。果たして忠義は?

‥‥義兄の部下ってだけで信じてた。疑うこともなくね。でも本当にこのまま命を託せる人物だと信じていいのだろうか。
俺の剣吞な表情を見たジェフリーが慌てて訂正する。


「あっ、お嬢様、違います違います、誤解です~。醜聞と汚名しかない元王子ですよ、あれだけの騒ぎを起こした元王子に対し、陛下の処罰は軽いと思われませんか。幾ら我が子と言えど、陛下は厳しいと言われるお方ですよ?」

‥‥確かに。俺の見立てでは、廃嫡され平民になるかと思ってた。レティエルの断罪回避に帝国への移住許可。それで舞い上がってたからクリスフォードの後始末に関心がなく‥‥すっかり忘れてたわ。おまけに自分の誘拐やら偽装死やら、最近は逃亡者みたいに隠れた生活…‥う‥‥む? 思い返せば悲惨じゃねぇ? ちょっとどうしてレティエルって悲惨な目に遭ってんの?! おかしくない?! 最近の定番である呑気者の俺に久し振りに好戦的な俺が顔を出す。降り懸かる火の粉を払い除けねばと、闘気が漲る。


静かに俺を見ていたジェフリーが、俺の思考に拍車をかける言葉で追い込む。


「あの陛下ですよ。お子様に対しても厳しい処置をなさるでしょ。それが本当に王位継承権の放棄に臣籍降下で済むと? 本気でそう思われます?」
「何がいいたいのかしら。まるで裏があるみたいな言い方をするのね」

瞼を細めて不快感を存分に表す。咎める程ではないが、勿体ぶった言い方にもイラっと。もちろん顔に出すよ。貴族令嬢だって遠慮なく表情に出すぞ。


「王子は過去の騒動の責任と体調不良で暫くの間、とある場所で幽閉されていました。ですが王家の諸事情でこの領地を拝領し今に至るのです。ふふ、お嬢様~、ねぇ、これって怪い匂いプンプンしませんかぁ~? 陰謀の影~、おかしいと思いませんか? 廃嫡され市井に捨てられても仕方ない醜聞だったはずが領地持ちですよ~、爵位持ちですよ~、裏があると思いませんか?」
「ジェフリーは何が言いたいの? 勿体付けずにはっきり言いなさい」
「お嬢様。陛下の裁可は覆ることはございません。王家側の諸事情で、ただ猶予を与えられたに過ぎないのです」
「えっ? はっ?! 何を言って」
「詳細は若からお聞きになられたら宜しいかと」
「待ちなさい、お前、何を知っているの? ‥‥違うわね。ここは何故知ったのかと問うべきかしら」
「それは、若と俺の関係をお話ししないと‥‥‥」
「はい?」
「お嬢様でしたらお話しても問題ないです。むしろ聞いて頂きたいです。若と俺の関係‥…」




えっ? 関係って‥‥もしかして、生き別れた兄弟だったり?





「ジェフ、どうやら死にたいようですね。お前の望みを叶えるのも主の役目です。ここで一思いに「お義兄様!」「げっ! 若!」‥‥‥只今戻りましたレティ」

そこには見事な作り笑顔で、冷酷無残な眼差しの義兄がいた。

ああ‥…地獄の使者がやって来た‥‥
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