196 / 361
第九章 王国の異変
嘆き
しおりを挟む
これって衝撃の事実?
ガザはクレアと接触して精神干渉されたと義兄は確信した。
証拠はないよ、ないけどね。義兄の研ぎ澄まされた判断力は馬鹿にできない。
‥‥どうでもいいけど、アクティブ過ぎるよクレア。
はぁ‥‥。
疑われたガザは何も喋らない。ここは説明する場面じゃない?
黙ったままでは黙認と受け取られちゃう。弁明の機会を自ら放棄しないでよ。
「あれれ~おっかしぃ~、もしかしてだんまり? 猟犬ちゃんって役立たずぅ」
馬鹿ジェフリー、煽るの止めれ。ガザじゃなくて義兄達が反応したじゃん!
義兄とハイデさんの冷酷な視線に気が付いてよ、怖っ!
二人の凍てつく視線に晒されてもジェフリーは平気だ。メンタル、強っ。
ギルガが堪らず発言の許可を求めた。義兄に意見する彼は根が真面目である。
「若君はガザがクレアから精神干渉を受けたと仰るのですか? 確かに若君の情報とは違いますが、それでも彼がそうだと立証出来ない今、判断を下すのは早計ではございませんか‥…後になって事実が判明した時に間違いだったでは済まされません。再考を、もう一度お考え直し下さい」
取り成しを試みたギルガ、事が事なだけに言わざるを得ないと判断したか。
出過ぎた発言と思われても口を挟んだ彼は、性根の良い人である。
二人の進退に影響する話になっちゃったから非常に雰囲気が悪い。
監視対象から精神干渉され任務に支障を来したと祖父ちゃんが知れば、ガザは間違いなく叱責を受け処罰される。
でも、それは義兄も同じで‥‥もしその指摘が間違いだったら?
迂闊にも口を滑らしたでは済まされず、故意に部下を陥れたのだと詰られれば義兄の評判は堕ちる。功を急いたか、浅慮の判断ミスか。能力を疑われたら致命傷だ。高位貴族の身分は甘くない。
俺達の視線は決定権を持つ義兄に向いている。判断を委ねた義兄の決定に従うしかないのだが、判定が下されたら何も言えない。
「ふぅ、ここで正否の判断を求めるのは時間の無駄です。ダルを召致して下さい。それが一番確実でしょう」
あ、判定はアウトか。
ダルさんでなければ干渉系の解術は出来ない。だから呼び出すのね。
でもダルさん、来てくれるかな。だって冤罪のジオルドを助けようと自ら正体を明かして、母さんに頭を下げた人だよ? 今頃王都で奔走してるでしょ。
それに罪状の元凶義兄が、ここで元気にピンピンしてる。
ダルさんの心情を察して知るべし?
ここは王都から距離が近いから日帰りが可能。所要時間は半日程度で済む。
ダルさんに来て貰ったとして、解術に要する時間ってどれぐらいだろう。
早くて一日。時間が掛かったとしても二、三日?
‥‥それまでガザの身柄、どうするの?
それに、もし、ダルさんとコンタクトが取れなかったら? 断られたら?
ガザの疑惑が払拭されず‥‥これ、収拾がつかなくない?
しまった、クレアの話どころじゃないよね、今。
帝国貴族の彼女が王国で犯罪行為に手を染めた動機を窺い知れたらと淡い期待も実はあった。
だけど‥…真相は藪の中。ガザの記憶の信憑性が危ぶまれ、齎された報告は虚言扱い。まさかのハイデやミリア達の二の舞の心配をする羽目になるとは。
クレアの行動力が恐ろしい。
当のガザは、義兄の決定に至極ご立腹(に見えなくもない)。
怒りからか悔しさからか。言葉を失った彼は肩を震わせ己の心情を体で表現している。そうではなくて言葉で説明しないと伝わらないって判らないのか?
沈黙が追い詰めていると気が付いてよ。
多分、誰が言葉を掛けてもガザは悪印象を持つだろう。
‥‥困った。
義兄の持つ情報を俺は知らないから判断できないし、どちらかの肩も持てない。
徒に時間だけが過ぎるのって、地味にストレスになる。
ガザはクレアと接触して精神干渉されたと義兄は確信した。
証拠はないよ、ないけどね。義兄の研ぎ澄まされた判断力は馬鹿にできない。
‥‥どうでもいいけど、アクティブ過ぎるよクレア。
はぁ‥‥。
疑われたガザは何も喋らない。ここは説明する場面じゃない?
黙ったままでは黙認と受け取られちゃう。弁明の機会を自ら放棄しないでよ。
「あれれ~おっかしぃ~、もしかしてだんまり? 猟犬ちゃんって役立たずぅ」
馬鹿ジェフリー、煽るの止めれ。ガザじゃなくて義兄達が反応したじゃん!
義兄とハイデさんの冷酷な視線に気が付いてよ、怖っ!
二人の凍てつく視線に晒されてもジェフリーは平気だ。メンタル、強っ。
ギルガが堪らず発言の許可を求めた。義兄に意見する彼は根が真面目である。
「若君はガザがクレアから精神干渉を受けたと仰るのですか? 確かに若君の情報とは違いますが、それでも彼がそうだと立証出来ない今、判断を下すのは早計ではございませんか‥…後になって事実が判明した時に間違いだったでは済まされません。再考を、もう一度お考え直し下さい」
取り成しを試みたギルガ、事が事なだけに言わざるを得ないと判断したか。
出過ぎた発言と思われても口を挟んだ彼は、性根の良い人である。
二人の進退に影響する話になっちゃったから非常に雰囲気が悪い。
監視対象から精神干渉され任務に支障を来したと祖父ちゃんが知れば、ガザは間違いなく叱責を受け処罰される。
でも、それは義兄も同じで‥‥もしその指摘が間違いだったら?
迂闊にも口を滑らしたでは済まされず、故意に部下を陥れたのだと詰られれば義兄の評判は堕ちる。功を急いたか、浅慮の判断ミスか。能力を疑われたら致命傷だ。高位貴族の身分は甘くない。
俺達の視線は決定権を持つ義兄に向いている。判断を委ねた義兄の決定に従うしかないのだが、判定が下されたら何も言えない。
「ふぅ、ここで正否の判断を求めるのは時間の無駄です。ダルを召致して下さい。それが一番確実でしょう」
あ、判定はアウトか。
ダルさんでなければ干渉系の解術は出来ない。だから呼び出すのね。
でもダルさん、来てくれるかな。だって冤罪のジオルドを助けようと自ら正体を明かして、母さんに頭を下げた人だよ? 今頃王都で奔走してるでしょ。
それに罪状の元凶義兄が、ここで元気にピンピンしてる。
ダルさんの心情を察して知るべし?
ここは王都から距離が近いから日帰りが可能。所要時間は半日程度で済む。
ダルさんに来て貰ったとして、解術に要する時間ってどれぐらいだろう。
早くて一日。時間が掛かったとしても二、三日?
‥‥それまでガザの身柄、どうするの?
それに、もし、ダルさんとコンタクトが取れなかったら? 断られたら?
ガザの疑惑が払拭されず‥‥これ、収拾がつかなくない?
しまった、クレアの話どころじゃないよね、今。
帝国貴族の彼女が王国で犯罪行為に手を染めた動機を窺い知れたらと淡い期待も実はあった。
だけど‥…真相は藪の中。ガザの記憶の信憑性が危ぶまれ、齎された報告は虚言扱い。まさかのハイデやミリア達の二の舞の心配をする羽目になるとは。
クレアの行動力が恐ろしい。
当のガザは、義兄の決定に至極ご立腹(に見えなくもない)。
怒りからか悔しさからか。言葉を失った彼は肩を震わせ己の心情を体で表現している。そうではなくて言葉で説明しないと伝わらないって判らないのか?
沈黙が追い詰めていると気が付いてよ。
多分、誰が言葉を掛けてもガザは悪印象を持つだろう。
‥‥困った。
義兄の持つ情報を俺は知らないから判断できないし、どちらかの肩も持てない。
徒に時間だけが過ぎるのって、地味にストレスになる。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください
むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。
「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」
それって私のことだよね?!
そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。
でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。
長編です。
よろしくお願いします。
カクヨムにも投稿しています。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる