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第九章 王国の異変
齟齬
しおりを挟む「クリスフォード様の元にクレアがいるのは間違いないのですね」
「はい。この目でしかと確認致しましたので間違いございません」
そう断言されてしまっては、そうかと頷くしかないよね。
う~ん、クレアが姿を晦ましたの、何時だっけ?
隠れ家に母さん達が来た時はクレアは逃げた後で捕まえ損ねたでしょ。
その後の足取りは掴めていなかったよね?
だって帝国軍の人が情報を求めてたじゃん。
それなのにガザはクレアを見つけて監視?
あれ? それおかしくない?
「お祖父様はクレアの情報を帝国軍に伝えていないのですか? この領地に辿り着いた時、帝国軍の方がクレアの情報を欲してましたけれど、何故軍の方はご存じなかったのかしら?」
ガザの持つ情報って祖父ちゃんも知ってるよね。勿論、母さんや親父だって。
多分、知らないのって俺だけ‥…
義兄は知ってたのかな?
「お嬢様、オルレアン様は黒幕が不明だから情報は明かせないと仰っていました。ですので軍部に情報は伝わっていないでしょう」
「そうですか‥‥」
う~ん、やっぱり違和感が。何か変だと思っているの俺だけ?
そもそも何で祖父ちゃんはクレアを追ってるの?
母さんや親父が追うのはわかるよ。だって潜入スパイだったし。
我が家に…レティエルにちょっかい掛けてきた人だからね。
なら祖父ちゃんは?
「ガザ、お祖父様はどうしてクレアの追跡を貴方に命じたのですか? 軍とは無関係なのですよねお祖父様は。でしたら何故なのかしら」
ガザが俯いたのを見た義兄が賺さず答えてくれたが。
「レティ、それは‥‥君の身を案じてお義祖父様は手を打とうと動かれた。だけどクレアだけ捕まえても、黒幕を捕らえない限り危険は尽きないからね。今、お義祖父様は情報を集めていらっしゃるのだよ」
「お義兄様‥…何か誤魔化していません?」
うわっ、胡散臭い微笑! 絶対誤魔化してるよね!
言う気は‥…ないか、ちぇ。
「ではガザ続けて」
「はい。私共の調査で判明しましたのは、この領地の領主がザックバイヤーグラヤス公爵家に報復を企てていることでございます。謀反の冤罪もお嬢様の拐しも、そしてクレアがグレイン達の精神を支配し手先と致しましたのも全て報復を狙っての事。今でも執拗に公爵家を潰そうと画策しているでしょう」
「へっ?! 何それ?!」
驚き過ぎて素が出てしまった。やっべ。
思わず口を押えてたが‥‥おお、皆さんスルーしてくれるのね、さすが。
「レティ、話を続けてもいい? ガザはクレアと接触してその情報を得たのかい? それとも領主の方かな? 何方と接触して情報を掴んだ?」
義兄よ、その胡散臭い笑み、止めれ。腹の黒そうな笑顔になってるよ!
「若君? その質問は私の情報を疑っていらっしゃる‥‥そう受け止めて宜しのでしょうか。オルレアン様の信を失い兼ねない発言は幾ら若君でも看過致し兼ねます」
「ああ違うよガザ。君の調査結果と私のとでは少々齟齬あるようでね。お義祖父様も義両親にも報告済みだ。クレアに関しては君達に委ねたと私は聞いていたのだが、今回君は義母上から私と接触するよう指示を受けたね? それは私と猟犬の君の報告が違うからではないか?」
「な、何を仰りたいのか…私には‥…」
「では言い直そう。君はクレアと接触した。そうだね?」
この場の空気が凍るような冷たい義兄の声色。
沈黙が支配するこの場の空気をぶった切る様に聴こえた間の抜けた声。
「あ~若~、それ、不味いですよね~。あ~あ、猟犬ちゃん、やっちゃった?」
さすがジェフリー、空気を読まん男だ。
「ジェフ、煩いよお前」
「若君、どういうことですか? ガザ殿、貴方はクレアと接触したのか?!」
ガザに食い付くギルガ。その二人にハイデさんが苦痛の表情で声を掛ける。
「ギルガ、それにガザ、クレアに気付かれた時点で、もう遅いのですよ。私も支配されましたから判りますが彼女の人の懐に潜り込む才は侮れません。皆油断し接近を許すのです」
「そうだねハイデ。では、ガザよ、答えなさい。‥‥答えられないか? ならば質問を変えて、君はいつからクレアの監視に就いた?」
「わ、若君‥‥私は‥…」
「本物のクレアが君の監視下であれば答えられるだろう。違うかガザ?」
え…‥ガザ、騙されてたの?
マジで?!
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