転生先は小説の‥…。

kei

文字の大きさ
上 下
181 / 361
第九章 王国の異変

ギルガの正体ー③

しおりを挟む

ギルガはライフをゴリゴリ削られたのではないだろうか。一回りも身体が小さく見える。


「さて、皇城勤務の武官ですか。指揮系統に支障を来さない範囲で尚且つある程度の酌量が持たされるとなれば副隊長ぐらいでしょうか。ああ、わかりましたよ貴殿の正体が」

「‥‥どうぞ続けて下さい」

「貴殿は皇宮に仕える騎士と言ったところでしょう。皇帝直属の近衛隊かと思いましたが、こんなことで動くとは思えないので、皇族専属の騎士あたりが妥当かと。ふむ、何人かいる皇子の誰かでしょうか? ‥‥後継に関わることで最近異変がありましたか?」


「お見逸れ致しました。今までの無礼をどうかお許し下さい」


おお~ギルガが観念して白旗上げた。




「いいでしょう。では改めて自己紹介を。ギルガは本名ではありませんね?」

「‥‥はい。私の名はギルベルト・グリンジャ・タッカーソンと申します。タッカーソン侯爵家三男です。皇宮に仕える魔導騎士隊『青の盾』に所属しております」

「そうですか、青の盾の魔導騎士でしたか」

「エリート部隊のお坊ちゃん…‥」

「へっ? えっ? は? まどう‥‥騎士? 青の盾?」

上から義兄、ハイデさん、俺。俺以外は知っているみたいだ。


「ああレティは知らないか。皇宮には近衛騎士隊以外にも皇帝陛下をお守りする『赤の盾』と御子様達をお守りする『青の盾』と呼ばれる皇室専属の魔導騎士隊が軍部とは別組織で存在していてね。どうやら彼は皇室の護衛みたいだね。レティ、聞いた事ない?」

「あら初耳ですわ。わたくし軍部や騎士団に興味ございませんし」

「ふふ、そうだったね。レティは物作りに興味があって騎士に惹かれるわけじゃないから知らないか」



うん、まぁそう言う事にしておこう。興味のないことに頭使いたくないから知らないのだ。知っておくのは自分を守ってくれる人たちだけで充分だよ。


で、その仰々しい組織の人が何の用で?



「では、ギルベルト殿。貴殿が『青の盾』と名乗られたが証明出来ますか?」

「‥…はい。これをご覧ください。我が証明となる紋章でございます」



そう言って彼は左手の甲を見せながら何か呟いた。
するとキラリと一瞬輝きを持ったと思えば何かの絵模様が浮き彫りに。



「こ、これは? 何ですの?」

「ほお、紋章ですか」

「‥‥‥」



「はい、これがその証明になります」



うわお、何そのカッコいいの。ちょっとキラリ光ったじゃん!
何ともファンタジックな世界ではなかろうか。ついムズムズ好奇心の芽が擽られてしまったではないか。



‥‥いやねぇ、まあ、ついだよ、つい。
ちょっと好奇心って言うか、出来心って言うか‥‥
はい、ごめんなさい。やっちゃいました俺。



「うわぁぁぁぁーー! も、紋章が、紋章が!」



「あら、取れました?  若様、これは本物ではなかったのでしょうか」

「‥…ぷっ。くふふふ…‥ああすまない、でも、も、紋章が‥‥ははは」

「あ~ごめんなさい‥‥態とじゃないのです。つい、てへっ」



がっくり膝を付いたギルベルトは哀れ無残、灰と化していた。
わちゃー燃え尽きちゃった感じ。

そう、俺は物珍しさから彼の紋章に触れて魔力を吸い取っちゃったのだ。
うん、別に意味はないのだ、何となくキラリ光った気がしたからね、何だろう? と思って。魔力も感知したから思わずってのが理由。
何か善からぬ罠でもあるのかな~って。

立派な紋章が今は見る影もなく消え去った。彼の左手の甲には何も残っていなかった。


「ははは、嘘だ嘘だと誰か言ってくれ‥…紋章が消えたなんて‥‥私はどの面下げて陛下に‥‥ああ、何てことだ‥…」

あれか、男の勲章ってやつか‥‥


「鬱陶しいですね。大の男が泣き言とは。それに正体を隠して近付いたのですからある意味自業自得では?」

流石ハイデさん、辛辣さは変わらない。



「さて、ギルベルト殿。貴殿の紋章は消えたが、体調に変化はないだろうか。ぷっ。くくく…‥まあそう落ち込まないで下さい。レティも悪気があったわけではないのだから、ちょっとした少女の悪戯ですよ。それに若しかしたら元に戻せるかもしれませんしね」


「は! 本当ですか?! なら早く元に戻して下さい!」

「まあ、まあ、落ち着いて。悪いようにはしません。ですが‥‥そうですね、私はまだ貴殿を信用しておりません。さてどうしたものか」


うわー、義兄、足元見て吹っ掛ける気か?


「わ、私に何をさせる気だ?!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

処理中です...