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第九章 王国の異変
ギルガの正体ー①
しおりを挟む「漸く静になりましたね。ではそろそろ正体を白状してもらいましょうか」
「えっ? お義兄様? 彼の正体とはどういう‥…」
「レティ、怖がらせてごめんね。大丈夫だよ。敵ではないから安心して。彼は私達に真実を隠して近付いたからその理由と正体を教えて貰うだけだからね」
イヤ、全く笑っていない目で安心してと言われて安心する奴はいるのだろうか。
でも偽装を見抜いた義兄を信じて任すしかない。義兄って騙し騙されって得意そうだし。人の裏をかくの好きそうだし。出し抜くのも好きそうだし。
俺には向いていない。現にギルガを疑うことなく信じてたのに。
信じていた奴に裏切られた時の失望感は大きいのだぞ、くそ―お前なんて義兄に泣かされろ。
「では素直に明かしてくれると私も助かるのですが貴殿もそう簡単に正体を明かしては上司に申し開きできないでしょう。ですがこのまま知らない振りと言うのは気に食わないので、私が言い当てます。貴殿は嘘を吐くのを止めるだけで良い。これなら許容範囲でしょう?」
「ムグゥグ‥‥‥」
「貴殿一人ここに置いて出発しても私は構いません。それだと不味いのは何方でしょうね」
「グウ」
「ふふ、了承ですね」
あっこれ、ギルガの正体知っているな? 知っててこれやってんだ。さっきから口調も改めてるし。本当、こいつ苛めっ子だよね。
「さて、貴殿は情報部の連絡係と名乗られましたが違いますね。何故身分を偽って連絡係などと下っ端な立場を取りましたか。我等が油断すると思いましたか。甘く見られたものだ。まあ今回はいいでしょう。‥…では続けましょうか。貴殿は武人、それも武官の出だ。大方、皇城勤務なのでしょう。単身王国に乗り込むとは腕は相当と見て間違いないね? では腕の良い武官が単身で動く理由となると逆らえない人物から命令されたのでしょうね。こんな無茶な命令を出せる相手ですか‥‥ふむ、やんごとなきお方?」
「ゴブゥ‥‥グフゥ」
ギルガ、真っ青だけど大丈夫?
義兄の追求、まだまだだよ?
「‥…ふぅむ、貴殿が我等と‥‥いえ違いますね、レティと接触を図ったのは何か我等にさせたいがため? 単にレティの身の安全を考慮してとは思えませんね。彼女を使おうだなんて‥‥まぁいいでしょう。それが許されるお方なのでしょうね。貴殿の上役様は」
ギルガは真っ青になりながら義兄を恐ろしいものを見る目で見ていた。
ああ、わかるわかるよその気持ち。恐ろしいよね~この人。
でも騙したんだから、もう少し恐怖を味わってね!
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