転生先は小説の‥…。

kei

文字の大きさ
上 下
159 / 359
第八章 出揃った駒

帝国人のダル

しおりを挟む

ダルもアッシア語を難なく使っている。これって‥‥俺の訝しむ表情に気が付いたのか苦笑いのまま応えてくれた。


『私もギルガも帝国軍人です。今から証明紋をお見せ致します。どうぞお検め下さい』

身分証明出来る代物を所持していたのか。自ら提示すると申し出てくれて助かったよ。これで揉めることなく敵か味方かわかるのだと俺は一先ず安心が欲しかったから内心かなり嬉しい。

先ずは胡乱な二人の証明紋の検証を護衛に託す。
「お二人は近付かないで下さい」って釘を刺されたよ。まだ護衛はピリついている。でもでもね、君達支配系のダルに近付いて大丈夫? 操られないかなぁと頼りないと思ったわけじゃないよ、ドキドキ心配しちゃったの。




『確認取れました。二人とも帝国軍の諜報員で間違いありません。奥様これ以上関わるのは宜しくないと…‥』

『もう既に巻き込まれています。少しぐらい秘密が増えても何とかなるわ。肝心の説明もまだ聞いていないし‥‥』

『奥様、軍の規則に抵触致しませんか』

『あら、わたくし達は軍人ではありませんわよ。いやだわオホホ』

護衛を見る母さんの目に強い圧を感じた。目力強っ! 護衛、その身震いはトイレ? いや武者震いにしておこうか、男のプライドを傷つけちゃうもんね。

どうも一般人である俺達に軍法が適用されないと言いたいのだろう。ちょっと大丈夫かなと思わなくもないが‥‥知りたがりの俺と母さんの好奇心を抑えられる奴はこの場に居ない。運が悪いね護衛くん。


ふふふ。だってだって、スパイ、スパイだよ! 生スパイだよ?! うわ~マジモンだよ~やっべ、俺のテンション上がるわ~





『先ずは貴方達にお礼を言わなければなりませんわね。助けてくれてありがとう』

『勿体ないお言葉です。お役に立てて光栄でございます』

控え目なダルさん。良かった裏切られたんじゃなくて。マジ落ち込んだからね。


『ふふ、そう畏まらないで。貴方達には後で褒賞を渡しましょう。何が良いか考えておきなさいな。と言ってもわたくし達が無事に帰れたらのお話ですわよ』

母さんの綺麗な微笑。数多の男を惚気させるその笑み。知ってる、俺知ってる。それ疑いの目だよね。めっちゃ怪しいと睨んだ相手に向ける極上の笑みだよね。

ええーーー何で? この二人疑ってんの? 助けてもらったのに?
母さん、恩を仇で返す気? ちょっとヤキモキしちゃう。


『二人は潜入捜査の任務中ですわね? 規則違反を犯したと軍法会議に懸けられてもおかしくありません。何故そのような行動を? 貴方たちの正体を明かした理由と目的を述べてもらいます』

護衛も頷く、それな。


『はい。緊急事態だと判断致しました。その上で公爵家に恩を売ろうかと』

意外に明け透けな物言いのダルさんに驚かされる。その言い方でいいの?
ねぇねぇこの緊急事態って俺達を指してる? それともジオルド?
待てよ、ジオルドはダルの正体知ってるの? 知ってて仕えさせてたの? 頭の中を『?』で一杯にした俺を無情にも置いてけぼりで皆は話を続ける。



『私の持つ情報を買って頂きたい』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...