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第六章 狙われた理由。
流された情報ー①
しおりを挟む俺達はジオルドのタウンハウスで匿って貰うことになった。
思うことはあるが今は致し方ないと諦めた。母さんも一緒だが、これいいの? 我が家には母さんの替え玉がいるから当分いけるって、豪胆だよな。
ジオルドも普段は領地に居るからここは好きに使っていいと許可をくれた。
今は今後の対策と俺に危機管理能力の乏しさを指摘するための話し合い中だ。
悪かったな~危機感なくて。俺だって狙われる理由、よく知らねーし。どうせ王家の嫁問題とかお家の敵とかだ‥…違うの?
二人の視線が‥…痛いなぁ。すみませんお茶のお代わりください。
両親もジオルドも俺が狙われた理由を分かっている。
一番理解していないのが当の本人だってことも分かっていらっしゃる。
母さん的にはじいちゃん家の方が安全だと思っているのが分かる。もともと時期が来たら帝国に逃がす手筈だったらしい。それが前倒しになる程度の認識だ。早く避難しろと急かしたい心境なのだろう。
俺を心配して手を打ってくれていたのは正直嬉しい。どんな状況でも先ず俺を優先してくれる両親に本当に感謝だよな。恥ずかしいけど愛されていると思う。でも、それとこれとは話は別だ。仕掛けた奴も手を出してきた奴も俺は許せない。レティエルにちょっかいかけた奴にはそれ相応の報いを受けてもらいたい。いや受けさせる。それは譲れない。だって腹立つじゃねーか。
俺の決意をお嬢様言葉で言うと迫力ないよね。二人の視線が益々痛い。
駄々っ子を見る目の二人、何気に落胆してない? 気の所為ならいいんだよ。
仕切り直しだとジオルドがレティエルの狙われる理由を教えてくれた。
「どうにもターゲットである君がこうも呑気だから心配になるよ、困った子だ」
イケオジ面づら全開のジオルドに言われた。お前デスってない?
その前に、お茶下さい。冷めちゃったの。
彼は、犯罪組織の動きが目立ってはいるが自国も他国も狙っている可能性は大いにあると指摘する。
え~~? すみません初っ端から茶々入れます。
レティエルって犯罪組織から狙われていたの? いつ? どこで?
他人事な態度が気に障ったようだ。ジオルド、蟀谷に青筋出てるよ。
母さんがバツの悪い顔でジオルドに説明している。それが砕けた口調でとっても仲良しさんに見えるんだけど‥…気の所為かな。
母さんの説明では事前に義兄が犯罪計画を潰しまくっていたって。この国を根城に商会を隠れ蓑にしていた人身売買の組織は潰れてメイン幹部の消息は不明だと。
今は情報操作で組織は存続されていることになっているらしい。ジオルドはこれは知らなかったって。
はぁぁぁぁーーー!? 義兄、おまっ何やってんのぉぉーーー!?
えっ、もしかしてあのメモ書きの商会‥‥?
…‥俺、知らなくていいこといっぱいあるんだろうな‥‥嫌な汗が‥‥
標的となった理由がレティエルの特殊魔力は『治癒系』で特に病に特化した使い手だと情報が流れたことだ。ただの高位貴族の魔力持ちなら依頼されない以上組織は動かない。
そう言われても俺、治癒系じゃなくて捕食系だよ。怪我とか火傷とか外傷は治せないし、俺が喰らうのは菌だよ? あ、栄養分? もだっけ、不明な点が多すぎるんだよなぁ‥…
「レティエル嬢、君はこの国や帝国、その他の国々に『治癒系』別名『癒しの手』の使い手である魔力持ちはどれぐらいいると思うかい?」
やだ、何その小っ恥ずかしいネーミング。誰が付けるの?
俺の心の声が聞こえたのかジオルドが睨む。いかん真面目に。
「‥‥癒し‥‥の手? それは初めて耳に致しました」
「だろうね。ここ百年ほど存在は確認されていない。まあこれは確認が出来ていないだけで存在自体がいないとは断定できないのだよ。これが何を意味しているのかわかるかい?」
えっ? この人、何勿体付けているの? やば、また睨まれた。
「そ、それは存在自体を隠しているからでしょうか」
「そうだね、隠す‥‥と言えば自発的な意味合いを感じられるが正確には違う。隠される、隔離される、表に出せない存在として秘匿されるのだ。勿論それは権力を持つ者によって」
嫌な話になってきたな~と他人事のように聞いていたからかジオルドが「自覚がないのかな? この『癒しの手』の使い手は君だよ」と小っ恥ずかしい渾名を付けられた。
「はあ?」あっやべ、素でちゃった。じゃなくて、なんだって!?
…‥知らないうちに俺、激レアキャラにジョブチェンジしてた。
マジか。
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