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第五章 もうゲームとは別物です。
記憶の果てー①
しおりを挟む「体調はどうだい? 君の場合、長らく記憶操作された弊害で精神が不安定だ。無理をしなくて良い。それから僕のことはジオルドと呼んでくれていいからね」
ジオルド様はそう言って私を気遣い休ませてくれた。
こんな怪しい私でも親切に接してくれる。
私はライラと本名を名乗りジオルド様の御前から辞した。
私の原動力となった記憶は嘘だった。作為されたものだった。
私の心にポッカリと穴が開いて、私はその穴に落ちそう。今の私の心は弱い。
何かをしなければ、誰かに必要とされなければ、今の私は正常でいられない。
私が持つ本当の幼き頃の記憶も今では確証が持てない。怖い。
これも嘘かと疑ってしまう。
何時から芽生えたのか不明な私の復讐心も。
失くした家族を悲しみ、また懐かしく思う思い出も。どこか歪に感じる。
記憶の一貫性が欠けている。
気持ちの悪いことに私の家族の思い出が二人分ある。私と見知らぬ誰かの思い出が。
ダルさんが親切に教えてくれた。
かけられた記憶操作の説明と解除した後の弊害で他人の記憶があることと情緒不安定になることを。
おかげで混乱はあるが精神を病むほどの衝撃にはなっていない。
二人分の記憶‥…そして二人分の感情がある。
どちらかが植え付けられた記憶だそうだ。
解除された直後は取り乱して泣き叫んでしまった。
日が経ち今は落ち着いた。
ダルさんがずっと寄り添って私のメンタルケアに尽力してくれたから。
ダルさんありがとうございます。
時間が過ぎた今なら、嘘の記憶がどちらかはわかる。
あれほど執拗に思っていた復讐心が今は嘘のように凪でいる。
こっちの記憶が嘘だった。
私は嘘の復讐心で主に背いた。その事実に私は情けなくて悲しくなった。
自分の不甲斐なさと非力さと迂闊さに落ち込んでいた。
それを見かねたダルさんがジオルド様に進言してくれたみたい。多分だけど。
私の記憶から犯人とザックバイヤーグラヤス公爵家に入り込んだネズミを炙り出そうと持ち掛けてくれた。
私がまだ役に立つと慰めてくれたんだと思う。
提案されて私は目下の目標が出来て、今は落ち着きだしたから。
罪を犯したと後悔していた私の気持ちが、犯人を突き止めることで少しでも贖罪になればと切り替えることが出来た
からだ。
漸く、荒れていた心が落ち着き始めた。
精神系の魔術は継続して使用しないと以外にも脆い、齟齬を感じたり自我が強いと解除されるから支配系としては不
便だと思われているのも事実。
だけど持続可能な状況下なら、これほど強力なものはない。
そう仰ったジオルド様は魔力が視えるので脅威でもなんでもないと思える。
精神支配された者でも見抜けるから。
私がこの方に売られたのも僥倖だったかもしれない。今はそう思える。
これからジオルド様に事情聴取される。
気遣いの言葉は頂けたが内心は早く事の真相を掴みたいと思われる。
多分だけど、カレンシア様付きの侍女だった私が術にかかったのだから思うことがおありなのだろう。
気掛かりを払拭したそう。それについては私も同意見。
犯人に繋がればよいなと思う。
あっ! 私、私達、レティエルお嬢様を誘拐した!
とんでもないことを思い出した。
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