転生先は小説の‥…。

kei

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第三章 攻略対象三人目 第二王子は曲者です。取扱い注意。

おまけ:思い出すー②

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さて、俺は義務を果たしたのだ後は好きにさせてもらおう。

さっさと踵を返して俺は目立たない場所を探した。


周囲は見事なバラが咲き誇っていた。

多種多様で彩鮮やか景色に俺は釘づけられた。

庭園の価値など良くわからない俺でも流石と唸る。立派だ。

俺は王妃招待のお茶席であることを忘れ庭師が丹精込めて育てたバラを一心に見て回っていた。



茶席から離れた植え込みの陰に人影が見える。

誰かいるのか?

俺がひょいと覗き込むと、幼児がしゃがみ込んでいた。

(なんだこいつ?)

よく見ると銀に近いブロンド、いや銀髪だ。

サラッとした髪質か、絹糸の様に艶感がある。

ちょっと目尻が下がり気味で、これまた愛らしい。

えーと、瞳の色は青? 薄い緑かな。翡翠色だ。綺麗な瞳だな。

これまた将来は美形決定だ。


‥…なんだろう悔しさが沸き起こる。


よく見ると上等な洋服を着ていた。

俺も上等な品質の衣装を着ているが、違う。もっと上質だ。

もうこれだけでこの幼児が拠所ない御身分だと物語っている。


(えっえっ? この子もしかして第二王子じゃね? なんでこんなところでしゃがんでんの? しかも一人? ありえねー!!)


周囲を窺うと人がいるのが分かる。隠れて見ているな。
護衛か。驚かすなよな。

多分、王妃に見つからないようにしてるんだろう。

ならこんなとこ来るなよな。まったく。



どうしよう、こいつは見なかったことにしよう。そうしよう。

触らぬ神に祟りなし!

無視だ。ここには誰もいない!


俺は素知らぬ顔で素通りを決めた。


なのに、こいつときたら‥‥‥


「あっ、見つかっちゃった。ねえ誰にも言わないで」


はあ! 気安く声かけんなよ。

知らない人に声かけちゃいけませんって教わらなかったのか?

ダメじゃん! 


「えっとぉ。‥‥ここで何を?」

「ねえ見つかっちゃうよ。こっちに来て」


(おおーマジですか。勘弁してー)


「僕、ライムフォード。ねえ君は?」

(ぐぬぬーやっぱり第二王子。おい、自分から身分明かしちゃだめじゃん)

俺は仕方なしに答える。

「失礼しました。ライムフォード第二王子殿下。わたくしザックバイヤーグラヤス公爵が長女レティエル・ザックバイヤーグラヤスです。初めまして」

俺はニッコリ貴族の笑みで自己紹介をした。

(はー、何で出会ちゃうのかな‥‥)


自分の不運を呪った。



話を聞くと(というか聞かされた)第二王子は兄を捜してうろついていたんだと。
お茶会とは知らされていなかったようだ。

お付きの者達は知っていただろう?

何やってんの? 王妃に見つかったら大変じゃん。


「ライムフォード第二王子殿下、ここに来ていることお母様は知っているのですか?」

俺はやんわり聞いてみた。


王子はしまったと言う顔で内緒できたとのこと。


そうかそうだよな。母親知ってたら反対するよな。

お付きの者達、処罰されないと良いけど‥…。

俺はちらりと周囲を見やる。

ちょっと離れてるけど顔色は‥‥悪そうに見えた。



王子は周囲の者などに気付かずに話しを続ける。

僕、独りで寂しかった。としょんぼりしながら言う。

(ええー可愛いぃ。何なのこの可愛らしい生き物。可愛がってあげたくなる!)

俺は子供に弱いのだ。くっそー。
俺の庇護欲が搔き乱されるわ。


幾ら攻略対象者と言えど未だ幼児だ。大丈夫だよな。

学園に入学しなければゲームスタートにならないだろう。

でなければ下位貴族の子共など王族に会えるわけはない。

俺はそう思った。

だから今は第二王子と話をしても大丈夫。と内心自分に言い聞かせて

寂しがりのこの王子の相手をした。
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