転生先は小説の‥…。

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第三章 攻略対象三人目 第二王子は曲者です。取扱い注意。

おまけ:思い出すー①

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おまけです。

レテェルと王子二人が初めて会った日のことです。


◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇



俺は邸宅内で大人しく待っていた。

辛抱しているのだ。

早く自由になりたいのに‥‥。はぁ。



暇な時ほど碌なことを思わないものだ。

俺は一抹の不安から現状を顧みた。


(‥…俺は破滅を逃れたのか? 第二王子は公爵家の弱みを握った状態だ。このまま俺が帝国に行けば逃げ勝ちできるのか? 王子が黙っているのは後ろ盾が欲しいからだろう。ずっと弱みを握られたままでいいのか?)


どう考えても第二王子ルートは潰せていない。

今は協力関係かもしれないが、いつ覆させられてもおかしくない。

薄氷の上を歩くようなものだ。

こいつを無効化にするか。俺だけ帝国に逃げ延びてそれで済むのか。

まだまだ結論が出せない。

はーどうしよう。




それにしても第二王子ってこんな食わせ者だったか?




俺は思い出していた。

王子達と出会った時のことを。

俺達が出会った頃は王子達は異母兄弟でありながら関係は良好だった。

どちらかと言うと兄貴の後ろに隠れるような奴だった。




あれは第一王子の6歳の誕生日を迎える少し前か。

王妃による第一王子の伴侶候補の選出のためのお茶会だった。

お茶会という名の見合いか?

参加者は勿論上位貴族だ。下位など論外だ。

今回だけは派閥の意向が感じられなかった。

今思えば王妃も必死だったんだろう。


俺は参加拒否を示していたが幼い女児が権力に勝てるわけもなく俺は呆気なく負け強制参加させられた。


その日が俺と王子達の初顔見世になったんだよな。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




―――レティエル6歳になる少し前。王宮内庭園にて。



今日は王妃主催のお茶会日。招待客は勿論第一王子と年回りの近いご令嬢だ。



「本日はよく集まってくれました。あらそんなに畏まらなくてもよいのですよ。ふふ。皆さんとても可愛らしいわね」

王妃はとても優しい笑顔で俺達の緊張を解こうと気さくな感じで声を掛けてくれた。
これから家順毎に挨拶が始まる。

ああ気が重い。


だがこの場にいる以上、公爵家の子として迂闊な真似は出来ない。

設定通りなら俺は第一王子の婚約者になるのだが‥‥。

どうにも避けられないな、これ。

幼児に見合いをさせ、政略の為の婚姻を結ばせる。

幼き身にえげつない重荷を背負わせるな。鬼だな。

ああ嫌だ。


俺は記憶を取り戻して役2年が過ぎていたが未だ貴族の考えに馴染めないでいた。
何とか取り繕って及第点をやっと取っている現状だ。

ああ、大人の精神で良かった。と、つくづく思うわ。

どれだけ自分を殺さないといけないか。

ああつれえ。気分は会社勤めのサラリーマンか‥…。

あー溜息しか出ないわ。




周囲を見渡せばおこちゃまな女の子達はウキウキ感が見え隠れしているのだが騒ぎ出す子はいない。
さすが上位貴族。躾が厳しいんだろうね。

だけど皆の王子を見る目はキラキラ輝いている。

ああ、この王子、顔だけはいいもんな。

光が当たってか昼間だからかブロンドの髪がきっらきっらに輝いている。
瞳の色はマリンブルー。それに目鼻立ちも整って綺麗な顔立ちだ。
王道王子って感じ。成長しても美形は確定だな。


うん、羨ましくないぞ。


ああ、子供のこいつ、ほんと愛らしい。素直に笑うんだよ。


周囲を観察することで暇つぶしをしていた俺の順番が来た。


俺は意を決して王子の前に立つ。


「王妃様、クリスフォード第一王子殿下、お初にお目にかかります。わたくしザックバイヤーグラヤス公爵が長女レティエル・ザックバイヤーグラヤスでございます。本日はお招きくださいましてありがとう存じます」


令嬢としてのカーテシーを見事に披露した俺は達成感に満ち足りていた。

ふん。どうだ。練習の甲斐あった。


俺を見ていた第一王子はぽーとして「あ、ああ‥‥」とだけ。

おい、お前大丈夫か? ちょっと心配したよ。他に言葉ないのか?

王妃の笑みが苦々しいぞ。



さて、俺は義務を果たしたのだ後は好きにさせてもらおう。

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