転生先は小説の‥…。

kei

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第一章 攻略対象一人目 正しい第一王子の取り扱い方

クリスフォード王子 ①

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あれはいつの頃か。俺はレティエルに剣術を見せるのだ!と活き込んで彼女を王宮に呼び寄せた。

レティエルに見られると変に緊張してしまうのだが、日頃の鍛錬の成果を出す時だと胸を張った。

俺は子供ながらにも実力があると思っていた。母上や周りの者達が手放しで褒めてくれたからだ。

だから俺は弟である第二王子おとうとに挑んだのだ。模擬戦だ。勝つのが当たり前だと思っていた。



第二王子おとうとは強かった。俺では勝負にもならなかった。

レティエルは落ち込む俺を慰めてくれたがきっと内心呆れていたのだと思う。失望させたのだろう。

俺は‥…そう思うとレティエルの顔を見るのが辛くなった。



第二王子おとうとは俺と変わらぬ体躯なのに剣術は俺より上手く師範の評価も良かった。

勉学もそうだ。あいつは物分かりが良い。覚えも良かった。物事の理解力が俺とは違った。俺がなかなか理解できないことをあいつは一度聞いてすぐに理解した。嫌な奴だ!

日を経る毎に優劣が誰の目にも見て取れたのだろう。次第に俺よりもあいつを褒める声が多くなった。

不出来な第一王子おれ。‥‥陰でそう揶揄されていた。



母上は俺が第二王子おとうとより劣ることなどない。教える者達が悪いのだと良く仰られていた。

母上がそう仰るのだから俺はそうなんだと信じた。

俺は努力している。思うほどの結果が得られないのは教師や師範の教え方が悪いのだと詰った。





成長していくと、第二王子おとうとだけではなくレティエルの優秀さも際立っていた。

あの家の者は兄妹共々ずば抜けていたな。

彼女の優れた才能は多方面に発揮され、領地の繁栄に貢献していると聞いた。

俺と同じ年なのに。


第二王子おとうとは父上からよく褒められていると耳にした。

俺は‥…俺は。

レティエルも俺を不出来な王子と嘲笑うのか?

あれほど鮮やかで素晴らしかった俺の世界が色あせくすみだした。
もう何も楽しくはない。



俺は何のために辛い勉強や鍛錬をしているのだろう。

何のためなのか誰の為なのか。意義が見いだせない。

ああ‥‥‥そうだ。

母上が望まれるのだ。

俺が次の国王になるのだからこれぐらいできて当たり前だと仰る。

そう。俺は次の国王だ。それ以外は許されないのだ。

母上も周囲の者も許してはくれない。

なれなかったらまた失望させてしまうのか? 

失望させた俺は‥‥見捨てられるのか?



ああ俺は‥…不出来な王子だ。
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