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第一章 攻略対象一人目 正しい第一王子の取り扱い方

公爵家の人々ー②

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「レティ。お荷物にしかならない王子と縁が切れておめでとう。君の苦労が報われて欣喜雀躍している。それでねレティ。君に提案がある。義父上ちちうえも同意されていることだ。だけどねレティ。これは命令ではないんだ。一つの可能性として心に留め置いてもらいたい。いいかい?」



レティエルを愛称で呼ぶ義兄の顔はいつになく真剣味を帯びていた。

(美形の真顔、迫力があるな。‥‥何故だろう嫌な予感しかしない)

義兄に釣られて真顔になる。内心のドキドキが心臓に悪い。



「はい、お義兄にい様。わかりました。それでご提案とは?」

「レティ。今の君は独り身だ。今までは無能でも君の婚約者として害虫共の防御壁にはなっていた王子と別れた。…ああ、くそあの役立たずめ。それでねレティ。今の君には虫よけがいないんだよ。義父上も私も君が心配で心配で堪らないんだ。わかるかい?」

王子をディスりつつ義兄は子供に諭すような口調で言葉を繋ぐ。

「だからレティ。君には新たな防御壁が必要だ。あんな性根の腐った者ではなくちゃんと君を、君だけを見てくれる完璧な防御壁をね」



(なんだろう悪寒がするぞ‥…これ、話聞いちゃいかんやつじゃね?)

‥…レティエルは蛇に睨まれたカエルの気分を味わっていた。

「それで…レティ。君の新たな婚約者にね。私がなるよ」



義兄の綺麗な綺麗なお顔が破顔した。



(いぃ~やぁぁ~!! 義兄がおかしいぃぃぃ! これってこれって結婚したら即暗殺されるやつ?! なにこれなにこれなにこれぇぇぇ。こんな展開予想外だよぉぉ)

‥‥レティエル満身創痍。





混乱した頭でレティエルは答えを濁しながらその場を辞した。









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レティエルは一人自室で頭を抱え込んでいた。



義兄の思惑がわからない。おそらく父親はレティエルを手元に置きたいだけだろう。なら義兄は? 父親の命令だから断れずに承諾したのか?



「や、やばい。やっぱこれって暗殺ルートだよな。嫌気がさしてサクッと殺っちゃう感じ? ああああ~義兄なら良い笑顔でプチって。プチって殺りそう。あっ!違う。暗殺者雇うのか」



レティエル新たなクエスト攻略に知恵を絞る。





こうしてレティエルの迷惑で人騒がせな王子とヒロインの断罪イベントを乗り越えこれから起こるであろう新たなイベントに戦々恐々としながら今日一日を終えた。
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