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第一章 攻略対象一人目 正しい第一王子の取り扱い方
やっぱりやるんだ断罪イベントー③
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ーこの女ー
マリエラ・ツゥエルバーグ男爵令嬢‥‥。
緩くウェーブのかかったピンク系の柔らかい髪。小柄で華奢な体躯にどこかか弱げで、守ってあげたくなる。可愛らしい容姿と甘え上手な態度の相乗効果で男の受けは良かった。女の子達からは顰蹙を買っていたが。
‥‥男の自尊心と庇護欲を掻き立てる女。
‥‥内面は見た目とは違って強かで欲深い女でもある。
(甘っちょろい坊ちゃんにはわからんだろうな。この手の女は男を食いもんにするっての)
レティエルは婚約者のいる王子に言い寄って誘惑していた男爵令嬢に対する評価は辛口だ。
(女の敵!ではないな。男の敵だよ。お前は。それとどうでもいいけど、なぜに口出すのかな)
ちょっとサクサク終わらせたかったレティエルにとって、邪魔をするマリエラがうざかった。
「ク…クリスフォード様に対してなんて酷い‥‥」
身分の低い男爵令嬢が高位貴族であるレティエルに対して許しもなく口を出した。
これは礼儀知らずも甚だしい。
おまけに王子を様呼びしている。失礼極まりない。
レティエルは逡巡する。
(王子を馬鹿にしたのは神官長だと思うが‥‥しかし、この女の対応を間違えるとややこしくなるな。どうしたものか‥‥)
「マリエラ。君は優しいな。私を気遣ってくれるのか」
どうやら思春期王子の気分が晴れたようだ。
イイ笑顔で男爵令嬢と見つめ合った。
(嬉しそうだな、王子。後でやれよ)
レティエルは時間の無駄とばかりにマリエラを無視することにした。
「さぁ。クリスフォード様。お渡しいたしました書面の字は読めました‥‥あ…いや、お読みいただけましたか。ならさっさと、サインをお願いいたします」
「だから、何だと言っているのだ!サインとは‥‥」
どうやら今目を通したようだ。
(‥‥王子遅い。おまけに察しが悪い)
「レティエル様。ひっ酷いですわ! わたくしのこ‥‥」
なにやら外野の女が騒ぎ出した。
(だからうざいって)
この女。うるさいんですが。と目で表現すると、周りの貴族達が意をくみ取ってくれたようだ。
どことなくヒソヒソコソコソ囁き合いの声が静寂の広間に波の様に広がりゆく。
「‥‥まあ、男爵家では躾がなされないのかしら」
「えぇ。これだから身分の低い者は嫌ですわ。みっともない」
「王子には婚約者がいるだろうに」
「あの方、殿方には馴れ馴れしいのですの」
「まあ!はしたない!」
囁き合う声だが人数が揃うと結構な音量となる。
これはこれでやや煩いのだが、かの男爵令嬢を黙らせるのには十分だったようだ。
羞恥で顔が赤くなっている。
自覚があったようでなによりだ。
この間、王子は書類に目を通していたようで周囲の様子に気付かない。
(おい。いいのかボンクラ王子よ。周囲の動向、気にしろよな)
「おい!誰だ今言ったやつは!」
「…マリエラ、気にしないでくださいね」
「貴女の素晴らしさを妬む者の言葉なんて」
書類を読むのに忙しい王子の代わりに側近候補達が女を慰めだした。
(いやいやいや!君らもどうかと思うよ。皆さん、婚約者いるでしょ? 何しれっとかばってんのよ)
いたのかお前ら‥‥半ば呆れた気持ちで取り巻き連中‥‥もとい、王子の側近候補達を見やる。
彼等には立派な婚約者達がいる。
その婚約者を等閑にして、身持ちの悪い男爵令嬢に入れあげているのだ。
側近候補の男共は性懲りもなく女をちやほやと褒め疎だしている。
(‥…おい。お前らも終わったな。ご愁傷様。まぁ、連帯責任な。王子のお守りを怠るからだぞぉ)
レティエルは呆れながらも、男共に憐憫の目を向けた。彼等の‥‥あまり遠くはない未来の姿に。
マリエラ・ツゥエルバーグ男爵令嬢‥‥。
緩くウェーブのかかったピンク系の柔らかい髪。小柄で華奢な体躯にどこかか弱げで、守ってあげたくなる。可愛らしい容姿と甘え上手な態度の相乗効果で男の受けは良かった。女の子達からは顰蹙を買っていたが。
‥‥男の自尊心と庇護欲を掻き立てる女。
‥‥内面は見た目とは違って強かで欲深い女でもある。
(甘っちょろい坊ちゃんにはわからんだろうな。この手の女は男を食いもんにするっての)
レティエルは婚約者のいる王子に言い寄って誘惑していた男爵令嬢に対する評価は辛口だ。
(女の敵!ではないな。男の敵だよ。お前は。それとどうでもいいけど、なぜに口出すのかな)
ちょっとサクサク終わらせたかったレティエルにとって、邪魔をするマリエラがうざかった。
「ク…クリスフォード様に対してなんて酷い‥‥」
身分の低い男爵令嬢が高位貴族であるレティエルに対して許しもなく口を出した。
これは礼儀知らずも甚だしい。
おまけに王子を様呼びしている。失礼極まりない。
レティエルは逡巡する。
(王子を馬鹿にしたのは神官長だと思うが‥‥しかし、この女の対応を間違えるとややこしくなるな。どうしたものか‥‥)
「マリエラ。君は優しいな。私を気遣ってくれるのか」
どうやら思春期王子の気分が晴れたようだ。
イイ笑顔で男爵令嬢と見つめ合った。
(嬉しそうだな、王子。後でやれよ)
レティエルは時間の無駄とばかりにマリエラを無視することにした。
「さぁ。クリスフォード様。お渡しいたしました書面の字は読めました‥‥あ…いや、お読みいただけましたか。ならさっさと、サインをお願いいたします」
「だから、何だと言っているのだ!サインとは‥‥」
どうやら今目を通したようだ。
(‥‥王子遅い。おまけに察しが悪い)
「レティエル様。ひっ酷いですわ! わたくしのこ‥‥」
なにやら外野の女が騒ぎ出した。
(だからうざいって)
この女。うるさいんですが。と目で表現すると、周りの貴族達が意をくみ取ってくれたようだ。
どことなくヒソヒソコソコソ囁き合いの声が静寂の広間に波の様に広がりゆく。
「‥‥まあ、男爵家では躾がなされないのかしら」
「えぇ。これだから身分の低い者は嫌ですわ。みっともない」
「王子には婚約者がいるだろうに」
「あの方、殿方には馴れ馴れしいのですの」
「まあ!はしたない!」
囁き合う声だが人数が揃うと結構な音量となる。
これはこれでやや煩いのだが、かの男爵令嬢を黙らせるのには十分だったようだ。
羞恥で顔が赤くなっている。
自覚があったようでなによりだ。
この間、王子は書類に目を通していたようで周囲の様子に気付かない。
(おい。いいのかボンクラ王子よ。周囲の動向、気にしろよな)
「おい!誰だ今言ったやつは!」
「…マリエラ、気にしないでくださいね」
「貴女の素晴らしさを妬む者の言葉なんて」
書類を読むのに忙しい王子の代わりに側近候補達が女を慰めだした。
(いやいやいや!君らもどうかと思うよ。皆さん、婚約者いるでしょ? 何しれっとかばってんのよ)
いたのかお前ら‥‥半ば呆れた気持ちで取り巻き連中‥‥もとい、王子の側近候補達を見やる。
彼等には立派な婚約者達がいる。
その婚約者を等閑にして、身持ちの悪い男爵令嬢に入れあげているのだ。
側近候補の男共は性懲りもなく女をちやほやと褒め疎だしている。
(‥…おい。お前らも終わったな。ご愁傷様。まぁ、連帯責任な。王子のお守りを怠るからだぞぉ)
レティエルは呆れながらも、男共に憐憫の目を向けた。彼等の‥‥あまり遠くはない未来の姿に。
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