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目覚めたあと 【領主と導師】

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 領主の執務室にて



「どうだ、あの子の様子は?」
「ん? ああ、今のところ異常はないな。だが、今後の影響は…」
「そうか、わからぬか。ふぅ‥‥あのような幼子に。ラウル魔導士は、くそ!」
「‥‥そう気を病むな。ガキは目覚めた。今はそれでいいだろう」




「…‥あぁそう…だ。そう思う事にしよう」
「ところで、調査は?」



「…‥はぁ‥…実行犯が死亡したのは正直、痛手だ。まさか、その日のうちに牢内で変死するとは。ラウル魔導士の背後にいる人物は不明だが、奴が零した使徒様? だったか。どこの組織の者か今調べさせている。あとは、アデレードの実家…あいつ等は王都に住む宮廷貴族だ。一筋縄ではいかぬだろうな」
「宮廷貴族か‥‥厄介だな」
「‥‥ふっ、元王族の私が、どこまで食い込めるか、だがあの話が事実なら、確実に追い込めるぞ」
「だが、証拠は? あるのか?」
「‥‥なくはないぞ? だが出処が」
「ああ、魔導士のか」
「そうだ。私では見つけられなかった証拠を、何故奴が持っていたのだ? 信憑性も疑わしい…‥」
「でも、お前は、疑ってはいないのだろ?」



「…‥‥‥真実を突き止めたいだけだ。そして我妻と子、ジョアンナを養女として引き受けた前領主夫妻。彼等の無念を…法の下で晴らしたいだけだ」
「…‥ああ」




「なぁ、私的な裁きを望む私は領主失格か?」
「‥‥‥領主も領民に違いない。法の元、裁かれる者は裁くべきだろう。何を弱気な事を言ってる? しっかりしろ、領主様」
「ふっ、く、くっくっ、ああそうだな、しっかりせねば」







「これからお前はどうするのだ? 私にあの幼子を預けて、何処へ行く?」
「ああ、ちいとな、調べたい事があって、暫くこの領地を離れるわ。その間、あのガキンチョを頼むぜ? あのガキには何か秘密がある気がするんでな」
「連れて行かないのか?」
「子供を連れて行く場所じゃねえ…‥って、何だよ? その顔! 疚しい場所じゃねえって! 仲間んとこだよ」
「ふはっ、悪い悪い、冗談だ」
「ちっ、しゃーねぇな」







「長くなるのか?」
「さてね? わからん」

「…‥」
「…‥」



「いつ立つのだ?」
「二・三日ガキの様子みてから行くわ。‥‥くれぐれもあのガキ、守ってくれ」
「?! ‥‥わかった。領主として守ってやろう」
「ふっ、頼もしいな、頼むわ」
「任せろ」

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