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使徒 【別視点】
しおりを挟む「これがあれば望みは叶うのですね」
「ええ、そうですよ。あなたの心から願う望みは叶います」
「ああ、何とお礼を申し上げれば良いのでしょうか。ありがとうございます。このご恩は一生忘れません…‥」
「良いのですよ、迷える信徒に光の道を照らすのも私共の役目です。常闇の世界に囚われた悲しき迷い人を赤い光が導きます。あなたはこれから光の世界へ誘いざなわれるでしょう。恐れることはないのです。さあ行きなさい。望む世界へ」
「はい。ありがとうございます‥‥‥使徒様」
静寂の中、カツカツと石畳の廊下を歩く靴音だけが響く。
普段は人の出入りを禁じている塔の地下へ一人の男が足を進める。
目的地は地下の最奥の部屋。
コンコン
「失礼いたします。お呼びと聞きまして参上いたしました」
「ああ、貴方ね、呪術具が壊れたわ。まだ魔力が満たされていないのに途中で壊れたの。アレは欠陥品だったのかしら。上手く出来たと自信があった物だったのに残念だわ。ほら、見てご覧なさい。『貪欲』な女の魔力がこれだけしか手に入らなかったのよ。酷い話ね、失敗よ失敗」
「『貪欲』で、ございましょうか? はて‥‥ああ、あの魔導士の。そうでしたか呪術具が壊れましたか。それは非常に残念でございましたな。ではこれは如何でしょう? 先程、新たな女が求めて参りましたので一つ分け与えてやりました。この女も中々の強欲さで、私も呆れました。きっとお気に召される結果を齎すでしょう。聖女様」
「あら、そうなの。それは楽しみだわ。では後は任せましたよ使徒殿」
仄暗い笑みを浮かべた二人の影が怪しく揺らめく。
使徒と呼ばれた男は聖女と呼んだ女と別れ、次の標的を捜しに向かう。
聖女と呼ばれた女の手には『貪欲』と認めた女の魔力を込めた術具が握りしめられていた。そう、あのラウル魔導士が強制的に抜き取ったアデレードの魔力。
それがここに。
聖女と名乗る女は残念そうな顔で失敗作の術具を眺めていた。
「次は成功させて欲しいわね」
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