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憂い 【導師視点】
しおりを挟む朝食を摂ったガキは疲れたのか腹が脹れたからか、いそいそとベッドに入って寝た。三日も寝ていた癖にまだ寝れるのかと呆れたもんだ。
しかし困った。呪いの説明をどうすべきか。有体に話すのは憚れる。あのガキと少し話したが記憶がない弊害か魔力のみならず誰でも知っていそうなことを知らないでいる。会話をしても認識のズレを感じて説明は控えたが、これでは呪いや呪術具の話をしても誤解されそうだ。ガキが何を知っていて何を知らないのか見極めてからでなければ齟齬が生じるだろう。追々学ばせるか。
…‥診察では怪我も病気らしい症状も見当たらなかった。記憶喪失ってのが引っ掛かるが概ね健康だろう。年齢がはっきりしない所為で成長具合が正常かどうかまではなあ。魔力量の多さから見て体格が小柄過ぎるのも気になる。見た目は4歳ぐらいか。辛うじて5歳‥‥には見えねえ。下手すりゃ3歳児でも通る。だからあの魔力量はおかしい。多すぎやしねえか。それにあの言葉使い。教育を受けていなければ出来ねえよな?
俺は子供を育てたことがないがあのガキの異常さはわかる。話した限り頭の出来は悪くない。だが時々見当違いな事を言うし知らない言葉も使う。もしかしたらこの国の者ではないのか? ならどうやってここに来た?
ちっ! 記憶がないってのは本当に厄介だ。
…‥いや、待てよ。本当に記憶がないのか‥…まさかあんなガキが記憶喪失の振りなどするか? くそっ! 疑い出したら限がねえ。
‥‥暫く様子を見るとして、問題はこの件の報告だ。出来れば上には言いたくない。言えばあのガキを調査対象として‥‥それならいいが下手すりゃ研究対象として分捕られるな。‥…どうしたもんか。
俺の役に立たないと判断できれば上に渡してもいいんだが、現時点では何ともなあ。やはり当面俺が面倒を見て判断すりゃいいか。
なら神官を上手く言いくるめて教会と領主への報告を考えて貰おう。何なら事後処理も任せるか。責任を感じた神官だ何とかやるだろう。
‥‥ガキは俺が面倒みるからいいとして、問題は坊主。
そもそもあの場所で二人して倒れていた経由が分からねえ以上、迂闊なことは出来ねえ。呪術はガキにかけられたのだろうが、なら坊主は? 坊主は何故無事だったんだ? ちっ! こればかりは二人の記憶が頼りなんだが、肝心のあいつらがアレではなあ。どうしたもんか‥‥先ずは神官と話し合うべきか。
‥…それにしてもまさかこの地で呪術具を使う奴がいたとは。使用者は今も行方不明の孤児院長で間違いねぇか。目的はさっぱりだが残滓から見て急遽使用したんだろう。上手く発動出来なかったかのもガキに不完全な術が残ってたのもそれなら説明がつく。不十分の術具で助かった、と言うべきか。完全体ならこの地域が呪いに呑まれた可能性が‥‥考えただけでもゾッとする。
後はガキの世話か。何時までも教会や孤児院で世話になるのもなぁ、酒も碌に飲めやしねえし、ここの雰囲気は息が詰まりそうで嫌なんだ。さっさとガキ連れて、と言いたいとこだがまだ調査は終わっていねえし。仕方ない、数日領主の元で厄介になるか。序でにあのガキの身の周りの世話もして貰おう。よし、そうと決まれば‥‥ちっ! ガキまだ起きねえな!
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