上 下
13 / 71

有無を言わさず

しおりを挟む
 予約ミスで投稿がズレました。すみません。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 (うぇ~、驚く事に師匠が出来ました。強制的に師弟の間柄となりました。う、うそーー! 誰か児童相談所、紹介してーーー!)

 大人のお話し合いで怪しげな無精ひげのオジサンの元に問答無用で引き取られると決まった。

 (な、なんでぇ? 理不尽過ぎるーーーー)

 泣いても無駄そうなので今のところは引き下がるアイナだが、正直状況が分からなくて不利な立場である。起死回生を図るにはある程度の説得材料が必要だろうと読んだアイナは必死で情報を得る。主にジェーンとディジーに。これ程心許ない大人はいないと思うも今は贅沢など言えない。このままだと髭に弟子入りなど真平ご免なのだ。断固拒否の姿勢は崩せない。


 分からないことだらけの測定。取り敢えず引き取られる子供はアイナを含め三人もいた。これが多いのか少ないのか? 知らん。

 アイナの機嫌は頗る不満で悪い。出来るなら誰か代わってと呪詛のように呟いても助け手は‥…いない。

 アイナの他は、あのはしゃいでいた男の子、彼はお隣の教会に引き取られることが決まった。もう一人は男の子より下と思える女の子、彼女は恰幅に良いオジサンの元に。オジサンの横に立つ女の子の絵面はヤバ過ぎた。

 漂う犯罪臭が‥…特殊性癖っぽい人に見えた。


 しきりにジェーンさん始め大人達が『良かった良かった』と喜んでるから水を差す訳にもいかず。困り果てた。

 (ぐぬぅぅ、児童福祉相談所‥‥誰か教えて! 切実に願うよ!)

 周囲のおめでたい雰囲気とは裏腹におめでたくないアイナはギリギリ奥歯を噛みしめる。ぐぬぬぬ‥‥




 師匠となった人物は導師と呼ばれ何と吃驚、この三人の中で一番のおえらいさんだった。

 (はぁ、まさかだよ、人は見かけによらないね‥‥怪しさ満載なのに)

 導師が何の職種なのか全く分からないまま強制的に決まった弟子の立場。こんな幼女に何をさせる気なのかこの町の習慣は意味不明過ぎて怖いなとちょっと逃避気味なアイナである。慰めを求めても良いではなかろうか。

 
 早急に決定された弟子入り先。何故そんなに急ぐ必要があるのかと訝しむアイナを余所にオジサンズは暇乞いを始める。何でも今夜は領主様の館で晩餐の招待を受けていると。なので明日引き取りに来るから今日は精々別れを惜しめよと要らぬ気遣いを寄越してくる。

 (いやいやいや、待ってよ! そんな気遣いは不要だから! 晩餐? 何その美味しそうな響き! そっちに連れてってよーーー!)

 
 …‥無念。幼児の心の叫びは届かない。無情にも彼等は立ち去った。

 
 (やっぱりあの髭に引き取られるのって不安要素しか思い浮かばないんだけど‥…)

 出て行ったオジサンズの後ろ姿を恨めしく睨みつけていた見ていたアイナに、今まで黙って俯いていたあの男の子がキッとキツイ目つきで睨んでくる。一体何事だ? 首を傾げたくなるアイナの心境を余所に男の子は捲し立てて怒鳴り始めた。

 「お、お前! あ、あとから来たくせに、なんでお前なんだよ! 俺が、俺がひきとられるって! 俺、待ってたのに‥‥く、くそ! お前のせいだ! おぼえていろよーーー!」 

 人生初の捨てゼリフ。いただきました。
  
 怒鳴られた驚きよりも捨てゼリフを吐く人がいるのか…とそちらに気を取られていたアイナはちょっと感動?していた。今時いるのか。

 
 アイナは自分が面倒事に巻き込まれたとは思わず走り去った男の子を見送っていた。

 

 吐き逃げた男の子の後姿を見ながらアイナは新鮮な気持ちでいた。男の子が何を怒っているのか全く見当も興味もないアイナの心には残らない。割とどうでもいい。アイナにしてみれば理不尽極まりない測定による結果なのだ、そこにアイナの意志は関係ない。勝手な決定事項に困っているのは何も男の子だけではないのだ。アイナは自分こそが最大の被害者では? と誰にも言えない文句を抱えて迷惑を被っていた。

 (これ、どうしようか‥‥‥)面倒事に巻き込まれた感満載のアイナの溜息は無為に長い。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬
ファンタジー
スマホ大好きなこの俺、関谷道長はある日いつものように新しいアプリを探していると何やら怪しいアプリを見つけた。早速面白そうなのでDLして遊ぼうとしてみるといつの間にか異世界へと飛ばされていた!  ちょっと待てなんなんだここは!しかも俺のスマホのデータ全部消えてる!嘘だろ俺の廃課金データが!!けどこのスマホなんかすごい!けど課金要素多すぎ!!ツッコミどころ多すぎだろ!  こんなことから始まる俺の冒険。いや、宿にこもってスマホばっかりいじっているから冒険してないや。異世界で俺強え無双?いや、身体能力そのままだから剣もまともに振れませんけど。産業革命で超金持ち?いや、スマホの課金要素多すぎてすぐに金欠なんですけど。俺のすごいところってただすごいスマホ持っているだけのような…あれ?俺の価値なくね? 現在、小説家になろうで連載中です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...