2人分生きる世界

晴屋想華

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第1章 無法

真の狙い

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 神山は、1人で来た。そして、私たちの目の前に立っている。

「優奈、千郷さん、君たちに伝えたいことがある」
「は?伝えたいこと?今さら何を伝えるっていうの?こんなことしておいて、弁解でもする気?」
「違う。私は、間違ったことをしたとは思っていない」
「よく言えますね。こんなに大勢の人たちを殺しておいて」
「世界を大きく変化させるためには必要な犠牲だよ」
「あなたは、それが家族や恋人、大切な人たちだったとしても言えるんですか?」
「この2つの人生を歩んでいる捻れた世界でなら、言えるよ」
「……くっ。あなたは、命の重みをみじんも理解していないんですね」
「……君たちに理解してもらえるとは思っていない。だが、君たちに託したいことがある」
「は?こんな状況で何を!」
「僕は、2つの世界の架け橋になる組織を作りたい。その組織を作るためにには、犠牲が必要だった。今回の事件で、政府も動くことになるだろう。警察を動かしてくれ。頼む」
「こんな方法を取らなくても、あなたが実行することだってできたはず!なぜ?!」
「いや、できなかったよ。優奈、ごめんな。あとは頼んだ」
「お、お兄ちゃっ」

 優奈が神山に発言しようとした瞬間、爆発が起き、神山の頭上から崩落が起き、神山はその下敷きになった。その後、すぐに救助隊が来て、私たちは、救助された。

「千郷、これからどうしたら良いかな」
「まずは、ゆっくり休もう。これからのことを考えるには早すぎるくらい辛い出来事が多すぎたよ」
「お兄ちゃんの遺体は見つかってないんだよね?」
「そうみたいだね」
「生きてる、かな?」
「どうだろう、分からない……」

 優奈と私は、それから少しして、迎えが来て家に返された。それから、優奈はどちらの世界でもしばらく学校へは来なかった。私は、特にアクションは起こさず、待ち続けた。

 優奈の悲しみはとても深い。それに、もしかしたら犯罪者の妹として扱われる可能性だってある。
 神山は、1人でこんなことをやったわけではない。もちろん、もう一つの世界の裕也という立場は利用していただろうが、まだ強力な協力者がいるとしか思えない程の事件だった。あの事件から、神山の仲間はだいたい捕まったのだが、まだ全員ではない。そいつらを捕まえない限り、また何か嫌なことが起こりそうだ。神山の言う通りにするのは不本意ではあるが、二つの世界を繋げる警察を作るべきなのかもしれない。 
 しかし、私と優奈にはまだそんな組織を作れるほど力はない。それに優奈の気持ちだって分からない。決めなければならないことはたくさんある。
 
 優奈……戻ってきて。会いたいよ。

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