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過ち未遂の事実と、彼の我慢。
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「ッ、そうだ。明日は仕事...!」
一瞬呆然と同じ過ちを繰り返す自分の状況に落ち込みそうになったけど、それどころじゃない。
「ん...? 櫻、起きたの...?」
「あ、え。えーと」
おれがバタバタ時計を見たり服を取ったりしている内に、ZEROさんが目を覚まし、ベッドから体を起こした。
(うわ、すご...)
均整の取れた付きすぎではない胸の筋肉と割れた腹筋が見え、心の中で感嘆の声がもれる。
(...そうだよな。バンドメンバーって雑誌やらファン用のブロマイドやら、撮られる仕事も多いもんな...。誰にどこから見られても良いように、体造りしてるのか...)
仕事柄、外見に気を配るのは当然なんだろうと思いながらも、自身の貧相な体つきを省みて...現状を保つ努力をする人だと思うと、改めて(格好良いな)と思ってしまう。
「ZEROさん」
「...櫻、名前」
「あ。...遼平さん」
「そ。一緒のベッドで寝る関係なのに、芸名は素っ気ないだろ? で、なに?」
機嫌良く微笑む彼に言うのは辛いが、仕事を休むわけにはいかない。
「あの、おれ...」
「明日、仕事だろ。俺に気を使わなくて良いから、一度家に帰ってゆっくり休んで」
「え、なん...で」
言いたいことを全部言われてしまい、驚いて遼平さんを見つめれば、何でもないことのように笑って返された。
「櫻の出勤スケジュール、貰ってるって言ったろ?」
「あぁ、そっか」
「うん。櫻...また覚えてないでしょ。さっきは一緒に寝ただけだよ」
「え、じゃあ」
「昨日と、ここの感じ....違うだろ...?」
「ひゃぁ?! りょいへいさ、ちょっ...!」
裸の遼平さんに引き寄せられ、わざとらしくベッドに押し倒されて、驚きで浮いた背中から尻までを、指でたどられる。そのまま尻を揉まれて、悪戯な指先が尻肉の間に触れ、さすがに焦った。
「なーんて。...これ以上は俺が離せなくなるからしない。次は、櫻から連絡を頂戴」
「遼平さん...」
「俺も此処で仕事して、イイコで待ってるから...」
「うん...」
「“行ってきます”のキス、して?」
「え?!」
さっきまで、大型犬が『待て』されてるみたいで可愛いなぁ~なんて、ほのぼの考えてたのに。
(恋愛初心者に、キスとか...求めないで欲しい...)
おれの家は割りと門限とか厳しい、親父が頑固者の厳格な家だったので、就職して一人暮らしをするまでは、彼女を作るどころか自由時間も、親父の決めた大学に入るための勉強をさせられていたため、全くなかった。
結局家の方針に付いていけなくて大学の願書取り下げて、勝手に就職して...半ば勘当みたいになって、家を飛び出した訳だけど。
(そんなこと考えてる間に、遼平さんてば目を閉じてキス待ち状態なんですけど?! もう、するしかないんだよね?!!)
遼平さんの頬に手を添え、本当に軽く、ちゅって音を立てて、キスをする。
直ぐに顔を離すと、遼平さんは何かに堪えるような、不思議な表情をしていた。
「き、キス、したよ! 良い子で待っててね!」
服を整えて鞄を抱え、部屋を出ていく準備が終わるまで、遼平さんは難しい表情をしていたけど、最後は笑顔で手を振ってくれた。
「休みじゃなくても、1・2時間空いた時間が出来た時でも良い。電話でもメールでも、直接此処に来るのでも良いから。連絡、待ってる」
「うん。必ず連絡する! またね、遼平さん!!」
「ああ」
扉を閉め、部屋を出てエレベーターを待つおれは、知らなかった。
「あーーー可愛い。....抱きてェ~...」
遼平さんが部屋で一人言をこぼしながら、おれの匂いの残るベッドに戻って、ふて寝していたことなど。
一瞬呆然と同じ過ちを繰り返す自分の状況に落ち込みそうになったけど、それどころじゃない。
「ん...? 櫻、起きたの...?」
「あ、え。えーと」
おれがバタバタ時計を見たり服を取ったりしている内に、ZEROさんが目を覚まし、ベッドから体を起こした。
(うわ、すご...)
均整の取れた付きすぎではない胸の筋肉と割れた腹筋が見え、心の中で感嘆の声がもれる。
(...そうだよな。バンドメンバーって雑誌やらファン用のブロマイドやら、撮られる仕事も多いもんな...。誰にどこから見られても良いように、体造りしてるのか...)
仕事柄、外見に気を配るのは当然なんだろうと思いながらも、自身の貧相な体つきを省みて...現状を保つ努力をする人だと思うと、改めて(格好良いな)と思ってしまう。
「ZEROさん」
「...櫻、名前」
「あ。...遼平さん」
「そ。一緒のベッドで寝る関係なのに、芸名は素っ気ないだろ? で、なに?」
機嫌良く微笑む彼に言うのは辛いが、仕事を休むわけにはいかない。
「あの、おれ...」
「明日、仕事だろ。俺に気を使わなくて良いから、一度家に帰ってゆっくり休んで」
「え、なん...で」
言いたいことを全部言われてしまい、驚いて遼平さんを見つめれば、何でもないことのように笑って返された。
「櫻の出勤スケジュール、貰ってるって言ったろ?」
「あぁ、そっか」
「うん。櫻...また覚えてないでしょ。さっきは一緒に寝ただけだよ」
「え、じゃあ」
「昨日と、ここの感じ....違うだろ...?」
「ひゃぁ?! りょいへいさ、ちょっ...!」
裸の遼平さんに引き寄せられ、わざとらしくベッドに押し倒されて、驚きで浮いた背中から尻までを、指でたどられる。そのまま尻を揉まれて、悪戯な指先が尻肉の間に触れ、さすがに焦った。
「なーんて。...これ以上は俺が離せなくなるからしない。次は、櫻から連絡を頂戴」
「遼平さん...」
「俺も此処で仕事して、イイコで待ってるから...」
「うん...」
「“行ってきます”のキス、して?」
「え?!」
さっきまで、大型犬が『待て』されてるみたいで可愛いなぁ~なんて、ほのぼの考えてたのに。
(恋愛初心者に、キスとか...求めないで欲しい...)
おれの家は割りと門限とか厳しい、親父が頑固者の厳格な家だったので、就職して一人暮らしをするまでは、彼女を作るどころか自由時間も、親父の決めた大学に入るための勉強をさせられていたため、全くなかった。
結局家の方針に付いていけなくて大学の願書取り下げて、勝手に就職して...半ば勘当みたいになって、家を飛び出した訳だけど。
(そんなこと考えてる間に、遼平さんてば目を閉じてキス待ち状態なんですけど?! もう、するしかないんだよね?!!)
遼平さんの頬に手を添え、本当に軽く、ちゅって音を立てて、キスをする。
直ぐに顔を離すと、遼平さんは何かに堪えるような、不思議な表情をしていた。
「き、キス、したよ! 良い子で待っててね!」
服を整えて鞄を抱え、部屋を出ていく準備が終わるまで、遼平さんは難しい表情をしていたけど、最後は笑顔で手を振ってくれた。
「休みじゃなくても、1・2時間空いた時間が出来た時でも良い。電話でもメールでも、直接此処に来るのでも良いから。連絡、待ってる」
「うん。必ず連絡する! またね、遼平さん!!」
「ああ」
扉を閉め、部屋を出てエレベーターを待つおれは、知らなかった。
「あーーー可愛い。....抱きてェ~...」
遼平さんが部屋で一人言をこぼしながら、おれの匂いの残るベッドに戻って、ふて寝していたことなど。
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