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11.切り裂かれる-2
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そんなことを考えてたらうとうとし始めた。
――チクッ!
その小さな痛みで目が覚めた。そばにセバスチャンが立っている。
「なに?」
「大丈夫、楽になれる薬だよ。 効果が出るまで少し待とうか」
だんだん体が重くなってくる どうしたんだろう、あんまり力が入らない
「すぐ効くだろう? これ、軽い弛緩剤。君みたいに薬に免疫無いと余計効きやすいんだ。あとちょっとした薬も混ぜてある。試験的に作ったもんでさ、なかなか被検者がいなくって。体に悪いわけじゃないから安心して」
何を言ってる? 何の薬だ そう聞こうとして思うように口が動かないのに気づいた
「ああ、無理無理。 薬抜けるまで喋れないよ」
いきなりシーツを剥がれたのに、何も出来ないまま見ているしかない。
「もう一つの薬、まだ効いて来ないかな? そろそろのはずなんだけど」
そう言われる頃にはやけに暑くなっていた いつ空調切れたんだろう?
「ああ、効いてるね。今、熱いだろう? 大丈夫、結構強い媚薬だから動けなくてもちゃんと感じるからね」
体が…………。
「疼いて来ただろう? 分かるかな? すぐ気持ち良くなるよ」
ふざけるな そう言いたいのに…触られてもう息が切れてる ざわざわと気持ちがいい
――ギュッ!
強くそこを握りしめられて痺れるような感覚が頭の芯を貫いた 胸を強く噛まれて思わず目を閉じる
――リッキー
「初めて見た時からさ、いいなと思ってたんだ。こんなチャンスが来るなんてラッキーだ。おまけに薬も試せるなんてね」
あちこちが強く噛まれる 痛い 苦しい 気持ちいい ……掴まれたところにしっかり爪が立って痛いはずなのに……
「君、感度がいいね。ほら、もうしっかり濡れてる」
言葉に犯される………
口を舐めとられて舌を吸われた 口の中を溢れるほどに何かがぬらりと伝わって息が出来ずに一生懸命呑み込んだ 気持ちが悪い 喉が動きにくくて流れ出る
――リッキー、どこ?
やめろ さわるな あっちにいけ………ほんとに行ってほしいのか?
カチャカチャと金属の音が聞こえた 足が開かれて持ち上げられた 尻の間に冷たいものが当てられる 強引に入り込んで来る固いものが痛い…中を広げてる
――痛いよ、リッキー
なのに頭が蕩けてしまいそうだ…
……あ
ぐい! とその冷たい物の間に何かが入ってくる ……でも気持ちがいい……痛い……気持ちいい……
――リッキー……
「君、ここ使ってないんだね! あっちが彼女ってわけか! すっごく狭い。ちょっとこれじゃ困るかな」
固くてもっと太いものが広げられた中に入ってくる ぐいぐい押されて中が千切れそうだ……前後に何度も行き来する 擦れて痛い 肉がめくれてるみたいで痛い 奥に無理やり押し込まれて 苦しいのに 脳天まで痺れてくる 腹の中に入ってくるみたいで
――ああ やめてくれないか
――リッキー こいつに やめさせて
「ずいぶん感じてるね、ぐっしょりだよ、この周り。ちょっと赤いけど、それはしょうがないな。でもさっきより滑りがいい」
息が止まりそうだ、痛い
「これじゃまだ狭くて入れない」
抜かれたと思ったらこじ開けるようにもっと太いものが入って来た またそれが往き来する 入る度に奥へ奥へと捻じ込まれる
――む……り、だ、いたい………いきが……でき リッ
「感じてるの? 息詰めて興奮しちゃって。君って結構淫乱なんだね」
口を噛まれて舌を噛まれて ただ気持ちがいい
――ああ くちのなかで なにかが うごいてる りっきぃ どこだよ
リッキーの顔を思い浮かべると痛みが和らいだ
「僕が初めてならいいんだけど。じゃ、入らせてもらおうかな」
太い物も固い金属も一気に抜かれて痛みに思わず腰が浮きそうになる
「なに、抜かれてさびしい? すぐ僕のを挿れてあげるから」
何かが尻の間に入ってくる 今度は温かくてぬめぬめとして
「参ったな…まだ狭い……」
やめてくれ…… 痛くて息が止まりそうだ その間も僕のそこがしっかりと握られて握り潰すように扱かれている
――ああ、もっと、もっと早
――いやだ 奥から抜いてくれ
扱かれて扱かれて いきなり体の中を突き上げられる感覚に 僕の頭が 弾け飛んだ
「イッちゃったね。でも、まだまだだよ」
ふっ と痛みが軽くなった 抜けていく 温度のあるものが
「もう一回だな、動きにくい」
唐突に捻じ入れられた固い棒……容赦なく奥へとズドン! と押し入ってきて
――ころしてくれ……りっき……きて……
「なんかさ、抵抗するよね。薬効いてんだから快感しかないだろう!? 自信作なのにムカつくんだけど。そうだ、ちょっと広げよう」
意味が伝わって来なかった、意味が……
――悲鳴をあげてるのは、だれ?
――熱い 熱い 熱い!!! この激痛は、なに!?
――声が……出ないんだ……
――りっきぃ僕の声は? 僕の声は?
――りっきぃは……どこ……
「やっと入った! 今度は君ももっと気持ちよくなるよ。ほら! すっごく滑りいいだろ!!」
ころしてくれころしてくれころしてくれころ
腰が何度も何度も突き上げられて……
――りっき……ぃ
繰り返し何かが中に吐き出される……
――りっきぃ…… 僕を抱きしめて
急に乗ってるものが全部消えた …まだ……もっと……
「クソ野郎! 殺してやる! 殺してやる! どけ! 邪魔するな!!」
怒号が聞こえる……遠くに……
「出血が……こんなの、酷い! すぐ他の先生を連れて来るから! 待ってて!」
声が遠い……誰でもいい、触って……痛い…でも熱いんだ、いたくてあつい
体が何かに包まれた。触れられただけでもイってしまう……
「フェル、フェル、……」
「……りっき? ああ いたいんださわって……りっき、さわっ……いたい……イカせて……」
すぅっと空気が動いてまるで外の風みたいだ
抱えられて寝せられて、どこかに移動してる
体が揺れる……早く触って、早く……
「鎮静剤を打つから。時間が経てば薬は切れるからね。心配しないで」
「そんなわけ、行くか!? こんなに苦しんでんのにほっとけって言うのか! あいつ連れて来いよ! ぶっ殺してやる!!」
「彼のことは私たちに任せてくれ。病院としても精一杯償いをするよ。この酩酊状態はほんの一時の辛抱だから」
誰かと誰かが喋ってる……
――りっき どこ
「噛み傷は口と舌と肩と腿…よくまあこんなに……でも大丈夫、これはすぐ治る。胸、縫合して」
誰かが胸を弄ってる……
「それより……」
……いき、が……いたい……いた……いたい!!
「ああ、これは酷いな!! 裂傷がずいぶん奥まで続……切られてるじゃないか! 何か所だ!? 麻酔、縫合! ……ひどい無茶をしたもんだ……」
「狭いから切って入ったってことか!? 麻酔打たれてたんなら大丈夫だよな!? 痛み、感じてなかったよな!?」
「これは麻酔じゃない……ダイレクトに激痛を感じたはずだ。……拷問と一緒だよ」
「そんな……そんな……」
何かされてるのは分かるけど それは僕の欲しがってるものじゃない 欲しいのは……たくさんの暗闇だ……
――あ、ああ……りっきぃころして
「フェル、もうすぐだ、我慢して、 もうすぐだ、死なせるもんか! 絶対死なせるもんか!!」
ぎゅっと握ってくる手に僕もぎゅっと掴まる てを はなさないで てを
「君、処置の間外に出て……」
「ふざけるな! あの野郎もそう言いやがったんだ! 俺はそば離れねぇからな!!」
――りっきー りっきー なんとかして ころしてくれ
「フェル、フェル……」
泣き声が聞こえる……この声はリッキー? なんで泣いてる? こっちにおいでよ……僕がいるだろう?
「しっかりしてくれ! お願いだ、フェル……」
「り」
リッキー そう言ったはずなんだけど それより、きすして……早く……辛い……
「分かった、楽にしてやるからな。だから動くんじゃねぇぞ」
あったかくて柔らかいものが 僕の口に重なってきた 僕を包んで優しく揺れて……気持ちいい
あ ああ……これは僕の声か?
――ころしてくれ…
――暗闇が ほしいんだ 暗くして…… りっきーころして……どこ? りっき
「大丈夫、俺はそばにいる。ここにいる、死んじゃだめだ、俺と明るいとこにいよう。俺がいるよ、フェル」
撫でてくれてる この手 知ってる 誰かがちょっとずつ 僕が息出来るようにしてくれる……
はぁっ……息が辛い ぎゅうって……てが あたたかい
少しずつ周りの様子が見えてきた
「ここ どこ?」
「分かるか? 俺のこと分かるか?」
「りっきーのこえがする」
「ああ、俺だよ。フェル、リッキーだよ。お前何されてんだよ、お前に触っていいのは俺だけだよ…俺だけだ……」
「どこいってた……? さがしたんだ……りっき ああ ここにきて……りっき」
「ごめんな……そばから離れて……もう離れないから。ごめんな、ごめんな……ここにいるから。安心しろ、フェル」
もやもやと なんだかはっきり見えない 唇にそっとあったかいものが触れた
リッキーがここにいる リッキーと話して少し安心した さっきまでどこか不安で
でももう大丈夫 ここにいるのはリッキーだ
「りっきー おまえだけ……あいしてる…おまえだけ……」
頭を抱かれる 鼓動が聞こえる 時間がとだえる
夢見てたみたい?
ああ いやな夢だ なにかくちのなかにいるんだ くちの
「今、見たぞ! 大丈夫だ、何もいねぇから。見張っててやるから。何も入んねぇように見張ってる!」
「りっき?」
「ああ、俺だ、フェル。もう少し寝ろよ、疲れたろ?」
「うん つかれた りっき おやす」
それっきり辺りが消えた
苦しくて苦しくて目が覚めた 覚めた途端に体の芯から熱い痛みが走った
「あぅぅっ!!」
じっとしてるのに痛い 痛みから逃れられない
「フェル! 動くな!」
痛みの中心に何かが入っていた
「ごめん、でも消毒しなきゃなんねぇんだよ。酷いことになってんだ……」
リッキーが強く抱きしめてくれている やっとそれが抜けた
「大丈夫ですよ、昨日より出血が減ってますからね」
知らない声
「リッキー? ぼく、どうしたんだ?」
やっとの思いで声が出た ガラガラにかすれた声 喉がひどく痛い
「ほら、これ飲めよ」
冷たい水が口に入った 喉が乾いていたのが分かる どうしてだろう 疲れる ……きもちわる は、く
「待て!!」
――は、きた……
込みあげてくる振動で痛みが激痛に変わる 震えが襲う
――はきたい……いたい いたい
「何とかしてくれよ、リズ!」
ばたばたと走りまわる音 音 音……
「吐き気止め、入れたから! もう少し我慢して!」
「我慢できるわけねぇだろう!!」
音が やんだ りっきー いる?
「ああ、いるよ。手握ってるの、分かるか? ずっとここにいる」
さっきよりいいけど それでも痛みがどっかりとここにある
「……いた、ぃ……なんでこんなにいたいんだ?」
痛みで涙がこぼれる…… いたいんだ りっきー なんとかして
「ちょっと待て、今ナース呼んだから」
誰かがきて、下半身が剥がされた
「いい? しっかり押さえていて。局部麻酔だけど打つ時の痛みはどうしようもないの」
悲鳴も出ない 痛みの中心に激痛が走る 抱きしめてくれてるリッキーにしがみつくだけ
息 が
「麻酔、すぐ効いてくるから。 動かなきゃ治まってくるから」
髪を撫でられ キスが降り注ぎ なぜかそれが痛みを軽くしてくれた
「りっきー そうやってて……少し楽だ……」
「ああ、いくらでもしてやる」
「変なんだ、足の間が全部痛いんだ………」
「楽になるよ、フェル。きっと良くなる。約束する」
痛みが少し遠のいた なんだかちょっと楽になったみたい
「寝ていいんだぞ。手、握ってるから」
その手を握ったまま眠った
――なにか いる りっきー くちのなかに なにか いるんだ
――いきが……つまる できない いきが
「フェル、ここにいるぞ! 何もいねぇ! 口ん中、今見た。何もいねぇからな!」
「いいのよ、ここにみんな出して! 今なら麻酔効いてる、ちゃんと吐けるから!」
優しい指が髪の間に入ってくる
「きっと良くなる。良くなるよ、フェル」
「ありがとう りっきー」
頬に雫が垂れてくる……
「りっきー しょっぱい」
「そうか? ごめんな」
「いいんだ……なにか辛いなら言えよ……」
雫がたくさん垂れてくる どうした? なにがかなしい? どうした?
「だいじょうぶ? 僕がいつもそばにいるよ……だから言えよ……」
「言うよ……必ずフェルに言うよ。だから今は寝ような」
「うん ねる」
僕は隣に寝てくれたリッキーにしがみついたまま目を閉じた 腕にまた注射が刺さる
「これでゆっくり眠れるから。あなたどうする? 少し休んだら?」
「ここにいる。ついててやらなきゃ」
そばにいてくれる リッキーが
僕はやっと安心して眠った
――チクッ!
その小さな痛みで目が覚めた。そばにセバスチャンが立っている。
「なに?」
「大丈夫、楽になれる薬だよ。 効果が出るまで少し待とうか」
だんだん体が重くなってくる どうしたんだろう、あんまり力が入らない
「すぐ効くだろう? これ、軽い弛緩剤。君みたいに薬に免疫無いと余計効きやすいんだ。あとちょっとした薬も混ぜてある。試験的に作ったもんでさ、なかなか被検者がいなくって。体に悪いわけじゃないから安心して」
何を言ってる? 何の薬だ そう聞こうとして思うように口が動かないのに気づいた
「ああ、無理無理。 薬抜けるまで喋れないよ」
いきなりシーツを剥がれたのに、何も出来ないまま見ているしかない。
「もう一つの薬、まだ効いて来ないかな? そろそろのはずなんだけど」
そう言われる頃にはやけに暑くなっていた いつ空調切れたんだろう?
「ああ、効いてるね。今、熱いだろう? 大丈夫、結構強い媚薬だから動けなくてもちゃんと感じるからね」
体が…………。
「疼いて来ただろう? 分かるかな? すぐ気持ち良くなるよ」
ふざけるな そう言いたいのに…触られてもう息が切れてる ざわざわと気持ちがいい
――ギュッ!
強くそこを握りしめられて痺れるような感覚が頭の芯を貫いた 胸を強く噛まれて思わず目を閉じる
――リッキー
「初めて見た時からさ、いいなと思ってたんだ。こんなチャンスが来るなんてラッキーだ。おまけに薬も試せるなんてね」
あちこちが強く噛まれる 痛い 苦しい 気持ちいい ……掴まれたところにしっかり爪が立って痛いはずなのに……
「君、感度がいいね。ほら、もうしっかり濡れてる」
言葉に犯される………
口を舐めとられて舌を吸われた 口の中を溢れるほどに何かがぬらりと伝わって息が出来ずに一生懸命呑み込んだ 気持ちが悪い 喉が動きにくくて流れ出る
――リッキー、どこ?
やめろ さわるな あっちにいけ………ほんとに行ってほしいのか?
カチャカチャと金属の音が聞こえた 足が開かれて持ち上げられた 尻の間に冷たいものが当てられる 強引に入り込んで来る固いものが痛い…中を広げてる
――痛いよ、リッキー
なのに頭が蕩けてしまいそうだ…
……あ
ぐい! とその冷たい物の間に何かが入ってくる ……でも気持ちがいい……痛い……気持ちいい……
――リッキー……
「君、ここ使ってないんだね! あっちが彼女ってわけか! すっごく狭い。ちょっとこれじゃ困るかな」
固くてもっと太いものが広げられた中に入ってくる ぐいぐい押されて中が千切れそうだ……前後に何度も行き来する 擦れて痛い 肉がめくれてるみたいで痛い 奥に無理やり押し込まれて 苦しいのに 脳天まで痺れてくる 腹の中に入ってくるみたいで
――ああ やめてくれないか
――リッキー こいつに やめさせて
「ずいぶん感じてるね、ぐっしょりだよ、この周り。ちょっと赤いけど、それはしょうがないな。でもさっきより滑りがいい」
息が止まりそうだ、痛い
「これじゃまだ狭くて入れない」
抜かれたと思ったらこじ開けるようにもっと太いものが入って来た またそれが往き来する 入る度に奥へ奥へと捻じ込まれる
――む……り、だ、いたい………いきが……でき リッ
「感じてるの? 息詰めて興奮しちゃって。君って結構淫乱なんだね」
口を噛まれて舌を噛まれて ただ気持ちがいい
――ああ くちのなかで なにかが うごいてる りっきぃ どこだよ
リッキーの顔を思い浮かべると痛みが和らいだ
「僕が初めてならいいんだけど。じゃ、入らせてもらおうかな」
太い物も固い金属も一気に抜かれて痛みに思わず腰が浮きそうになる
「なに、抜かれてさびしい? すぐ僕のを挿れてあげるから」
何かが尻の間に入ってくる 今度は温かくてぬめぬめとして
「参ったな…まだ狭い……」
やめてくれ…… 痛くて息が止まりそうだ その間も僕のそこがしっかりと握られて握り潰すように扱かれている
――ああ、もっと、もっと早
――いやだ 奥から抜いてくれ
扱かれて扱かれて いきなり体の中を突き上げられる感覚に 僕の頭が 弾け飛んだ
「イッちゃったね。でも、まだまだだよ」
ふっ と痛みが軽くなった 抜けていく 温度のあるものが
「もう一回だな、動きにくい」
唐突に捻じ入れられた固い棒……容赦なく奥へとズドン! と押し入ってきて
――ころしてくれ……りっき……きて……
「なんかさ、抵抗するよね。薬効いてんだから快感しかないだろう!? 自信作なのにムカつくんだけど。そうだ、ちょっと広げよう」
意味が伝わって来なかった、意味が……
――悲鳴をあげてるのは、だれ?
――熱い 熱い 熱い!!! この激痛は、なに!?
――声が……出ないんだ……
――りっきぃ僕の声は? 僕の声は?
――りっきぃは……どこ……
「やっと入った! 今度は君ももっと気持ちよくなるよ。ほら! すっごく滑りいいだろ!!」
ころしてくれころしてくれころしてくれころ
腰が何度も何度も突き上げられて……
――りっき……ぃ
繰り返し何かが中に吐き出される……
――りっきぃ…… 僕を抱きしめて
急に乗ってるものが全部消えた …まだ……もっと……
「クソ野郎! 殺してやる! 殺してやる! どけ! 邪魔するな!!」
怒号が聞こえる……遠くに……
「出血が……こんなの、酷い! すぐ他の先生を連れて来るから! 待ってて!」
声が遠い……誰でもいい、触って……痛い…でも熱いんだ、いたくてあつい
体が何かに包まれた。触れられただけでもイってしまう……
「フェル、フェル、……」
「……りっき? ああ いたいんださわって……りっき、さわっ……いたい……イカせて……」
すぅっと空気が動いてまるで外の風みたいだ
抱えられて寝せられて、どこかに移動してる
体が揺れる……早く触って、早く……
「鎮静剤を打つから。時間が経てば薬は切れるからね。心配しないで」
「そんなわけ、行くか!? こんなに苦しんでんのにほっとけって言うのか! あいつ連れて来いよ! ぶっ殺してやる!!」
「彼のことは私たちに任せてくれ。病院としても精一杯償いをするよ。この酩酊状態はほんの一時の辛抱だから」
誰かと誰かが喋ってる……
――りっき どこ
「噛み傷は口と舌と肩と腿…よくまあこんなに……でも大丈夫、これはすぐ治る。胸、縫合して」
誰かが胸を弄ってる……
「それより……」
……いき、が……いたい……いた……いたい!!
「ああ、これは酷いな!! 裂傷がずいぶん奥まで続……切られてるじゃないか! 何か所だ!? 麻酔、縫合! ……ひどい無茶をしたもんだ……」
「狭いから切って入ったってことか!? 麻酔打たれてたんなら大丈夫だよな!? 痛み、感じてなかったよな!?」
「これは麻酔じゃない……ダイレクトに激痛を感じたはずだ。……拷問と一緒だよ」
「そんな……そんな……」
何かされてるのは分かるけど それは僕の欲しがってるものじゃない 欲しいのは……たくさんの暗闇だ……
――あ、ああ……りっきぃころして
「フェル、もうすぐだ、我慢して、 もうすぐだ、死なせるもんか! 絶対死なせるもんか!!」
ぎゅっと握ってくる手に僕もぎゅっと掴まる てを はなさないで てを
「君、処置の間外に出て……」
「ふざけるな! あの野郎もそう言いやがったんだ! 俺はそば離れねぇからな!!」
――りっきー りっきー なんとかして ころしてくれ
「フェル、フェル……」
泣き声が聞こえる……この声はリッキー? なんで泣いてる? こっちにおいでよ……僕がいるだろう?
「しっかりしてくれ! お願いだ、フェル……」
「り」
リッキー そう言ったはずなんだけど それより、きすして……早く……辛い……
「分かった、楽にしてやるからな。だから動くんじゃねぇぞ」
あったかくて柔らかいものが 僕の口に重なってきた 僕を包んで優しく揺れて……気持ちいい
あ ああ……これは僕の声か?
――ころしてくれ…
――暗闇が ほしいんだ 暗くして…… りっきーころして……どこ? りっき
「大丈夫、俺はそばにいる。ここにいる、死んじゃだめだ、俺と明るいとこにいよう。俺がいるよ、フェル」
撫でてくれてる この手 知ってる 誰かがちょっとずつ 僕が息出来るようにしてくれる……
はぁっ……息が辛い ぎゅうって……てが あたたかい
少しずつ周りの様子が見えてきた
「ここ どこ?」
「分かるか? 俺のこと分かるか?」
「りっきーのこえがする」
「ああ、俺だよ。フェル、リッキーだよ。お前何されてんだよ、お前に触っていいのは俺だけだよ…俺だけだ……」
「どこいってた……? さがしたんだ……りっき ああ ここにきて……りっき」
「ごめんな……そばから離れて……もう離れないから。ごめんな、ごめんな……ここにいるから。安心しろ、フェル」
もやもやと なんだかはっきり見えない 唇にそっとあったかいものが触れた
リッキーがここにいる リッキーと話して少し安心した さっきまでどこか不安で
でももう大丈夫 ここにいるのはリッキーだ
「りっきー おまえだけ……あいしてる…おまえだけ……」
頭を抱かれる 鼓動が聞こえる 時間がとだえる
夢見てたみたい?
ああ いやな夢だ なにかくちのなかにいるんだ くちの
「今、見たぞ! 大丈夫だ、何もいねぇから。見張っててやるから。何も入んねぇように見張ってる!」
「りっき?」
「ああ、俺だ、フェル。もう少し寝ろよ、疲れたろ?」
「うん つかれた りっき おやす」
それっきり辺りが消えた
苦しくて苦しくて目が覚めた 覚めた途端に体の芯から熱い痛みが走った
「あぅぅっ!!」
じっとしてるのに痛い 痛みから逃れられない
「フェル! 動くな!」
痛みの中心に何かが入っていた
「ごめん、でも消毒しなきゃなんねぇんだよ。酷いことになってんだ……」
リッキーが強く抱きしめてくれている やっとそれが抜けた
「大丈夫ですよ、昨日より出血が減ってますからね」
知らない声
「リッキー? ぼく、どうしたんだ?」
やっとの思いで声が出た ガラガラにかすれた声 喉がひどく痛い
「ほら、これ飲めよ」
冷たい水が口に入った 喉が乾いていたのが分かる どうしてだろう 疲れる ……きもちわる は、く
「待て!!」
――は、きた……
込みあげてくる振動で痛みが激痛に変わる 震えが襲う
――はきたい……いたい いたい
「何とかしてくれよ、リズ!」
ばたばたと走りまわる音 音 音……
「吐き気止め、入れたから! もう少し我慢して!」
「我慢できるわけねぇだろう!!」
音が やんだ りっきー いる?
「ああ、いるよ。手握ってるの、分かるか? ずっとここにいる」
さっきよりいいけど それでも痛みがどっかりとここにある
「……いた、ぃ……なんでこんなにいたいんだ?」
痛みで涙がこぼれる…… いたいんだ りっきー なんとかして
「ちょっと待て、今ナース呼んだから」
誰かがきて、下半身が剥がされた
「いい? しっかり押さえていて。局部麻酔だけど打つ時の痛みはどうしようもないの」
悲鳴も出ない 痛みの中心に激痛が走る 抱きしめてくれてるリッキーにしがみつくだけ
息 が
「麻酔、すぐ効いてくるから。 動かなきゃ治まってくるから」
髪を撫でられ キスが降り注ぎ なぜかそれが痛みを軽くしてくれた
「りっきー そうやってて……少し楽だ……」
「ああ、いくらでもしてやる」
「変なんだ、足の間が全部痛いんだ………」
「楽になるよ、フェル。きっと良くなる。約束する」
痛みが少し遠のいた なんだかちょっと楽になったみたい
「寝ていいんだぞ。手、握ってるから」
その手を握ったまま眠った
――なにか いる りっきー くちのなかに なにか いるんだ
――いきが……つまる できない いきが
「フェル、ここにいるぞ! 何もいねぇ! 口ん中、今見た。何もいねぇからな!」
「いいのよ、ここにみんな出して! 今なら麻酔効いてる、ちゃんと吐けるから!」
優しい指が髪の間に入ってくる
「きっと良くなる。良くなるよ、フェル」
「ありがとう りっきー」
頬に雫が垂れてくる……
「りっきー しょっぱい」
「そうか? ごめんな」
「いいんだ……なにか辛いなら言えよ……」
雫がたくさん垂れてくる どうした? なにがかなしい? どうした?
「だいじょうぶ? 僕がいつもそばにいるよ……だから言えよ……」
「言うよ……必ずフェルに言うよ。だから今は寝ような」
「うん ねる」
僕は隣に寝てくれたリッキーにしがみついたまま目を閉じた 腕にまた注射が刺さる
「これでゆっくり眠れるから。あなたどうする? 少し休んだら?」
「ここにいる。ついててやらなきゃ」
そばにいてくれる リッキーが
僕はやっと安心して眠った
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