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9.初めての二人
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「別れよう、フェル」
言い出すような気がしていた。
「俺、短かったけどいい思いさせてもらった。部屋さ、盗聴されてんだ。フェルの部屋変えてもらうよ。だからフェルは安全……」
僕はリッキーに覆いかぶさってその後の言葉をキスで塞いだ。初めは抵抗しようとしたリッキーは長い静かなキスに応え始めた。
「言うなよ、それ以上。僕は平気だ なんて、陳腐なことは言わないよ。確かにブロンクスで命のやり取りに近いことは味わった。動けないほどのケガもしたさ。でも、これはそんな子ども染みた世界とはかけ離れた話だ」
「それが分かるなら離れた方がいいの分かんだろ? 何かあって巻き込まれたら、お前も家族もただじゃ済まねぇかもしれねぇんだ」
「テッドたちはやり過ぎたからここから離されたんだろ? リッキーに害をなしたから。僕はそんなことしないよ。それに見張られてるって、守られてるってことじゃないのか?」
歪んだ笑いが浮かぶ。
「違うんだ……俺が犯罪を犯しちゃいけないし、犯罪の元になってもいけない。ニュースやら何かのネタになっちゃならない。それを回避するためだけに連中はいる。もしもの時は……多分俺が消される」
「父親なのに!?」
「フェル。俺の国で、特にアイツのような立場で、家族だとか親子だとかは二の次なんだよ。アメリカに送られただけでも破格の待遇さ。少なくとも今生きてはいる。アイツが示した最後の温情ってヤツだ」
そんなのが温情だって? 生かして、踏みにじり、鎖で繋ぎ、投げ捨てる。
「ここんとこ、ぬるま湯に浸かったような生活してたから忘れちまってた。けど、警告したのに俺を襲ったテッドたちは追い出された。それで済んだのはラッキーだったんだ」
言葉が途切れる。目が閉じる。
「連中は小競り合いには目もくれない。どうせロクデナシの俺だから少々のことなら放っておかれる。例えば俺がただ交通事故で死んだとしたら、事故は無かったことになって、俺はいなかったヤツになるだけなんだ。どうせ幽霊だからな。死体ごと全部消えてお終い。それならアイツにも国にも厄介はかからねぇ」
なんて静かな声でそんな言葉が出てくるんだろう。
「けどその事故が元で事が大きくなれば介入される。極端になると事故の相手の家族まで丸ごと消えたりな」
まるで映画の中で生きているような世界。
「国を出る時にアイツに全部釘を刺されたんだ。『迷惑をかけるならお前にとって大事な者を全部失うことになる』って。なのにアメリカに来て間もない頃、俺はバカだから酔っ払って隣に住んでた若いヤツと揉めたんだ。刺されてさ、一緒にいたヤツが通報した。気がついたら俺は手当されてベッドに寝てた。後で聞いた話じゃ、警察が来た時には刺したヤツも通報したヤツも消えたって。それからはセックスだけに没頭した」
存在自体が否定されている。もう死んでいることになっていて、これから先もじっと息を潜めて生きていく。誰かを巻き込むかもしれないことを恐れながら。
「俺はお前に何か起きるのは耐えらんねぇ。大学、やめたっていいんだ。大人しくしてりゃ丸く収まんだからさ」
お前はそうやって生き地獄の中で壊れ続けて笑っていくのか?
「来いよ」
僕は彼を引っ張り上げて立たせた。
「どこ、行くんだよ」
「いいからついてこい」
シャワールームにはもう誰もいなかった。リッキーを引き入れて鍵をかけた。
「リッキー、今僕をどう思ってる?」
「今って……」
「あれこれ抱えてるの、分かったよ。そのデカさも。それに比べりゃアルなんてたいした障壁じゃない。分かったけどさ、そうじゃなくって今の僕に対する気持ちだけ聞きたいんだ」
「フェル……もう好きだとかそういう問題じゃなくなっちまったんだ。俺のそばには誰もいねぇ方がいい」
「好き? それだけ? 初めの頃に言った言葉はどこ行ったんだ? 映画館でも言ってくれたよな」
「フェル、聞いてくれ……」
「お前こそ聞け! 僕にこの感情を持たせたのはお前だ! そして今じゃ僕そのものがリッキーを必要としている。なのになんだよ! そばにいると迷惑がかかる? 離れた方がいい? 挙句の果てに、別れる!? ふざけるな!! 僕は一人の人間だ、誰かに何か言われて『はいそうですか』なんて言いなりになれるかよ!! リッキーは? どうなんだ、僕と別れるのに躊躇いは無いのか!?」
そんなことを聞かれたら苦しむのくらい分かってる。けど、今は本当の心が見たかった。
「あるよ!! 俺はフェルに出会って全てが変わった。幸せも味わえた……だからこれ以上は俺の我がままなんだ」
「我が儘で何が悪い? 欲張って何が悪いんだよ。僕は欲張ってるよ、リッキーを出来ればどこかに閉じ込めてしまいたい。リッキーが他の誰かを見るのがイヤだし、誰かがリッキーを見るのもいやだ。けどそんなこと言わないで済んでるのはリッキーの気持ちを信じてるからだ」
国のために自分を捨てる
国のために何もかも諦める
人の命のために
自分の気持ちを封じ込める
仕方ないことなんだろうな
僕には想像もつかないよ
そんな苦しみの中で
生きてかなきゃならないなんて
けど、お前はどうなっちゃうんだよ
なあ、リッキー
僕たちはまだ19だ
そんなもの背中に背負うには
早すぎると思わないか?
「言ってくれ、リッキー、僕が今一番欲しい言葉を。リッキーが僕を思う正直な気持ちを。僕はまだ幸せになっちゃいない」
頼む、リッキー。
お願いだ、リッキー。
どうかどうか、欲しい言葉をくれ。
「フェル」
哀しい目が僕を見つめる。
「俺、フェルが好きだ。そしてそれ以上にフェルが無事に生きていってくれることを望んでる。俺、それだけで……」
「僕はそれじゃ足りない! リッキーがいなくちゃ、そばにいてじゃれついてくれて僕を独占してくれて一緒にケンカして笑って泣いて……僕から目を離したくないって言ったじゃないか、バスルームでも! 僕が無事に生きていく? ただ生きてりゃいい? リッキー無しで? そんな安い恋愛したつもりはない!」
歯止めがきかない。僕はリッキーを壁に押しつけていた。
一時の感情に押し流される……それのどこが悪いだろう。結局恋愛なんていつだって感情に流されるもんだ。今、リッキーが僕の腕の中にいることが全てだった。
僕から逃げ出そうと必死に抵抗を続けるリッキーを体格差から追い詰めた。抱きしめて唇を奪い、首筋に歯を立てた。
「フェ フェ……ル」
「本当のことを言え! 本心を言え! 余計なことは聞きたくない!」
シャツを上げて胸を露わにする。人の愛撫に慣れているはずの肌が僕の愛撫でさざ波を起こしていた。
「あ……」
言えよ、リッキー……。
「……愛してる……愛してる、フェル、ずっと一緒にいたい……」
「聞こえない、聞こえないよ、リッキー……」
ぷっくりした胸の飾りを小さく吸って甘く噛んで、舌先で押して舐め上げて。
「愛してる…離れることなんか…できない……」
その顔を見上げた。
「僕もだ」
リッキーのシャツを脱がせた。自分のシャツも脱ぎ捨てた。どちらからともなく抱き合って、相手の口を求めあう。
「リードしろよ。僕は初心者だ」
リッキーは小さく笑った。
「簡単さ。フェルはただ感じてりゃいいんだ」
こんな愛撫を受けたのは初めてだった。啄ばむようなキスがどんどん深くなっていく。主導権を委ねたキスは犯されているような錯覚を呼んだ。
入り込んだ舌が口の中を暴れ回る。手があちこちを這い回りスウェットパンツの上から僕のその周りを指先がそっと行き来している。こんな風に焦らされたことなんて無い。決してダイレクトに触ってはくれず、ただ周りを掠めていくだけ。首をさわさわと舌が下りていく。手は止まらないまま舌があちこち寄り道しながら胸で止まった。
自分でも分かる、息が上がっていくのが。僕はリッキーの肩に両手を乗せて背中を壁に預け、ただ喘いでいた。
熱い舌が体をなぞっていく。いつの間にかスウェットが落ちていた。ボクサーの中に忍び込んでくる温かい手。とっくに僕のそこは勃ち上がり、濡れているのを感じた。胸から唇が離れる。
動きを止めなかった手が僕を包んでじっと止まった。やっと目を開けて見下ろすとリッキーの黒い瞳が見上げていた。
「俺……やっぱり無理だ、お前無しの生活なんてもう考えらんねぇ」
僕の両手は自然に彼の頬を包んでいた。
「僕たちは互いを求めあっているんだ……もうそれだけでいい。死ぬなら一緒に死んでやるよ。リッキーはただ僕に望めばいいんだ」
生きていても死んでいる
死ぬためにだけ生きていく
独りになんて出来やしない。僕もリッキーのことしか考えられない。考えられないんだよ、リッキー。死ぬことが美しいなんて鬱陶しいことは思っちゃいない。死ってもんは醜くて無様だ。けど道が一つならそれを歩くだけだ。
「俺の世界に連れてってやる」
リッキーの愛撫は優しかった。自分の中心に温かいものを感じ、上下に動くのを感じ。僕の手はリッキーの頭の上に力無く乗っていた。目を閉じた僕の耳に聞こえるのは僕を含んだリッキーの立てる音だけ。
イキそうになると口が止まる。荒い息が収まってくるとまた動き出す。足が広げられた。絶え間なくとろとろと流れていく雫をリッキーの指が掬っては後ろに塗り込んでいく。小さなその入り口に指が入りかけては口が動く。
奇妙な感覚だった。今までそこに入り込んだものは無い。異物感と、自然にそこに生まれる拒否。進入を頑なに拒むそこは、たっぷりと僕自身の垂らす雫で濡らされ解されて指を徐々に受け入れ始めた。
「う!」と呻く度にリッキーの口が上下に動く。
リッキーの舌先が先を擦り上げた。はぁっ と息を吐く瞬間を狙って指が突き進む。
「リ リッキー……もう…むり」
僅かな訴えは、リッキーの口の動きで封じられた。
イキたいのにイケない……
苦しくて、気持ちがいい……
中に入った指が動き始めて息が詰まった。爪先立って逃げようとする僕の左手が掴まれた。
「味わって。大丈夫、痛くしねぇから。俺がどんな風に感じんのか、知ってほしいんだ」
そのまま手が胸に上り捏ねては摘み、口が再び温かく包む。後ろの孔は絶え間ない異物感に、指を押し出そうと蠢いている。その指が、ある一点を掠めた。
っぁあ!
まるで電気が走るみたいだ……。僕の動きが変わったのが分かったのか、リッキーの指の動きがその辺りに集中した。
「や……めろ……そこは……っあ! 」
火花が散る
頭の中には何も生まれず、白くなってまた火花が散った……
電気が、走る
咥えられたそこが膨れ上がるのを感じた
全身を走る電気に弾け飛んだ僕は、ガクガクと痙攣しながらリッキーの腕の中へと倒れていった…………
気がつくと、僕の目の上から頭にかけて濡れたタオルが乗っていた。下半身を拭かれているのを感じて泡食って起き上がった。
「リッキー! そんなことしなくっていい!」
ただ恥ずかしかった。イカされた瞬間を思い出して顔から火が出そうだ。
「無理すんな。俺の言った通り疲れんだろ、抱く側じゃねぇと。初めてがあれならいいだろ? ロストヴァージンだな、貰ったのが俺で嬉しい!」
抱きついてくるリッキーになんて返事していいか分からず、ただテンパっていた。そのまま下から覗き込む顔は、まるで悪戯っ子だ。大きな黒い瞳がくるりと踊る。
「良かった? 俺、上手いだろ?」
褒めろと言わんばかりの顔に苦笑いだ。
「ああ、あんなの初めてだ。なんだ? あれ……」
「俺の世界へようこそ! って感じだな。飛んじまうだろ。ああやって意識手放しちまうのが一番いいんだけどね。そうはいかねぇ時もずいぶんある」
「リッキーの初めてって……」
しまった! そんなこと聞くなんて僕はバカだ!
「力づくだったからなぁ。その後もずっとそうだった。学校でも押さえつけられてヤられてたし。気持ちいいんだって分かったの、2ヶ月以上経ってからだった。上手いヤツがいてさ、ちゃんと解してからしてくれたんだ。あん時は俺、やっぱ気を失ったよ」
遠い過去を思い出すような声。辛いまま2ヶ月以上を過ごしたのかと思うとやるせなかった。無理矢理押入られたら、あんなもの裂けてしまうだろうに。前に見た腿を伝う血を思い出す。何度そんな目に遭って来たんだろう…。
「なぁ、どっちが良くなった? 入れたい? 入れられたい? すんごくいい顔してた。俺、どっちもいけるぜ」
子どものように聞いてくるリッキーに思わず浮かびかけた表情を抑えて、僕は笑った。僕が泣いていいことじゃない。
「気持ち良かったよ。あんな体験初めてだしこれからも無いと思う。でも僕はリッキーのイク顔が見たい。どんどん追い上げてって幸せにしたい。リッキーはどうなんだ? どっちがいいんだ?」
「俺……抱かれる方が好きだ。フェルにならずっと抱かれていたい」
「さっきイッてないんだろ? 僕の面倒見るばっかりで」
「いいんだ、フェルのあんな顔見られて嬉しかったから」
そう言う彼は幸せそうな笑顔を浮かべて抱きついてくる。リッキーにとって幸せって、こんなことなんだ……。
「聞いてもいいかな」
「なに?」
「リッキーのホントの名前が知りたい。ダメなら無理しないでいいから」
黙っている顔。
「ごめん、困らせたよね。いいんだ」
「リカルド」
「リカルド? あ、スペル、リチャードとあまり変わらない?」
「だからリチャードって名前を選んだんだ。どっちも 『リッキー 』になるからな。向こうじゃリカルドって、ありふれた名前なんだ」
「そうか。でもいい名前だと思うよ。リカルドか。ずっと『リッキー』は変わらないんだね」
「それだけだった。写真も何もかも置いてきた。隠してた母さんの写真も取り上げられた。リッキー って呼び名だけを国から持って来れたんだ」
そう言って、笑った。
肩を掴んで笑う口元をキスで塞いだ。それ以上を喋らせたくなかった。辛いに決まってる。セックスの中にいることだけが幸せなリッキー。なら、何もかも忘れるくらい僕があげる。それならいくらでもあげられる。
床に押し倒して覆い被さった。手が背中に回ってきてリッキーが僕を転がした。上から差し込まれた舌を吸い、今度は僕がリッキーを転がす。上になって下になって。転がりながらどんどんキスが深くなっていく。しっかりと合わさった口の中が熱い。
――愛しい
――愛してる
――リッキー 君が欲しいよ
こんな風に自分から求めるなんて……。僕が上になって動きが止まった時、唇を離した。僕を見上げるその瞳に笑いかけて黒髪にキスをした。
「冷たくないか?」
「今は体が火照ってるよ」
首を縦に振るその仕草が幼な子のようで、さっき聞いた理不尽な話に殺意が湧いてくる。
――いいよな? ずっと僕が大事にするから
こんなに人を愛せるなんて思ってもいなかったよ。過去にいくつかの恋はしたけど、ある時を境に人と深く付き合うのをやめてしまった。
リッキー。そばにいたのに知らないで、突然現れた想い人。まさか好きになるなんてな。始まりがポルノ映画。ロマンチックには思えないよ。
目を閉じて僕を待つ両の瞼に口づけた。ヒクヒクと目が動いてる。リッキーは行ったことの無い世界に連れてってくれた。だから僕も連れてってやる、今までと違う深いセックスの底へ。
ふっくらした下唇を舐める。歯を立てる。頬と歯の間をなぞればもう吐息が熱い。両の手が僕の肩を探すように上がってくるからその腕を辿っていった。滑るようになめらかな肌を通り抜けて肩を食む。聞こえる吐息が悩ましくて、僕もどんどん熱くなった。そのまま首筋まで歯を立てて耳の後ろを舐めて食んだ。
「……や……だ……」
「どうして?」
囁く声に顔が横に揺れる。
「そこ……」
「いい? 感じてる?」
息をそっと吹き込みながらその周りを舌でなぞっていく。
ぁ
と小さな声がした。
「ここ、好き?」
小さく頷くから耳の中に舌を尖らせゆっくりと差し込んだ。出たり入ったり。
「ぁ あ…や……め」
そんなに震えるなよ、もっと攻めたくなるじゃないか。耳を舐め回しながら、リッキーの腰に自分を押しつけて擦り上げた。くっ! と息を呑むのが分かる。そこはあっという間に硬く尖り、もっとたくさんの刺激を欲しがって蠢いた。反らしていく顔の下で露わになった首筋。誘われるように口を這わせていく。両脇に手をついて、リッキーの顔を見下ろしながら僕の尖ったものがリッキーのそれにぶつかる。
ぁぁ……
リッキーの手が僕の背中を這った。その感触が気持ちよくて僕も思わず目を閉じた。
気持ちいいよな。
――僕とのセックス楽しんでるかい?
――僕は楽しんでるよ、今の全てを。
あぅ……っ……
その声に目を開けた。
「リッキー」
「……ぁ……っは……」
「リッキー、僕を見て」
まるですすり泣くような声が甘い。
「目を開けろよ、僕を見るんだ」
重い瞼が持ち上がり、遠くを見るような目を見せた。
「僕を見ろ、リッキー」
潤んだ目が少しずつ僕に焦点を合わせてくる。
「分かるか? 僕が」
微かに首が縦に揺れる。額に頬にキスを落とす。
「誰かにヤられてるんじゃない。僕としてるんだ、 目を閉じないで」
誰としてるのか分からせたかった。
「僕とリッキーとでしてるんだよ、分かる?」
掠れた声が答える。
「おれと……ふぇる……」
「そうだよ」
擦りつけると あ と目を閉じそうになるから動くのをやめた。
「だめだよ、目を閉じちゃだめだ」
また目が開いた。腰を少し動かす。
「誰としてる?」
「ふぇ……る」
「うん。僕はリッキーとしてるんだ、初めてのちゃんとしたセックスを」
口元が微笑んだ。その微笑みにキスを落とす。ああ、僕はこんなに美しい花を愛してるんだ……。目を絡ませながら、リッキーも僕もゆっくりと腰を動かした。
「まだ終わりたくないだろ?」
「まだ……だ」
「そうだよな、僕も終わりたくない、もっといい気持になりたい。僕に任せてくれる?」
濡れた目が閉じていった。僕はリッキーのボクサーを脱がせた。
「別れよう、フェル」
言い出すような気がしていた。
「俺、短かったけどいい思いさせてもらった。部屋さ、盗聴されてんだ。フェルの部屋変えてもらうよ。だからフェルは安全……」
僕はリッキーに覆いかぶさってその後の言葉をキスで塞いだ。初めは抵抗しようとしたリッキーは長い静かなキスに応え始めた。
「言うなよ、それ以上。僕は平気だ なんて、陳腐なことは言わないよ。確かにブロンクスで命のやり取りに近いことは味わった。動けないほどのケガもしたさ。でも、これはそんな子ども染みた世界とはかけ離れた話だ」
「それが分かるなら離れた方がいいの分かんだろ? 何かあって巻き込まれたら、お前も家族もただじゃ済まねぇかもしれねぇんだ」
「テッドたちはやり過ぎたからここから離されたんだろ? リッキーに害をなしたから。僕はそんなことしないよ。それに見張られてるって、守られてるってことじゃないのか?」
歪んだ笑いが浮かぶ。
「違うんだ……俺が犯罪を犯しちゃいけないし、犯罪の元になってもいけない。ニュースやら何かのネタになっちゃならない。それを回避するためだけに連中はいる。もしもの時は……多分俺が消される」
「父親なのに!?」
「フェル。俺の国で、特にアイツのような立場で、家族だとか親子だとかは二の次なんだよ。アメリカに送られただけでも破格の待遇さ。少なくとも今生きてはいる。アイツが示した最後の温情ってヤツだ」
そんなのが温情だって? 生かして、踏みにじり、鎖で繋ぎ、投げ捨てる。
「ここんとこ、ぬるま湯に浸かったような生活してたから忘れちまってた。けど、警告したのに俺を襲ったテッドたちは追い出された。それで済んだのはラッキーだったんだ」
言葉が途切れる。目が閉じる。
「連中は小競り合いには目もくれない。どうせロクデナシの俺だから少々のことなら放っておかれる。例えば俺がただ交通事故で死んだとしたら、事故は無かったことになって、俺はいなかったヤツになるだけなんだ。どうせ幽霊だからな。死体ごと全部消えてお終い。それならアイツにも国にも厄介はかからねぇ」
なんて静かな声でそんな言葉が出てくるんだろう。
「けどその事故が元で事が大きくなれば介入される。極端になると事故の相手の家族まで丸ごと消えたりな」
まるで映画の中で生きているような世界。
「国を出る時にアイツに全部釘を刺されたんだ。『迷惑をかけるならお前にとって大事な者を全部失うことになる』って。なのにアメリカに来て間もない頃、俺はバカだから酔っ払って隣に住んでた若いヤツと揉めたんだ。刺されてさ、一緒にいたヤツが通報した。気がついたら俺は手当されてベッドに寝てた。後で聞いた話じゃ、警察が来た時には刺したヤツも通報したヤツも消えたって。それからはセックスだけに没頭した」
存在自体が否定されている。もう死んでいることになっていて、これから先もじっと息を潜めて生きていく。誰かを巻き込むかもしれないことを恐れながら。
「俺はお前に何か起きるのは耐えらんねぇ。大学、やめたっていいんだ。大人しくしてりゃ丸く収まんだからさ」
お前はそうやって生き地獄の中で壊れ続けて笑っていくのか?
「来いよ」
僕は彼を引っ張り上げて立たせた。
「どこ、行くんだよ」
「いいからついてこい」
シャワールームにはもう誰もいなかった。リッキーを引き入れて鍵をかけた。
「リッキー、今僕をどう思ってる?」
「今って……」
「あれこれ抱えてるの、分かったよ。そのデカさも。それに比べりゃアルなんてたいした障壁じゃない。分かったけどさ、そうじゃなくって今の僕に対する気持ちだけ聞きたいんだ」
「フェル……もう好きだとかそういう問題じゃなくなっちまったんだ。俺のそばには誰もいねぇ方がいい」
「好き? それだけ? 初めの頃に言った言葉はどこ行ったんだ? 映画館でも言ってくれたよな」
「フェル、聞いてくれ……」
「お前こそ聞け! 僕にこの感情を持たせたのはお前だ! そして今じゃ僕そのものがリッキーを必要としている。なのになんだよ! そばにいると迷惑がかかる? 離れた方がいい? 挙句の果てに、別れる!? ふざけるな!! 僕は一人の人間だ、誰かに何か言われて『はいそうですか』なんて言いなりになれるかよ!! リッキーは? どうなんだ、僕と別れるのに躊躇いは無いのか!?」
そんなことを聞かれたら苦しむのくらい分かってる。けど、今は本当の心が見たかった。
「あるよ!! 俺はフェルに出会って全てが変わった。幸せも味わえた……だからこれ以上は俺の我がままなんだ」
「我が儘で何が悪い? 欲張って何が悪いんだよ。僕は欲張ってるよ、リッキーを出来ればどこかに閉じ込めてしまいたい。リッキーが他の誰かを見るのがイヤだし、誰かがリッキーを見るのもいやだ。けどそんなこと言わないで済んでるのはリッキーの気持ちを信じてるからだ」
国のために自分を捨てる
国のために何もかも諦める
人の命のために
自分の気持ちを封じ込める
仕方ないことなんだろうな
僕には想像もつかないよ
そんな苦しみの中で
生きてかなきゃならないなんて
けど、お前はどうなっちゃうんだよ
なあ、リッキー
僕たちはまだ19だ
そんなもの背中に背負うには
早すぎると思わないか?
「言ってくれ、リッキー、僕が今一番欲しい言葉を。リッキーが僕を思う正直な気持ちを。僕はまだ幸せになっちゃいない」
頼む、リッキー。
お願いだ、リッキー。
どうかどうか、欲しい言葉をくれ。
「フェル」
哀しい目が僕を見つめる。
「俺、フェルが好きだ。そしてそれ以上にフェルが無事に生きていってくれることを望んでる。俺、それだけで……」
「僕はそれじゃ足りない! リッキーがいなくちゃ、そばにいてじゃれついてくれて僕を独占してくれて一緒にケンカして笑って泣いて……僕から目を離したくないって言ったじゃないか、バスルームでも! 僕が無事に生きていく? ただ生きてりゃいい? リッキー無しで? そんな安い恋愛したつもりはない!」
歯止めがきかない。僕はリッキーを壁に押しつけていた。
一時の感情に押し流される……それのどこが悪いだろう。結局恋愛なんていつだって感情に流されるもんだ。今、リッキーが僕の腕の中にいることが全てだった。
僕から逃げ出そうと必死に抵抗を続けるリッキーを体格差から追い詰めた。抱きしめて唇を奪い、首筋に歯を立てた。
「フェ フェ……ル」
「本当のことを言え! 本心を言え! 余計なことは聞きたくない!」
シャツを上げて胸を露わにする。人の愛撫に慣れているはずの肌が僕の愛撫でさざ波を起こしていた。
「あ……」
言えよ、リッキー……。
「……愛してる……愛してる、フェル、ずっと一緒にいたい……」
「聞こえない、聞こえないよ、リッキー……」
ぷっくりした胸の飾りを小さく吸って甘く噛んで、舌先で押して舐め上げて。
「愛してる…離れることなんか…できない……」
その顔を見上げた。
「僕もだ」
リッキーのシャツを脱がせた。自分のシャツも脱ぎ捨てた。どちらからともなく抱き合って、相手の口を求めあう。
「リードしろよ。僕は初心者だ」
リッキーは小さく笑った。
「簡単さ。フェルはただ感じてりゃいいんだ」
こんな愛撫を受けたのは初めてだった。啄ばむようなキスがどんどん深くなっていく。主導権を委ねたキスは犯されているような錯覚を呼んだ。
入り込んだ舌が口の中を暴れ回る。手があちこちを這い回りスウェットパンツの上から僕のその周りを指先がそっと行き来している。こんな風に焦らされたことなんて無い。決してダイレクトに触ってはくれず、ただ周りを掠めていくだけ。首をさわさわと舌が下りていく。手は止まらないまま舌があちこち寄り道しながら胸で止まった。
自分でも分かる、息が上がっていくのが。僕はリッキーの肩に両手を乗せて背中を壁に預け、ただ喘いでいた。
熱い舌が体をなぞっていく。いつの間にかスウェットが落ちていた。ボクサーの中に忍び込んでくる温かい手。とっくに僕のそこは勃ち上がり、濡れているのを感じた。胸から唇が離れる。
動きを止めなかった手が僕を包んでじっと止まった。やっと目を開けて見下ろすとリッキーの黒い瞳が見上げていた。
「俺……やっぱり無理だ、お前無しの生活なんてもう考えらんねぇ」
僕の両手は自然に彼の頬を包んでいた。
「僕たちは互いを求めあっているんだ……もうそれだけでいい。死ぬなら一緒に死んでやるよ。リッキーはただ僕に望めばいいんだ」
生きていても死んでいる
死ぬためにだけ生きていく
独りになんて出来やしない。僕もリッキーのことしか考えられない。考えられないんだよ、リッキー。死ぬことが美しいなんて鬱陶しいことは思っちゃいない。死ってもんは醜くて無様だ。けど道が一つならそれを歩くだけだ。
「俺の世界に連れてってやる」
リッキーの愛撫は優しかった。自分の中心に温かいものを感じ、上下に動くのを感じ。僕の手はリッキーの頭の上に力無く乗っていた。目を閉じた僕の耳に聞こえるのは僕を含んだリッキーの立てる音だけ。
イキそうになると口が止まる。荒い息が収まってくるとまた動き出す。足が広げられた。絶え間なくとろとろと流れていく雫をリッキーの指が掬っては後ろに塗り込んでいく。小さなその入り口に指が入りかけては口が動く。
奇妙な感覚だった。今までそこに入り込んだものは無い。異物感と、自然にそこに生まれる拒否。進入を頑なに拒むそこは、たっぷりと僕自身の垂らす雫で濡らされ解されて指を徐々に受け入れ始めた。
「う!」と呻く度にリッキーの口が上下に動く。
リッキーの舌先が先を擦り上げた。はぁっ と息を吐く瞬間を狙って指が突き進む。
「リ リッキー……もう…むり」
僅かな訴えは、リッキーの口の動きで封じられた。
イキたいのにイケない……
苦しくて、気持ちがいい……
中に入った指が動き始めて息が詰まった。爪先立って逃げようとする僕の左手が掴まれた。
「味わって。大丈夫、痛くしねぇから。俺がどんな風に感じんのか、知ってほしいんだ」
そのまま手が胸に上り捏ねては摘み、口が再び温かく包む。後ろの孔は絶え間ない異物感に、指を押し出そうと蠢いている。その指が、ある一点を掠めた。
っぁあ!
まるで電気が走るみたいだ……。僕の動きが変わったのが分かったのか、リッキーの指の動きがその辺りに集中した。
「や……めろ……そこは……っあ! 」
火花が散る
頭の中には何も生まれず、白くなってまた火花が散った……
電気が、走る
咥えられたそこが膨れ上がるのを感じた
全身を走る電気に弾け飛んだ僕は、ガクガクと痙攣しながらリッキーの腕の中へと倒れていった…………
気がつくと、僕の目の上から頭にかけて濡れたタオルが乗っていた。下半身を拭かれているのを感じて泡食って起き上がった。
「リッキー! そんなことしなくっていい!」
ただ恥ずかしかった。イカされた瞬間を思い出して顔から火が出そうだ。
「無理すんな。俺の言った通り疲れんだろ、抱く側じゃねぇと。初めてがあれならいいだろ? ロストヴァージンだな、貰ったのが俺で嬉しい!」
抱きついてくるリッキーになんて返事していいか分からず、ただテンパっていた。そのまま下から覗き込む顔は、まるで悪戯っ子だ。大きな黒い瞳がくるりと踊る。
「良かった? 俺、上手いだろ?」
褒めろと言わんばかりの顔に苦笑いだ。
「ああ、あんなの初めてだ。なんだ? あれ……」
「俺の世界へようこそ! って感じだな。飛んじまうだろ。ああやって意識手放しちまうのが一番いいんだけどね。そうはいかねぇ時もずいぶんある」
「リッキーの初めてって……」
しまった! そんなこと聞くなんて僕はバカだ!
「力づくだったからなぁ。その後もずっとそうだった。学校でも押さえつけられてヤられてたし。気持ちいいんだって分かったの、2ヶ月以上経ってからだった。上手いヤツがいてさ、ちゃんと解してからしてくれたんだ。あん時は俺、やっぱ気を失ったよ」
遠い過去を思い出すような声。辛いまま2ヶ月以上を過ごしたのかと思うとやるせなかった。無理矢理押入られたら、あんなもの裂けてしまうだろうに。前に見た腿を伝う血を思い出す。何度そんな目に遭って来たんだろう…。
「なぁ、どっちが良くなった? 入れたい? 入れられたい? すんごくいい顔してた。俺、どっちもいけるぜ」
子どものように聞いてくるリッキーに思わず浮かびかけた表情を抑えて、僕は笑った。僕が泣いていいことじゃない。
「気持ち良かったよ。あんな体験初めてだしこれからも無いと思う。でも僕はリッキーのイク顔が見たい。どんどん追い上げてって幸せにしたい。リッキーはどうなんだ? どっちがいいんだ?」
「俺……抱かれる方が好きだ。フェルにならずっと抱かれていたい」
「さっきイッてないんだろ? 僕の面倒見るばっかりで」
「いいんだ、フェルのあんな顔見られて嬉しかったから」
そう言う彼は幸せそうな笑顔を浮かべて抱きついてくる。リッキーにとって幸せって、こんなことなんだ……。
「聞いてもいいかな」
「なに?」
「リッキーのホントの名前が知りたい。ダメなら無理しないでいいから」
黙っている顔。
「ごめん、困らせたよね。いいんだ」
「リカルド」
「リカルド? あ、スペル、リチャードとあまり変わらない?」
「だからリチャードって名前を選んだんだ。どっちも 『リッキー 』になるからな。向こうじゃリカルドって、ありふれた名前なんだ」
「そうか。でもいい名前だと思うよ。リカルドか。ずっと『リッキー』は変わらないんだね」
「それだけだった。写真も何もかも置いてきた。隠してた母さんの写真も取り上げられた。リッキー って呼び名だけを国から持って来れたんだ」
そう言って、笑った。
肩を掴んで笑う口元をキスで塞いだ。それ以上を喋らせたくなかった。辛いに決まってる。セックスの中にいることだけが幸せなリッキー。なら、何もかも忘れるくらい僕があげる。それならいくらでもあげられる。
床に押し倒して覆い被さった。手が背中に回ってきてリッキーが僕を転がした。上から差し込まれた舌を吸い、今度は僕がリッキーを転がす。上になって下になって。転がりながらどんどんキスが深くなっていく。しっかりと合わさった口の中が熱い。
――愛しい
――愛してる
――リッキー 君が欲しいよ
こんな風に自分から求めるなんて……。僕が上になって動きが止まった時、唇を離した。僕を見上げるその瞳に笑いかけて黒髪にキスをした。
「冷たくないか?」
「今は体が火照ってるよ」
首を縦に振るその仕草が幼な子のようで、さっき聞いた理不尽な話に殺意が湧いてくる。
――いいよな? ずっと僕が大事にするから
こんなに人を愛せるなんて思ってもいなかったよ。過去にいくつかの恋はしたけど、ある時を境に人と深く付き合うのをやめてしまった。
リッキー。そばにいたのに知らないで、突然現れた想い人。まさか好きになるなんてな。始まりがポルノ映画。ロマンチックには思えないよ。
目を閉じて僕を待つ両の瞼に口づけた。ヒクヒクと目が動いてる。リッキーは行ったことの無い世界に連れてってくれた。だから僕も連れてってやる、今までと違う深いセックスの底へ。
ふっくらした下唇を舐める。歯を立てる。頬と歯の間をなぞればもう吐息が熱い。両の手が僕の肩を探すように上がってくるからその腕を辿っていった。滑るようになめらかな肌を通り抜けて肩を食む。聞こえる吐息が悩ましくて、僕もどんどん熱くなった。そのまま首筋まで歯を立てて耳の後ろを舐めて食んだ。
「……や……だ……」
「どうして?」
囁く声に顔が横に揺れる。
「そこ……」
「いい? 感じてる?」
息をそっと吹き込みながらその周りを舌でなぞっていく。
ぁ
と小さな声がした。
「ここ、好き?」
小さく頷くから耳の中に舌を尖らせゆっくりと差し込んだ。出たり入ったり。
「ぁ あ…や……め」
そんなに震えるなよ、もっと攻めたくなるじゃないか。耳を舐め回しながら、リッキーの腰に自分を押しつけて擦り上げた。くっ! と息を呑むのが分かる。そこはあっという間に硬く尖り、もっとたくさんの刺激を欲しがって蠢いた。反らしていく顔の下で露わになった首筋。誘われるように口を這わせていく。両脇に手をついて、リッキーの顔を見下ろしながら僕の尖ったものがリッキーのそれにぶつかる。
ぁぁ……
リッキーの手が僕の背中を這った。その感触が気持ちよくて僕も思わず目を閉じた。
気持ちいいよな。
――僕とのセックス楽しんでるかい?
――僕は楽しんでるよ、今の全てを。
あぅ……っ……
その声に目を開けた。
「リッキー」
「……ぁ……っは……」
「リッキー、僕を見て」
まるですすり泣くような声が甘い。
「目を開けろよ、僕を見るんだ」
重い瞼が持ち上がり、遠くを見るような目を見せた。
「僕を見ろ、リッキー」
潤んだ目が少しずつ僕に焦点を合わせてくる。
「分かるか? 僕が」
微かに首が縦に揺れる。額に頬にキスを落とす。
「誰かにヤられてるんじゃない。僕としてるんだ、 目を閉じないで」
誰としてるのか分からせたかった。
「僕とリッキーとでしてるんだよ、分かる?」
掠れた声が答える。
「おれと……ふぇる……」
「そうだよ」
擦りつけると あ と目を閉じそうになるから動くのをやめた。
「だめだよ、目を閉じちゃだめだ」
また目が開いた。腰を少し動かす。
「誰としてる?」
「ふぇ……る」
「うん。僕はリッキーとしてるんだ、初めてのちゃんとしたセックスを」
口元が微笑んだ。その微笑みにキスを落とす。ああ、僕はこんなに美しい花を愛してるんだ……。目を絡ませながら、リッキーも僕もゆっくりと腰を動かした。
「まだ終わりたくないだろ?」
「まだ……だ」
「そうだよな、僕も終わりたくない、もっといい気持になりたい。僕に任せてくれる?」
濡れた目が閉じていった。僕はリッキーのボクサーを脱がせた。
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