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6.夜を漂う
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しおりを挟むぁ や……
あの夜と同じ。ここが弱い。何度も往復するたびに体にさざ波が走る。首筋へと下りていく。びくんびくんと体が撥ねる。
も、ああ そ、こ ぃや……
「本当にいやか?」
そのまま首を這いまわり口へと戻る。いつの間にか目は閉じられていた。体をそっと撫でながらジェイの弱いところを探していく。耳の周り、首筋、脇。脇腹……腿。どこもかしこも触れば体がぴくぴく撥ねる。すぅっと胸へと下りていった。小さな飾りを、今まで誰にも触れられたことの無いそこを舌先でなぶる。もう片方の乳首を指先で軽く引っ掻く。
ぅ ぅぅ はっ
味わったことの無い愛撫に全てを素直に曝け出していくジェイの姿は、今まで見た誰よりも煽情的だった。
そして自分の中に育っているこれは何なのだろう。今まで、セックスすることは、常に欲望の吐き出しだった。相手よりも自分が感じることが全てで、相手は自分のしている愛撫や挿入で勝手に快感を拾ってくれた。けれど、今、違うものを感じる。
ジェイのこの寝乱れる姿を見ていたい。全部を味わいたい。感じさせてやりたい。そして大きな海の中に溺れさせてやりたい。
2年前、アメリカへの2ヶ月の出張で蓮は取引先のパーティーに招待され、思ったよりも酔っ払ってしまった。パーティーが終わる頃には足取りが怪しくなり、たまたまそこに来ていた男性が送るからと車に乗せてくれた。
確かに行き先を告げたはずだったが、目が覚めると知らない部屋だった。半裸の男は口も手も上手く、自分にはまだ酒が残っていた。
なぜそれを受け入れたのかは今でも分からない。けれどそこには見たことの無い世界が広がっていた。一夜だけを共にしたが、イった数は覚えていないほどだった。
それから2度ほどアメリカに行った時、その相手に連絡を取った。そしてそれ以降セックスをやめた。
それでも、どうすれば感じるのか、どうすればイかせられるのか。肌が覚えている。久し振りのセックスはカラカラに渇いた喉が水を欲するように、蓮にも強い欲求をもたらしたが蓮はそれを抑え込んだ。まだ早すぎる、目の前の若者にそれを要求するのは。
脇腹に口を這わせながら見上げれば、ジェイは開いた口で浅く息を継ぎながらゆっくりと頭を横に振っていた。時折りその顎が上に仰け反り、きれいな喉を見せる。
「ジェイ」
呼ぶ声に目を開ける。見下ろせば蓮の目がしっかりと自分の目を掴んだ。
「気持ちがいいか?」
夢見心地に頷いた。内腿を撫で上げられ股の付け根へと手が往復する。それだけで息が上がる。目を開けたり閉じたり。でも見下ろせば蓮の目がひたりと自分を見つめていた。
足を広げられた。何が起きるのかなんて分かるはずもない。ただ広げられたことそのものに力の入らない内腿が震えた。間が空いて呼吸が落ち着いた。目を開ける。頭を軽く浮かせて蓮を見た。
「ジェイ もっと気持ちよくしてやる。全部俺に任せるんだ」
意味も分からず蓮の口が開くのを見た。自分の昂ぶりが生温かいものに覆われた。大きく見開いた目が最後に見たのは上下に揺れる蓮の黒髪だった。
頭がベッドに落ちた。声が上がるのに気づかない。蓮の頭を必死に突っ張っている自分の手に気づかない。恐ろしいほどの快感がジェイを襲う。手から力が抜けベッドに落ちた。
っは! ああ ぁああ……
自分のモノに絡みつく舌。上下している温もり。頭の芯が痺れる。全身が震える。舌が自分に入り込むかのように先端を撫でられ強く擦られた。
あ、あ はッ! あぁ ああああ!!
追い上げられシーツを掴んだ、逃れられない波に逆らおうと。爪先が突っ張り下腹が激しく痙攣した。頭の中が真っ白になる、掴んでいたシーツが消えた。何かが弾け飛んであっという間に波に呑み込まれて行った……
口の中で膨れ上がるのを感じ、蓮は口を離した。上に跳ね返ったジェイの高まりから白濁が飛び散る。大きく上下する胸。震える下肢。その全てが蓮を煽り立てた。自分のものを扱いて震えながら果てた。入るつもりは無い、まだその時では無い。
どさっと自分の身をジェイの脇に投げ出した。まだ震えの止まらないジェイに、上体を起こして口付ける。ゆっくり動き回れば徐々にジェイの舌が応え始めた。擦り合わせる舌を吸い、唾液を啜り上げる。手を下に這わせればまた緩やかに勃ち始めた。
手を離し、またジェイの隣に頭を落とす。天井を見上げ、目を閉じた。ジェイが身じろぎ始めたのを感じた。
初めての大きな快感にジェイの心はまだ震えていた。生きてきてこれほどの衝撃を体に味わったことが無い。しばらくの間呆然としていた。その内に気が付いた。体が解放されている。隣を見た。蓮が目を閉じてそこに横たわっていた。
「蓮……眠ってるの? 蓮」
声が掠れている。すぐに手が伸びてきて髪の間に指が潜った。
「起きてるよ、ジェイ。少しは落ち着いたか?」
そう言われた途端に顔が熱くなった。正体を失くして、自分はどんな顔をしていたんだろう。行為の最中、自分はどうしてたんだろう。
「俺……変だったですか……?」
「何が?」
「だって……蓮、もう嫌そうに見える……」
顔をジェイに向けた。そうか、初めてだから不安なんだ。自分がどうだったか。
「きれいだったよ、お前、本当にきれいだった。どうしていいか分からないほど俺はお前に惚れてるよ」
今度は別の意味でジェイの顔が熱くなった。逃げ出したい、何を言っていいか分からない……
「こっち来い」
引き寄せられて蓮の胸に頬を当てた。蓮の鼓動が聞こえる。筋肉が発達していて締まった体。なぜかテーラーの牧野の言葉が浮かんだ。
『もう少し肉をつけないと』
――本当だ、固い
それがなぜか可笑しかった。体が少し揺れる。
「何、笑ってるんだよ。お前、色気無いぞ」
「だって、蓮、固い」
自然、ジェイは蓮に甘えるような口調になっていた。
「ジェイ。俺、お前が欲しいんだ」
上を見上げた。欲しい? どういう意味? しばらく待ったがその後が続かない。
「蓮? どういう意味?」
女性とセックスしたことがあれば説明がしやすい。けれどジェイは何も知らない。どうすれば心にも体にも苦痛を与えずに思いを遂げられるだろう。
「分かってるだろうが男と女は体の構造が違う。自然は男女がセックスしやすいように人間の体を作ってる」
なぜこんな説明をしているのか、蓮自身にもよく分かっていない。けれど大事な話だとどこかで納得をしている。言葉は途切れず続いた。こんな話は本当なら白けるだけだけれど。
「男女なら本能で何の知識も無くセックス出来るんだよ」
「でも、今」
「今のはセックスじゃない。俺はお前のマスターベーションを手伝っただけだ」
あれは自慰だった? え? じゃ、セックスって? 混乱しているのが分かっているかのように腕の中にジェイを抱いて喋った。ジェイの両手は自分の胸との間に収まっている。まるで女の子のように。
「お前を俺のものにしたい。でも力づくにはしたくない。俺はお前を傷つけたくないんだ」
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