博学英才の【太子】と、【日御子】の超常能力を受け継いだ【刀自古姫御子】

〔２８４〕

　　【入鹿】にとって、【鎌足】は１歳年下の親友であり、自分を慕ってくる【鎌足】をかわいがっていた。

しかしながら、【鎌足】にとって【入鹿】は不倶戴天の敵の孫に過ぎない。

その主敵である【蘇我馬子】は病死して、久しい。

【馬子】亡き今、【鎌足】の胸中に宿るのは『蘇我本宗家の滅亡』のみである。


　　【鎌足】の座右之銘は『孫子』の『敵を知り、己を知らば、百戦危うからず！』である。

その敵を知るために、【鎌足】は本心を封印し、表面上は親友のふりをし、あたかも【入鹿】の舎人の如く、振る舞った。

そして、付き合いが深くなればなるほど、【入鹿】の桁違いの記憶力や思考回転の速さに圧倒されたのである。

しかも、中国の政治制度を手本として、早く、追い付き追い越せとの信念があり、その進歩的革新的な発想には【鎌足】も頭が下がる思いであり、殺すには惜しい人物とさえ思えて来た。