博学英才の【太子】と、【日御子】の超常能力を受け継いだ【刀自古姫御子】

第７章 ５８７年 ８月２日 【泊瀬部若雀王子】の【大王位即位】の儀が挙行された！

〔９８〕【泊瀬部大王】は泊瀬山に、大王家の部曲の壮強な者を多数集めて、狩りに出掛けて、大猪を射止めた！

　　【泊瀬部大王】即位の５年後の冬のことであった。

【大王】は、大王家の部曲の民から壮強な者を多数集めて、狩りに出掛けられた。

夕方になるまで、猟がなかったので不機嫌でおられると、お帰り近くになって、大きな猪が現れた。

「やれ出た！」

【大王】は弓を引き絞って、射られた。

矢は見事に首筋に当たり、矢竹の半ばまで突き刺さったが、急所をはずれていたのだろう、そのまま駆けさってしまった。

「追え！　逃すな！」

【大王】は叫び、馬に飛び乗って、追われた。

人も馬も犬も、叫んだり、吠えたりして、一斉に追いかけた！


　　しかし、猪は岩石を落とすように斜面を駆け下り、谷底の繁みに入り、逃がしてしまった。

日が暮れかかったので、心を残して、帰路につかれたが、ご機嫌は益々悪くなった。


　　【大王】の宮は、倉梯の紫垣宮といって、そこの近くまでこられた時、泊瀬の里人らが、猪を担いで追いかけて来た。

【大王】の矢が刺さった猪が逃げてわからなくなり、御機嫌麗しからず、お帰りになったと聞いて、里中総出で探したところ、一山越えた谷で倒れていたので、こうして持参したというのである。

お供の舎人の取次で聞かれた【大王】はお喜び一方ではない。

「よくぞいたした！」

と厚く褒美を賜ってお帰しになり、至って上機嫌になり、宮中に入られた。


　　宮中には【厩戸】をはじめ、２・３人の王族や数人の豪族、舎人などがいた。

【大王】はその人々に、今日の狩猟の話をされた。

興奮して、生き生きとしたお話ぶりであった。