忘れた

凛ちゃん

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孤独とは

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私が幼い頃、母は、よく、こんな事を言った。

ひとりは、寂しい。
けれども、本当に寂しいのは、
周りに大勢のひとがいるのに、
寂しいと、思うことよ。

母には、恐らく、常にねえやか、乳母が側にいた筈。けれども、寂しかったのだな、と。
どんなに、側にひとがいても、本当の意味で理解者でなければ意味はないのだ。
周りにいる人数が多ければ多い程、寂しさは増すのだろう。

晩年の母は、否、恐らくずっと、わかってもらうことを諦めていたように思う。
その人生の中では、必死にわかってもらいたいと欣求し、もがいた頃もあったろう。
思春期の私に、
「ひとは言葉にした分しかわからないの。だから、必要なことは、必要なんだと言葉にしてちょうだい。」
絞り出すような、涙声だった。

母は、察して貰う事を嫌った。
それは、頼んでもいないのに、勝手に間違った事をされた上、察してやったなんて、迷惑以外何者でもない。
と、言う、実に母らしい、簡潔明瞭で、潔癖な、答えだった。

母は、見るからに温和で、優しいひとだと誰もが言う。
しかし、真実の母は、打って響かないとアタマ悪いと一言。
自分が言った事を正しく理解しなければ、にっこり笑って担当者を変えさせる厳しいひとだった。

ひとは、限られた時間の中で生きているのだから、アタマの悪い他人に、それも相手は仕事として自分に接しているにも関わらず、お客の時間を無駄にするのはプロではない。し、いづれ、そんな出来の悪い輩には損失を与えられるので、早めにチェンジして貰うのがよい。と。
徹底して、合理的なひとだった。

にも、関わらず、犬に対する慈愛は、逸脱していた。そうして、彼らの、母への愛も、深かったように思う。

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