忘れた

凛ちゃん

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過去

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 長い時間の経過と言う距離の中で、過去は確実に風化の一途を辿る。
それは、過去に拠って生きて往こうとする人間にとっては悲劇に他ならない。

私は、飛行機の窓から、美しい太平洋の果ての海を眺めていた。
この海を眺めたのは、もう、50年近く前の事だった。
あれは、
そう、あれは、、、
母と二人、そう、最後の旅だった。
もしも、私が、南の島でリゾートがしたいなどと言わなかったら、
母の言う通り、母の好きなハワイに行っていたなら、ずっと、旅が一緒に出来ていたのかも知れない。
何故、私は、この海に惹かれ、
何故、母は、この海をあんなに悲しそうに眺め、
最後迄、他の海にしようと言ったのだろう。
母は、もしかしたなら、
否、恐らく、わかっていたのだろう。
そう、己の身に起こることを。
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