チビ・デブ・ババアの異世界転生物語〜55歳子宮癌余命3ヶ月借金700万バツイチ無職〜

第三章 第一話

何故、？

私が、何故、甥の婚約者の令嬢の誕生日夜会を訪れ、甥に代わりエスコートしたか？
それは、元々彼女が私の婚約者候補だったから。
そう、そうなのだ。
この、美しく、凛とした今生一の青い薔薇とすら謳われる我国一の、姫。
リリア・ラ・フォン・アルラオネは、生まれた時、否、生まれる前から私の婚約者になる筈だった。
私の地位は王弟であったが、歳の離れた王である兄の王太弟であったから。
王である兄には、子が1人いた。
私より、僅か4歳年少なだけの男児。当然、生まれた時すぐ、王太子となるべきはずだったが、私の母、つまり王の母でもある王太后が意義を唱えた。甥である、クラヴィスが、王妃の不義によって生まれた子故、孫とは認めない、と。
その日から、次の王位を巡り、私と甥、否、王妃と王太后による熾烈な次期王位争いが始まったのだ。
王位に就くには、この国の3つの公爵家を出自とした姫を正妃にしなければならないと定められていた。
しかし、何故か父の代には姫が産まれず、隣国から侯爵位の娘を迎えた。故に、現王妃は、厳密には正妃の身分ではない。
母である王太后は、それも気入らないのだ。
挙句、クラヴィスは、王家の特徴である碧眼も金髪も受け継いでいない。かと言って、偶に現れる3公爵家の特徴であるピンクもしくは銀の髪、アメジストの瞳も受け継いでいないのだ。
兄は、私と同じ碧眼、金髪。
私たちの父王も同じだった。
母は、公爵家の特徴である銀髪にアメジストの瞳。
王妃は、黒髪に茶色い瞳だが、甥であるクラヴィスは、緑色の瞳に赤い髪をしていて、我が国の北に位置するアラン国、王妃の母国の国民の多くが持つ色だった。故に、尚更、この国では疎まれた。しかし、なぜ、形勢が逆転し、私が王太弟の地位を降りたかといえば、王妃によって、母が殺された。
なんと、王妃は、憚る事なく、兄である王にも毒を盛った。
そうして、解毒剤と引き換えに、息子クラヴィスの王太子就任を迫ったのだ。　
私とリリアは、リリアが生まれる半年前、出産前婚約をしていた。この国には、まだ、シャーマンがいる。
とても力のある、歴代最高位と言われるリアと言う、150歳のシャーマンが、アルラオネ公爵家に生まれる姫には、とてつもない力があり、その姫を王妃にすれば、この国は救われると神託を授けたのだ。しかし、そのすぐ後、リアは、不自然な死を遂げた。
母は、リアに神託を授かりに行った帰り道での不可解な事故死だった。
そうして、生まれてきたリリアの力を恐れた王妃は、あろうことか、生後間もないリリアに毒を盛ったのだ。
しかし、リリアは、死ななかった。
私は、確かに王位継承者から外れたが、王家と、リリアは、護ると誓ったのだ。

しかしながら、あの愚かな女は王妃の手のものではないだろう。そこまで、人材不足では、ない、気はする、、、