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夜行性ガールズの日常
優しさでできている
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◼◼◼
今日は、本当に素晴らしい動物園日和だった。
雨に降られることもなく、愛郁も美羽も本当に楽しそうに 遠足を楽しんでくれた。ただ桜に取っては喜ばしい反面、肉体的にも精神的にも堪える二日間だった。
アクシデントと割りきるにしても、昨晩の失態は思い出すだけで 胸が締め付けられる。自分に隙があったことは認めるが、それよりも彼のキスを受け入れてしまった自分が 恐ろしくて堪らない。それに凌平のママ友たちに
姉妹との関係性を聞かれる度に、凌平の従兄弟を偽り 苦し紛れの言い訳で 不可解な顔をされるのもなかなか難儀だった。でも一番の疲労は、夜勤明けでろくに寝ないで 一日慣れない保護者業をして、また夜から完徹なんていうスケジュールだった。
若い頃は体力と気力で 大抵のことは誤魔化して乗り切れていたが、肉体年齢は 嘘偽りなく 日々 退化していく。もうこんな過密で無謀日程は、年齢的にアウトだ……
しかも都内の一等地と言えども、オフィス街の ど真ん中にある深夜の店内は それほど忙しくない。だから夜間の業務と言えば、ただひたすら掃除やら ドリンクバーの整理整頓などの単純作業のオンパレードで、一瞬でも気を抜くと猛烈な睡魔に襲われるのだ。
桜は時計をチラ見して、定時までまだ六時間もあることを確認すると小さく溜め息を漏らした。
「遠藤さん? 今日は 顔色が悪くないですか? 」
「えっ…… そう見える? 」
マズイ。ため息を聞かれちゃった……かな……?
桜は内心冷や汗をかきながらも、声の主の方を振り返った。するとディナータイムに大量に出た洗い物を機械に詰めながら、彼はこちらを見ていた。
彼の名前は織原究
桜が三年前にこの店に異動してきてから、夜勤をするときには、ほぼデフォルメのようにコンビを組まされる 戦友のような関係だった。前髪が鬱蒼として表情は見えにくいが、その声色と間の取り方で 自分を心配をしてくれているのが分かるくらいには 付き合いは長い。
「はい。まあ 正確には、見た目はいつも通りですが、表情が疲れているように見えます 」
「えっ? 」
桜は一瞬手を止めて、織原の目を凝視した。ここ数年 ほぼ毎日二人きりで夜勤をしているが、もの静かで 普段は自分からは殆ど話をしてこない織原に、ここまで心配されるのは初めてかも知れない。
「そう? 確かに、昼間は幼児の遠足の付き添いで、バタバタ動き回ってたし、他にもモロモロあって。この二日間くらい、あんまり寝てないと言えば寝てないかも…… 」
「幼児? 甥っ子さんとかですか? 」
「うんー。まあ そんなところーかな…… 」
桜は少し声をひきつらせながら返答した。本当は元カレと元親友の子どもの面倒をみていたなんて、まるで昼ドラの泥沼みたいな展開なのだが、何があっても他人には説明したくはない。冗談抜きに この事実は墓場まで持っていきたかった。
「そうですか。副長はいつも無茶しすぎてる節がありますから、あんまり無理しないで下さい 」
「ありがと 」
桜はニコリと笑顔を見せると、少しいたたまれない気持ちになる。織原が声を掛けてくれるなんて、きっと純粋な気持ちで彼は私を心配してくれているに違いがない。何だか色々と 後ろめたくなるではないか。
「何なら 少し仮眠を取ってきて下さい。今晩はお客さんもいないですし、これ位なら僕一人でも何とか回せそうですから 」
「あっ。でも悪いよ…… まだ、そんな時間じゃないし。この時間は 一人だと忙しくない? 」
桜は厨房のすりガラス越しに、店内を目視した。客層は終電を逃した夜明かし組が数組、それに宿無しテーマパーク帰りの若者たちも数組、みな注文は終わっているが、日中に天気が良かったせいもあるのだろう。今日の店内は中々の盛況ぶりだ。
「別に。頻繁にあることではないから、大丈夫ですよ 」
織原は食洗機のボタンを押すと 髪の毛落下防止用の帽子を外し、厨房服の上から ホール専用のエプロンを装着した。桜には、こういうシチュエーションに自分が弱い自覚が少しはある。これが いわゆる制服マジックってやつだな、と桜は自分自身に思わず動揺していた。
「ごめん、ありがとう。じゃあ少し早いけど、お言葉に甘えさせてもらおうかな。私も気持ちは 若いつもりなんだけどな 」
「疲れたときは、お互い様です 」
「うん 」
桜はニコリと笑顔を振り撒くと、そのまま事務所へと向かった。その姿を見送る織原は、気のせいか少し安堵したような表情にも見えた。
◆◆◆
「やっぱり 追い詰められたら、外に出るのが一番だよねー 」
時刻は、とうに丑三つ時。
年頃の娘だというのに、朱美は大きな麻のトートバッグを下げつつ、永代通りを意気揚々と歩いている。流石に この時間だと 東京のセンターオブセンターに位置するこの街でも、人通りはおろか タクシーがたまに通るくらいと敢然とした状態だ。
さっきは刺激欲しさに 吉岡と無謀過ぎる約束をしてしまったものの、やはり部屋で独りぼっちでは ネームはさっぱり捗らない。これだから こんなにネットワークが進歩しても、日本はいつまで経っても在宅ワークが復旧しないじゃないだろうか?
朱美は勝手に妄想し 一で人納得すると、ビーチで履くようなサンダルをパタパタ鳴らしながら 夜道を進んでいった。桜の勤めるファミレスまで自宅から少し歩かなくてはならないのは たまに傷だが、あそこに行けば桜にも会えるし、ずっと とはいかないが世間話をすることも出来る。
朱美はいつものように店の扉を開くと、ルーティーンのように桜を探す。『あんた、また来たの!?』とか文句は言われそうだが、それは十分折り込み済みだ。もし桜から何かを言われたら『ネームがピンチなの!』とか言って、いつものように甘えればいい。
だけど次の瞬間、朱美を迎え入れたのは想定外の人物だった。
「いらっしゃいませ。お好きなお席をご利用下さい 」
「……!? 」
あんた誰ッッ!と絶叫したい衝動を、朱美は咄嗟に胸の奥に押し込める。こんな人は見たことがないけど、従業員ってことだよね? 朱美は恐る恐るいつものカウンター席へ向かうと 無言で腰を下ろすしかなかった
この男性は、何者なんだろう……
もちろん店員なんだろが、容姿は髪の毛で隠れてて見えないし、そもそも見慣れた制服とは異なる服装だし、何より接客業に求められる愛想を感じることが出来ない。朱美は手帳を開き、桜の出勤予定のメモを開く。やはり今日のこの時間帯は仕事なはずだった。
すると警戒する朱美を他所に、織原は朱美の前に水を置くと 深夜の お決まりの断りを続けた。
「お客様。ただ今のお時間は深夜割り増しなため、お食事料金に十パーセント加算させていただきます。ご了承ください。ご注文がお決まりの頃、また参ります 」
「あっ、はい 」
なんと まあ、事務的な応対なんだろうか。
見慣れない顔だが 注文に使う端末の操作は素早いから新人でもなさそうだし、この服装から察するに裏方さんだろうか?
「あのー 」
「何か……? 」
「いえ。決まったら、ベル押します 」
朱美は『遠藤さんはいますか?』と口を開きそうになったが、咄嗟にその言葉を押し込めた。
別にお腹が空いて ここに来たわけではないのだが、桜と喋りたくてここに来たとは、ちょっと言い出せる雰囲気ではない。織原は朱美の様子を見て腕時計をチラリと確認すると、またキッチンへと戻っていった。
◆◆◆
朱美は見慣れたメニューを眺めながら、今日はパフェだけ頼んで 早めに退散しようと考え始めたときだった。裏手の厨房から 見知った顔が早歩きでこちらへと向かってきたのだ。
「あーけーみっっッー!! 」
桜は最大限 声を殺しながら、しかし そのままフェーダーを上げたら振りきれんばかりの勢いで 朱美の前にやってきた。今日は少し髪が跳ねているように見えたが、相変わらずファミレスの制服が似合ってない辺りはいつもの桜だ。
「ああ、桜ねぇ。来ちゃった 」
「桜ねぇ、来ちゃった(ハートマーク)じゃないわよ。うちは飲食店だからね。あんたの作業場じゃないし、夜明かしする場所でもないの! 」
「だってさあー、うちの担当が、締め切りを巻いてくるんだもん。こっちも、本気で取り組まないと間に合わないからさ。家だと誘惑な多過ぎて、全然はかどらないしぃィ…… 」
朱美はそう言いながら水を一口飲むと、テーブルにルーズリーフ数枚と筆箱を取り出す。すると真っ白な紙の束を見るなり、桜は「はあ…… 」と小さくため息をつくのだった。
「だからってさ。別に外で作業をしなくてもいいんじゃない? 」
「だってさ、吉岡に合コンのセッティング頼んだら、締め切り守れたらー とか言うんだもん。本気出さなきゃ 」
「……はあ? 今なんて? 」
「だから、合コンだよ。合同コンパ!ってか、桜ねぇも行かない? メンツは吉岡の交遊関係だから、K大卒とかイイ人が揃うと思うよ 」
朱美は悪い笑みを浮かべて、桜を上目遣いで覗き込んだ。桜は思わず一歩後ろに後退したが、目線を反らしてこう答えた。
「私は、今回はとりあえずいいわ…… 」
「えーっ。来週の土曜日だけど、無理? 」
「っていうか、私は土曜日は基本的に仕事だし。それに暫くは そういうのは大丈夫っていうか…… なんというか…… 」
桜の言葉を聞いた朱美は、怪訝な顔をして桜の表情を伺った。昨日の朝(正確には一昨日の朝)飲んだときと比べると、明らかに様子が変だ。まあ、元から桜は来ないと想定していたし、仕事中の相手に対して理由を深追いするつもりない。
「桜ねぇは、そう答えると思ってたよ。多分 吉岡の友達だと、私よりも学年一つは年下だしね 」
朱美はクチャクチャになったプロットを鞄から手にすると、その文字列の間を傍線で区切り始めた。その様子を見た桜は少し安堵したようだが、すぐにハッとしてメニューを朱美の前に差し出した。
「っていうか、朱美、ご注文は? 」
「あっ、そっか。まだ頼んでなかった。ほうれん草のソテーと、白のハーフボトル、あと桃のパルフェ…… 以上で 」
「ご注文、かしこまりました。って、酒飲むの!?」
「へっ? 何かまずい? 」
「いや。そんなことはない……けど…… 」
例の吉岡さんが聞いたら怒り心頭だろうなー、と桜は心の中で同情をする。そもそも全国の神宮寺アケミファンのみなさんには、朱美が酒を片手に仕事をしているところなんて絶対見せられない光景に違いない。
「まあ、いいわ。消しカス出ても、床に落とさないでよ…… 」
「はーい 」
桜が端末に注文を打ち込んで裏に戻ろうとすると、朱美が「ところでさ…… 」と桜を引き留めた。
「今日ここに来たとき、知らない店員さんが接客してくれたんだけど? 」
「えっ? あっ、そういえば、朱美は会ったことはなかったかもね。彼は織原くん。うちの深夜営業を支えてくれる、縁の下の力持ち 」
「へー、新人さんとか? 」
「ううん。彼はもう三年はうちにいるベテランさん。いつもはキッチンにいるから 」
「あっ、そうだったんだ。そうだよね、確かにシェフがいなきゃ、レストランは成り立たないか 」
朱美は織原の顔を思い出すと、アイツなかなか料理うまいじゃん、と思った。惣菜店の元店長 兼 栄養士の朱美がそう感じたのだから、人は見かけによらない。
「さっき、ホールにいたのは 私が休憩中だったから、ホールにでてきただけ。朱美がいつもうちで食べてるものは、織原くんのお手製ってことね 」
「ふーん。織原さんは…… 本業はコックさんではない?のかな? 」
「うん。織原くんはバイトさんだからねぇ。って、何で朱美にうちの店の雇用形態を話さなきゃなのよ。しかも、なんか当たっちゃってるし。あんたは占い師かなんか? あんな一瞬で、第六感が優れすぎでしょ? 」
「その、一応、私も創作家の端くれだから…… ってのは嘘で。私がこの店に来るのは、桜ねぇがいるときだけじゃない? いつも私が食べてる料理は織原さんが作ってるのなら、社員の桜ねぇ女と毎日同じシフトに入ってる男子の織原さんは、昨今の労働環境を考えるとバイトさんかなー、って思っただけ 」
「……確かに、大体そんなところだけど。流石、そういうところの頭の回転のよさは感服するわ。私も織原くんの本業の中身は知らないけどね。まあ、うちでの稼ぎは取り敢えず生活のため、ってのは当たりだと思うよ 」
桜は一瞬裏に引っ込むと、ハーフボトルのワインを持ってくる。この白ワインはオリジナルのチリワインで、値段のわりになかなかいい味をしていた。
「って、あんたねぇー。無駄話ばっかりしてないで、さっさと原稿進めなよ。さっきから全然進んでないじゃん。今日は、お日様昇ったら自力で帰ってもらうからね 」
「えーっ! 桜ねぇ、送ってってよ。どうせ、うちは帰り道じゃん 」
「ぜんっぜん、帰り道じゃないしっッ。私も一昨日から殆ど寝てないから、仕事終わったら真っ直ぐ帰りたいの。今日はマジで無理っ! 」
桜はワインを注ぎながら、自分の部屋のベッドを想像した。凌平の家では、あれから殆ど寝れなかったし、高速バスは渋滞でよく寝れたが、今の仮眠は結局朱美の来店に気を使ってくれた織原に起こされた。(まあ、それでいいのだが )
「ってか、思い出した。あのさ、昨日は あの後 茜を ちゃんと送っていけたの? 」
「ああ…。あの日は、結局うちに連れて帰った 」
「へっ? あっ、そうしたの? 」
桜は不思議そうな顔をして、朱美を見た。桜は数度 朱美の家に行ったことがあるが(正確には、酔いつぶれた朱美を介抱しただけで 上がってはいない) 部屋が散らかっていることや、アシスタントや吉岡が入れ替わり立ち替わりいることを理由に、滅多にプライベートな友人を上げたりしないからだった。
「うん。仕事関係の人間が来ないの確定してたからね。それに桜ねぇも、あの日は結構酔ってたでしょ? 」
「えっ? 」
朱美は自分のガウチョパンツのポケットからスマホを取り出すと、何やら画面を開いて桜に見せた。
「うっっッ、これっ…… 」
桜は一瞬固まると、画面の地図を直視した。朱美に送ったはずの茜の家の地図データが、何故か凌平宅付近の地図になっていた。
「桜ねぇも、訳わからない地図をくれるし、茜は意志疎通が出来る状態じゃないって感じだったし。私も桜ねぇに 連絡取り直すのが 面倒なくらいには酔っ払ってたからね。うちに連れて帰って 適当に寝かせて、私の服着せて うちから仕事にも行かせちゃった。二日酔いにはうちのインクやら塗料がの染み付いた部屋は、堪えたみたいだけどね 」
「あっ、そっか。地図は……悪かったね。 気を付けるわ 」
「別に気にしないでいいよ。普通に六本木までタクシーで連れて帰るの、お金掛かりそうでイヤだなー、と思ったのもあるし 」
朱美。あんたは四人の中でぶっちぎり稼いでるっしょ、と突っ込みたかったが、桜はその言葉を押さえこんだ。それよりも、朱美が あの木更津の地図に関して何も言ってこなかったことの方が有り難い。この場合はこちらから深く話題を掘り下げないでおこう ……桜はそう思った。
◆◆◆
ネームが捗ったのかは分かり兼ねたが、朱美はモーニングの客が賑わう前くらいの時間に退散していった。結局ハーフボトルでは足りず、さらに中生を数回頼むという不思議な順番で酒を飲み続けていた。
「ごめん、織原。私ってば、今日殆ど仕事してなかった 」
「いいえ。そんなことはありません。それに、お客さんも、漫画家の先生以外は始発組しかいませんでしたし 」
織原は白の厨房服を脱いで洗濯かごに入れると、ロッカーの中からクロックスを取りだして 靴を変えていた。
「でも まさか 漫画家先生が最初にうちの店にいらしたときには、こんなに遠藤さんと仲良しになるなんて。僕は想像していませんでした 」
「うん。それは私も同感かも。なんか、アイツといるとね 、何となく自分も全うな人間になれるような気が しちゃうんだよね。私の周りには ああいうタイプの友達は、今までいなかったから 」
桜は髪を解きながらタイムカードをガチャリと挿すと「今日はありがとう。お疲れ様」と織原に声をかけて、店の裏口から外に出る。店がガラス張りだから外の明るさはは知っているが、流石に直射日光を浴びるのは夜勤明けには かなり堪えた。
何だか、物凄い濃密な小説を 読み終えたときのような、そんな心境だった。
四人でいるときには、姉御肌で偉そうなことばかり言っているのに、本当の自分は 元カレとも適度な距離感が掴めずに、だけど弱い部分は見せたくない見栄も張ってて、三十路を過ぎてもみっともない生き方しかできていない。
私の本質を朱美たちが知ったら……
きっと彼女たちは私に対して、凄く幻滅するだろうと思った。
今日は、本当に素晴らしい動物園日和だった。
雨に降られることもなく、愛郁も美羽も本当に楽しそうに 遠足を楽しんでくれた。ただ桜に取っては喜ばしい反面、肉体的にも精神的にも堪える二日間だった。
アクシデントと割りきるにしても、昨晩の失態は思い出すだけで 胸が締め付けられる。自分に隙があったことは認めるが、それよりも彼のキスを受け入れてしまった自分が 恐ろしくて堪らない。それに凌平のママ友たちに
姉妹との関係性を聞かれる度に、凌平の従兄弟を偽り 苦し紛れの言い訳で 不可解な顔をされるのもなかなか難儀だった。でも一番の疲労は、夜勤明けでろくに寝ないで 一日慣れない保護者業をして、また夜から完徹なんていうスケジュールだった。
若い頃は体力と気力で 大抵のことは誤魔化して乗り切れていたが、肉体年齢は 嘘偽りなく 日々 退化していく。もうこんな過密で無謀日程は、年齢的にアウトだ……
しかも都内の一等地と言えども、オフィス街の ど真ん中にある深夜の店内は それほど忙しくない。だから夜間の業務と言えば、ただひたすら掃除やら ドリンクバーの整理整頓などの単純作業のオンパレードで、一瞬でも気を抜くと猛烈な睡魔に襲われるのだ。
桜は時計をチラ見して、定時までまだ六時間もあることを確認すると小さく溜め息を漏らした。
「遠藤さん? 今日は 顔色が悪くないですか? 」
「えっ…… そう見える? 」
マズイ。ため息を聞かれちゃった……かな……?
桜は内心冷や汗をかきながらも、声の主の方を振り返った。するとディナータイムに大量に出た洗い物を機械に詰めながら、彼はこちらを見ていた。
彼の名前は織原究
桜が三年前にこの店に異動してきてから、夜勤をするときには、ほぼデフォルメのようにコンビを組まされる 戦友のような関係だった。前髪が鬱蒼として表情は見えにくいが、その声色と間の取り方で 自分を心配をしてくれているのが分かるくらいには 付き合いは長い。
「はい。まあ 正確には、見た目はいつも通りですが、表情が疲れているように見えます 」
「えっ? 」
桜は一瞬手を止めて、織原の目を凝視した。ここ数年 ほぼ毎日二人きりで夜勤をしているが、もの静かで 普段は自分からは殆ど話をしてこない織原に、ここまで心配されるのは初めてかも知れない。
「そう? 確かに、昼間は幼児の遠足の付き添いで、バタバタ動き回ってたし、他にもモロモロあって。この二日間くらい、あんまり寝てないと言えば寝てないかも…… 」
「幼児? 甥っ子さんとかですか? 」
「うんー。まあ そんなところーかな…… 」
桜は少し声をひきつらせながら返答した。本当は元カレと元親友の子どもの面倒をみていたなんて、まるで昼ドラの泥沼みたいな展開なのだが、何があっても他人には説明したくはない。冗談抜きに この事実は墓場まで持っていきたかった。
「そうですか。副長はいつも無茶しすぎてる節がありますから、あんまり無理しないで下さい 」
「ありがと 」
桜はニコリと笑顔を見せると、少しいたたまれない気持ちになる。織原が声を掛けてくれるなんて、きっと純粋な気持ちで彼は私を心配してくれているに違いがない。何だか色々と 後ろめたくなるではないか。
「何なら 少し仮眠を取ってきて下さい。今晩はお客さんもいないですし、これ位なら僕一人でも何とか回せそうですから 」
「あっ。でも悪いよ…… まだ、そんな時間じゃないし。この時間は 一人だと忙しくない? 」
桜は厨房のすりガラス越しに、店内を目視した。客層は終電を逃した夜明かし組が数組、それに宿無しテーマパーク帰りの若者たちも数組、みな注文は終わっているが、日中に天気が良かったせいもあるのだろう。今日の店内は中々の盛況ぶりだ。
「別に。頻繁にあることではないから、大丈夫ですよ 」
織原は食洗機のボタンを押すと 髪の毛落下防止用の帽子を外し、厨房服の上から ホール専用のエプロンを装着した。桜には、こういうシチュエーションに自分が弱い自覚が少しはある。これが いわゆる制服マジックってやつだな、と桜は自分自身に思わず動揺していた。
「ごめん、ありがとう。じゃあ少し早いけど、お言葉に甘えさせてもらおうかな。私も気持ちは 若いつもりなんだけどな 」
「疲れたときは、お互い様です 」
「うん 」
桜はニコリと笑顔を振り撒くと、そのまま事務所へと向かった。その姿を見送る織原は、気のせいか少し安堵したような表情にも見えた。
◆◆◆
「やっぱり 追い詰められたら、外に出るのが一番だよねー 」
時刻は、とうに丑三つ時。
年頃の娘だというのに、朱美は大きな麻のトートバッグを下げつつ、永代通りを意気揚々と歩いている。流石に この時間だと 東京のセンターオブセンターに位置するこの街でも、人通りはおろか タクシーがたまに通るくらいと敢然とした状態だ。
さっきは刺激欲しさに 吉岡と無謀過ぎる約束をしてしまったものの、やはり部屋で独りぼっちでは ネームはさっぱり捗らない。これだから こんなにネットワークが進歩しても、日本はいつまで経っても在宅ワークが復旧しないじゃないだろうか?
朱美は勝手に妄想し 一で人納得すると、ビーチで履くようなサンダルをパタパタ鳴らしながら 夜道を進んでいった。桜の勤めるファミレスまで自宅から少し歩かなくてはならないのは たまに傷だが、あそこに行けば桜にも会えるし、ずっと とはいかないが世間話をすることも出来る。
朱美はいつものように店の扉を開くと、ルーティーンのように桜を探す。『あんた、また来たの!?』とか文句は言われそうだが、それは十分折り込み済みだ。もし桜から何かを言われたら『ネームがピンチなの!』とか言って、いつものように甘えればいい。
だけど次の瞬間、朱美を迎え入れたのは想定外の人物だった。
「いらっしゃいませ。お好きなお席をご利用下さい 」
「……!? 」
あんた誰ッッ!と絶叫したい衝動を、朱美は咄嗟に胸の奥に押し込める。こんな人は見たことがないけど、従業員ってことだよね? 朱美は恐る恐るいつものカウンター席へ向かうと 無言で腰を下ろすしかなかった
この男性は、何者なんだろう……
もちろん店員なんだろが、容姿は髪の毛で隠れてて見えないし、そもそも見慣れた制服とは異なる服装だし、何より接客業に求められる愛想を感じることが出来ない。朱美は手帳を開き、桜の出勤予定のメモを開く。やはり今日のこの時間帯は仕事なはずだった。
すると警戒する朱美を他所に、織原は朱美の前に水を置くと 深夜の お決まりの断りを続けた。
「お客様。ただ今のお時間は深夜割り増しなため、お食事料金に十パーセント加算させていただきます。ご了承ください。ご注文がお決まりの頃、また参ります 」
「あっ、はい 」
なんと まあ、事務的な応対なんだろうか。
見慣れない顔だが 注文に使う端末の操作は素早いから新人でもなさそうだし、この服装から察するに裏方さんだろうか?
「あのー 」
「何か……? 」
「いえ。決まったら、ベル押します 」
朱美は『遠藤さんはいますか?』と口を開きそうになったが、咄嗟にその言葉を押し込めた。
別にお腹が空いて ここに来たわけではないのだが、桜と喋りたくてここに来たとは、ちょっと言い出せる雰囲気ではない。織原は朱美の様子を見て腕時計をチラリと確認すると、またキッチンへと戻っていった。
◆◆◆
朱美は見慣れたメニューを眺めながら、今日はパフェだけ頼んで 早めに退散しようと考え始めたときだった。裏手の厨房から 見知った顔が早歩きでこちらへと向かってきたのだ。
「あーけーみっっッー!! 」
桜は最大限 声を殺しながら、しかし そのままフェーダーを上げたら振りきれんばかりの勢いで 朱美の前にやってきた。今日は少し髪が跳ねているように見えたが、相変わらずファミレスの制服が似合ってない辺りはいつもの桜だ。
「ああ、桜ねぇ。来ちゃった 」
「桜ねぇ、来ちゃった(ハートマーク)じゃないわよ。うちは飲食店だからね。あんたの作業場じゃないし、夜明かしする場所でもないの! 」
「だってさあー、うちの担当が、締め切りを巻いてくるんだもん。こっちも、本気で取り組まないと間に合わないからさ。家だと誘惑な多過ぎて、全然はかどらないしぃィ…… 」
朱美はそう言いながら水を一口飲むと、テーブルにルーズリーフ数枚と筆箱を取り出す。すると真っ白な紙の束を見るなり、桜は「はあ…… 」と小さくため息をつくのだった。
「だからってさ。別に外で作業をしなくてもいいんじゃない? 」
「だってさ、吉岡に合コンのセッティング頼んだら、締め切り守れたらー とか言うんだもん。本気出さなきゃ 」
「……はあ? 今なんて? 」
「だから、合コンだよ。合同コンパ!ってか、桜ねぇも行かない? メンツは吉岡の交遊関係だから、K大卒とかイイ人が揃うと思うよ 」
朱美は悪い笑みを浮かべて、桜を上目遣いで覗き込んだ。桜は思わず一歩後ろに後退したが、目線を反らしてこう答えた。
「私は、今回はとりあえずいいわ…… 」
「えーっ。来週の土曜日だけど、無理? 」
「っていうか、私は土曜日は基本的に仕事だし。それに暫くは そういうのは大丈夫っていうか…… なんというか…… 」
桜の言葉を聞いた朱美は、怪訝な顔をして桜の表情を伺った。昨日の朝(正確には一昨日の朝)飲んだときと比べると、明らかに様子が変だ。まあ、元から桜は来ないと想定していたし、仕事中の相手に対して理由を深追いするつもりない。
「桜ねぇは、そう答えると思ってたよ。多分 吉岡の友達だと、私よりも学年一つは年下だしね 」
朱美はクチャクチャになったプロットを鞄から手にすると、その文字列の間を傍線で区切り始めた。その様子を見た桜は少し安堵したようだが、すぐにハッとしてメニューを朱美の前に差し出した。
「っていうか、朱美、ご注文は? 」
「あっ、そっか。まだ頼んでなかった。ほうれん草のソテーと、白のハーフボトル、あと桃のパルフェ…… 以上で 」
「ご注文、かしこまりました。って、酒飲むの!?」
「へっ? 何かまずい? 」
「いや。そんなことはない……けど…… 」
例の吉岡さんが聞いたら怒り心頭だろうなー、と桜は心の中で同情をする。そもそも全国の神宮寺アケミファンのみなさんには、朱美が酒を片手に仕事をしているところなんて絶対見せられない光景に違いない。
「まあ、いいわ。消しカス出ても、床に落とさないでよ…… 」
「はーい 」
桜が端末に注文を打ち込んで裏に戻ろうとすると、朱美が「ところでさ…… 」と桜を引き留めた。
「今日ここに来たとき、知らない店員さんが接客してくれたんだけど? 」
「えっ? あっ、そういえば、朱美は会ったことはなかったかもね。彼は織原くん。うちの深夜営業を支えてくれる、縁の下の力持ち 」
「へー、新人さんとか? 」
「ううん。彼はもう三年はうちにいるベテランさん。いつもはキッチンにいるから 」
「あっ、そうだったんだ。そうだよね、確かにシェフがいなきゃ、レストランは成り立たないか 」
朱美は織原の顔を思い出すと、アイツなかなか料理うまいじゃん、と思った。惣菜店の元店長 兼 栄養士の朱美がそう感じたのだから、人は見かけによらない。
「さっき、ホールにいたのは 私が休憩中だったから、ホールにでてきただけ。朱美がいつもうちで食べてるものは、織原くんのお手製ってことね 」
「ふーん。織原さんは…… 本業はコックさんではない?のかな? 」
「うん。織原くんはバイトさんだからねぇ。って、何で朱美にうちの店の雇用形態を話さなきゃなのよ。しかも、なんか当たっちゃってるし。あんたは占い師かなんか? あんな一瞬で、第六感が優れすぎでしょ? 」
「その、一応、私も創作家の端くれだから…… ってのは嘘で。私がこの店に来るのは、桜ねぇがいるときだけじゃない? いつも私が食べてる料理は織原さんが作ってるのなら、社員の桜ねぇ女と毎日同じシフトに入ってる男子の織原さんは、昨今の労働環境を考えるとバイトさんかなー、って思っただけ 」
「……確かに、大体そんなところだけど。流石、そういうところの頭の回転のよさは感服するわ。私も織原くんの本業の中身は知らないけどね。まあ、うちでの稼ぎは取り敢えず生活のため、ってのは当たりだと思うよ 」
桜は一瞬裏に引っ込むと、ハーフボトルのワインを持ってくる。この白ワインはオリジナルのチリワインで、値段のわりになかなかいい味をしていた。
「って、あんたねぇー。無駄話ばっかりしてないで、さっさと原稿進めなよ。さっきから全然進んでないじゃん。今日は、お日様昇ったら自力で帰ってもらうからね 」
「えーっ! 桜ねぇ、送ってってよ。どうせ、うちは帰り道じゃん 」
「ぜんっぜん、帰り道じゃないしっッ。私も一昨日から殆ど寝てないから、仕事終わったら真っ直ぐ帰りたいの。今日はマジで無理っ! 」
桜はワインを注ぎながら、自分の部屋のベッドを想像した。凌平の家では、あれから殆ど寝れなかったし、高速バスは渋滞でよく寝れたが、今の仮眠は結局朱美の来店に気を使ってくれた織原に起こされた。(まあ、それでいいのだが )
「ってか、思い出した。あのさ、昨日は あの後 茜を ちゃんと送っていけたの? 」
「ああ…。あの日は、結局うちに連れて帰った 」
「へっ? あっ、そうしたの? 」
桜は不思議そうな顔をして、朱美を見た。桜は数度 朱美の家に行ったことがあるが(正確には、酔いつぶれた朱美を介抱しただけで 上がってはいない) 部屋が散らかっていることや、アシスタントや吉岡が入れ替わり立ち替わりいることを理由に、滅多にプライベートな友人を上げたりしないからだった。
「うん。仕事関係の人間が来ないの確定してたからね。それに桜ねぇも、あの日は結構酔ってたでしょ? 」
「えっ? 」
朱美は自分のガウチョパンツのポケットからスマホを取り出すと、何やら画面を開いて桜に見せた。
「うっっッ、これっ…… 」
桜は一瞬固まると、画面の地図を直視した。朱美に送ったはずの茜の家の地図データが、何故か凌平宅付近の地図になっていた。
「桜ねぇも、訳わからない地図をくれるし、茜は意志疎通が出来る状態じゃないって感じだったし。私も桜ねぇに 連絡取り直すのが 面倒なくらいには酔っ払ってたからね。うちに連れて帰って 適当に寝かせて、私の服着せて うちから仕事にも行かせちゃった。二日酔いにはうちのインクやら塗料がの染み付いた部屋は、堪えたみたいだけどね 」
「あっ、そっか。地図は……悪かったね。 気を付けるわ 」
「別に気にしないでいいよ。普通に六本木までタクシーで連れて帰るの、お金掛かりそうでイヤだなー、と思ったのもあるし 」
朱美。あんたは四人の中でぶっちぎり稼いでるっしょ、と突っ込みたかったが、桜はその言葉を押さえこんだ。それよりも、朱美が あの木更津の地図に関して何も言ってこなかったことの方が有り難い。この場合はこちらから深く話題を掘り下げないでおこう ……桜はそう思った。
◆◆◆
ネームが捗ったのかは分かり兼ねたが、朱美はモーニングの客が賑わう前くらいの時間に退散していった。結局ハーフボトルでは足りず、さらに中生を数回頼むという不思議な順番で酒を飲み続けていた。
「ごめん、織原。私ってば、今日殆ど仕事してなかった 」
「いいえ。そんなことはありません。それに、お客さんも、漫画家の先生以外は始発組しかいませんでしたし 」
織原は白の厨房服を脱いで洗濯かごに入れると、ロッカーの中からクロックスを取りだして 靴を変えていた。
「でも まさか 漫画家先生が最初にうちの店にいらしたときには、こんなに遠藤さんと仲良しになるなんて。僕は想像していませんでした 」
「うん。それは私も同感かも。なんか、アイツといるとね 、何となく自分も全うな人間になれるような気が しちゃうんだよね。私の周りには ああいうタイプの友達は、今までいなかったから 」
桜は髪を解きながらタイムカードをガチャリと挿すと「今日はありがとう。お疲れ様」と織原に声をかけて、店の裏口から外に出る。店がガラス張りだから外の明るさはは知っているが、流石に直射日光を浴びるのは夜勤明けには かなり堪えた。
何だか、物凄い濃密な小説を 読み終えたときのような、そんな心境だった。
四人でいるときには、姉御肌で偉そうなことばかり言っているのに、本当の自分は 元カレとも適度な距離感が掴めずに、だけど弱い部分は見せたくない見栄も張ってて、三十路を過ぎてもみっともない生き方しかできていない。
私の本質を朱美たちが知ったら……
きっと彼女たちは私に対して、凄く幻滅するだろうと思った。
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