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第一章 彼誰時~かはたれとき~
第一話
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一面、闇の中をただひたすらに走った。
大きな黒い屋敷から抜け出した。そこは、普通の屋敷ではない。
痛い。
喉の奥に血がせり上がっている。けれどそんなことはどうだっていい。身体中が悲鳴をあげていた。止まるわけにはいかない。逃げなきゃ。
早く、早く。
灰みがかった薄茶色の長い髪はきれいに整えられ、手入れが行き届いている。
服も上等なドレスに近いワンピースだが、走るために邪魔で、長い裾を歯で食いちぎり、そこから手で裂いたため不揃いに裾が破けている。袖がない露出が多い服が嫌で、屋敷に適当につかんできたぼろきれを上から羽織っているから、ひどく不格好だ。それでも見た目なんか気にしている場合ではなかった。
ちぐはぐな見た目の少女、年の功は10代後半に見えるだろうか。その空色の瞳は不安に揺れていた。
できるだけ遠くへ。できるだけ奴の目の届かないところへ。
この世じゃない、暗くどろどろとした空間にある大きな黒い屋敷。出口はわからないけれど、無我夢中で飛び出した。手に力をこめると、暗い世界に穴が開く。
通じた先は、雑居ビルが立ち並ぶ街中…夜の路地裏だった。通りに出なければ人気はない、そう安堵した時だった。
「見つけた。」
自分の逃げようとした路地の先に、無数の妖が立ちはだかる。
目がいくつもついたもの、手が異常に長いもの、もはや生命体とも呼べないような形をしたもの。異形の妖怪たちが獲物を狙うように少女をじぃっと見つめる。
その妖を率いる女は嘲笑うように言う。
「帰るわよ」
戻りたくない。もう、あんなところにいたくはなかった。
ぎゅっと手を堅く握り、踵を返して走る。
戻されることを考えただけで体中が拒絶する。嫌悪感が全身を襲う。だから逃げて来た。
じりじりと迫る妖怪たちに少女は手に込めた力をぶつけた。
ぶつけた力が邪気を払って、低級な妖怪たちはちりぢりに消し飛ぶ。
その隙に違うところへ。ただ走る。
「逃げたい? たった独りで逃げられると思っているの。この数を相手に?」
「離して!」
追ってくる有象無象の妖怪たちを力を使って消し去っても、まだまだ湧いてくる。
手をかざして、力をこめれば妖たちは跡形もなく消える。でも、これではキリがないどころかその数は増す一方だ。勝つどころか、攻撃を転じて逃げ出すことすら無理かもしれない。だけど、戻るのは嫌だ。
きつく握った手に力が篭り、辺り一帯に迸る。さっきよりも強い力を前にして、無数の妖たちは恐れをなして近寄ることをやめた。
「ったく、聞き分けのない。無駄だって分からないの?」
女の方からぶわっと、いっせいに蝶が羽ばたいた。
数は多い。でもそれほど強くはない。逃げられる。自分に言い聞かせた。
閃光となって溢れ出る力が不気味な蝶たちとあとに続こうとした妖たちを蹴散らしていく。連中のような下卑た存在であっても、命だけは惜しいらしく、先程のような威勢はまるでなくなっている。どうやって間合いを詰めようかと試行錯誤しているようだった。女の放った、意思を持たない迫る蝶だけが、少女の視界を遮り、体を傷つけていく。
少女はわずかな一瞬の隙をついて、方向を一気に変え、妖たちの上方を跳ぶ。
その様子を見据えても女は少し笑うだけだった。
「やっぱりこんな生半可な妖怪じゃあ、少し分が悪いか。」
「逃げきったのか?」
少女を追っていた女の後ろに一人の男が現れた。より強い禍々しい気をまとった、見た目だけは人間の男。男は少女の逃げたほうを見やった。
「そろそろ、贄が欲しいだろう。しばらく泳がせろ。」
その言葉で女はうれしそうに顔を歪めた。
「では。」
男のほうは煙になったように一気に姿を消す。
一方で少女を追い続ける妖たち。
いくら雑魚とはいえ、何の力も無しで蹴散らすのは不可能。 その力も、体力と同様で、使い続ければいつか底尽きる。
そんな危機を感じているうちに一匹の妖怪の鋭い爪が目の前をかすめる。直接的に当たりはしなかったものの、頬に一筋。血が微量とんだ。鮮血が僅かだけ、宙を舞う。
数匹、威勢の良い妖が前に立ち塞がる。だが、しょせん雑魚の端くれ。
しかし妖の数は減るどころか増える一方。少女に纏わりついて邪魔をする奴らもいる。その手で触れば、ほんの数十秒で消えてなくなるものの、その量が並大抵じゃない。
どんどんあとから追ってきたやつらが増えていく。害虫のように湧いて気持ちが悪い。この量はさすがに倒しきれないと悟り、どこか隠れる場所はないかと周囲を見渡した、その刹那。
「誰!?」
追ってきたあいつらではない。かといってここに蠢いている妖怪たちでもない。
冷涼な、邪気を全く含まない気配。冬の朝のような冷たさ。
問いかけても何も姿を現さなかった。妖たちはまだその謎の気配に気づいていない。
少女だけが僅かに感じるが、たいした力のない妖には分からないくらいのささやかなくらいの気配なのだろう。
出てきたのは、姿ではなく。重みのある、男の声。
「天蓬」
聞きなれない、言葉だった。
「天内 天衝 天輔」
さっきまでざわついていた妖の動きが、ぴたりと止まる。
「天禽 天心 天柱 天英 乾坤享元利貞」
一瞬にして。辺りの妖怪が消えた。
何が起こったのかわからないまま後ろ振り向くと一人。逆光で顔はよく見えないがすらりと伸びる人影。異形の力を持ちながらも、この気配は妖ではない。
若い。
まだ成人もしていない若い人間の男。ここは青年というほうが正しいか。見た目は普通の青年だ。
栗色の髪に、鳶色の瞳。
ラフなパーカー姿はごく普通の人間にしか見えない。けれどその体躯から感じられる力は並大抵のものではなかった。
雑居ビルの路地裏、先ほどまで蠢いていた魑魅魍魎たち。
決して綺麗とは言えない空間なのに、その場が澄んでいくのを感じた。まるで何か舞を舞ったかのような所作を終え、青年が少女の前に立つ。
少女はすぐに我に返った。
「今すぐにここから立ち去って、早く!」
「おいおい、助けてもらった相手への第一声がそれかよ。」
「いいから、早く! 人間がここにいたら、だめ…!」
「待てって、状況を説明しろ。そんな全身傷だらけで、一体何が…」
ここまで逃げてきた少女は傷だらけで、着ている服も服と呼べないくらいにボロボロだ。事情を聴こうと青年が、少女に手を伸ばしたその時。
「誰だ、お前」
青年の背後に、小さな炎が燃え盛る。さっきまで襲ってきた蝶が、ちりちりと燃えている。
青年の周りにうっすらと張られた結界が、その蝶の行く手を阻んだのがわかる。結界がなければ、その蝶は青年の首筋にあたるところだった。
文字通り、急所を狙った攻撃だったのだ。
少女の全身がおぞけだつ。
しかし青年はおびえる気配もなく、立ち去ろうとはしなかった。態勢を低くし手に札のようなものを握って身構える。
ふわり、と。夜の闇からあの女が出てきた。
「やっぱり予想通り。いきなり雑魚が消えたので、何事かと思ったら。あんた、只の人間じゃないのね。」
「凛…」
女の名を呼んだ少女の顔が強張る。一方で、彼は、笑っていた。
「へえ。お前、他の雑魚と違って、やりそうだな。
…砕雨」
青年から発せれらた言葉が、見えない力となってまるで弾丸のように真っ直ぐ空間を貫いた。
確かに当たった音がしたのに、噴煙から悠然と姿を現したその女は傷一つ負っていない。まるで、花畑に舞う蝶のように。手をひらひらと空中で仰いで微笑んでいる。
女の白銀の髪が夜の闇の中に不気味に光る。美しい顔立ちを際立たせるのは血のように真っ赤な切れ長の瞳だった。
凛と呼ばれたその美しい女はひどく不気味に、楽しそうに嗤う。
「まだこんな力を使える人間がこのご時世に残っていたのね!?」
前触れも無いまま大きく手を仰ぐ。同時に凄まじい爆風と何かの粉が押し寄せる。女の操る蝶から、鱗粉のようなものが飛び交い、襲い掛かってくる。
「逃げて、早く!!」
慌てて少女が叫んでも、粉を載せた爆風はそのまま辺りを覆いつくした。砂埃と粉で何が何だかは分からないが、あれに呑まれたら人間は愚か、人外の存在ですら危険であることは分かっていた。
「そんな…」
「ああ、いけない。せめて体くらい残しておかないと意味がないわね。少しは耐久性がある人間だとありがたいんだけど。」
「いやいや勝手に殺すなっての」
あの爆風に呑まれたのに無傷で地に足をつけている。対する凛は顔をひきつらせた。
信じられない。人間が、凛に遅れをとらずにいる。しかも無傷で。
「あなた、一体…」
まだ爆発で舞った土ぼこりがあたりを覆う。くすぶった景色を風が薙ぎ払う中、彼は何てことの無い様子で立っている。
「あんまり人間だからってなめんな」
凛と対等に渡り合う力とこの発言。さっきから明らかに一般人じゃない。人外との戦闘に心得がある人間だ。
そんな青年は凛との間合いを一気に開けたかと思うと、少女に手を伸ばす。
「来い!」
少女は、考えるよりも先に伸ばされた手を取る。その手の温かさで、自分の手が冷え切ったことを自覚する。
青年はそのままひょいと少女を担ぎ上げた。
小さな声でなにやら何かつぶやくと凛のいる方向に電撃を浴びせ、わずかに凛がひるんだその隙をついて戦線を離脱していった。
大きな黒い屋敷から抜け出した。そこは、普通の屋敷ではない。
痛い。
喉の奥に血がせり上がっている。けれどそんなことはどうだっていい。身体中が悲鳴をあげていた。止まるわけにはいかない。逃げなきゃ。
早く、早く。
灰みがかった薄茶色の長い髪はきれいに整えられ、手入れが行き届いている。
服も上等なドレスに近いワンピースだが、走るために邪魔で、長い裾を歯で食いちぎり、そこから手で裂いたため不揃いに裾が破けている。袖がない露出が多い服が嫌で、屋敷に適当につかんできたぼろきれを上から羽織っているから、ひどく不格好だ。それでも見た目なんか気にしている場合ではなかった。
ちぐはぐな見た目の少女、年の功は10代後半に見えるだろうか。その空色の瞳は不安に揺れていた。
できるだけ遠くへ。できるだけ奴の目の届かないところへ。
この世じゃない、暗くどろどろとした空間にある大きな黒い屋敷。出口はわからないけれど、無我夢中で飛び出した。手に力をこめると、暗い世界に穴が開く。
通じた先は、雑居ビルが立ち並ぶ街中…夜の路地裏だった。通りに出なければ人気はない、そう安堵した時だった。
「見つけた。」
自分の逃げようとした路地の先に、無数の妖が立ちはだかる。
目がいくつもついたもの、手が異常に長いもの、もはや生命体とも呼べないような形をしたもの。異形の妖怪たちが獲物を狙うように少女をじぃっと見つめる。
その妖を率いる女は嘲笑うように言う。
「帰るわよ」
戻りたくない。もう、あんなところにいたくはなかった。
ぎゅっと手を堅く握り、踵を返して走る。
戻されることを考えただけで体中が拒絶する。嫌悪感が全身を襲う。だから逃げて来た。
じりじりと迫る妖怪たちに少女は手に込めた力をぶつけた。
ぶつけた力が邪気を払って、低級な妖怪たちはちりぢりに消し飛ぶ。
その隙に違うところへ。ただ走る。
「逃げたい? たった独りで逃げられると思っているの。この数を相手に?」
「離して!」
追ってくる有象無象の妖怪たちを力を使って消し去っても、まだまだ湧いてくる。
手をかざして、力をこめれば妖たちは跡形もなく消える。でも、これではキリがないどころかその数は増す一方だ。勝つどころか、攻撃を転じて逃げ出すことすら無理かもしれない。だけど、戻るのは嫌だ。
きつく握った手に力が篭り、辺り一帯に迸る。さっきよりも強い力を前にして、無数の妖たちは恐れをなして近寄ることをやめた。
「ったく、聞き分けのない。無駄だって分からないの?」
女の方からぶわっと、いっせいに蝶が羽ばたいた。
数は多い。でもそれほど強くはない。逃げられる。自分に言い聞かせた。
閃光となって溢れ出る力が不気味な蝶たちとあとに続こうとした妖たちを蹴散らしていく。連中のような下卑た存在であっても、命だけは惜しいらしく、先程のような威勢はまるでなくなっている。どうやって間合いを詰めようかと試行錯誤しているようだった。女の放った、意思を持たない迫る蝶だけが、少女の視界を遮り、体を傷つけていく。
少女はわずかな一瞬の隙をついて、方向を一気に変え、妖たちの上方を跳ぶ。
その様子を見据えても女は少し笑うだけだった。
「やっぱりこんな生半可な妖怪じゃあ、少し分が悪いか。」
「逃げきったのか?」
少女を追っていた女の後ろに一人の男が現れた。より強い禍々しい気をまとった、見た目だけは人間の男。男は少女の逃げたほうを見やった。
「そろそろ、贄が欲しいだろう。しばらく泳がせろ。」
その言葉で女はうれしそうに顔を歪めた。
「では。」
男のほうは煙になったように一気に姿を消す。
一方で少女を追い続ける妖たち。
いくら雑魚とはいえ、何の力も無しで蹴散らすのは不可能。 その力も、体力と同様で、使い続ければいつか底尽きる。
そんな危機を感じているうちに一匹の妖怪の鋭い爪が目の前をかすめる。直接的に当たりはしなかったものの、頬に一筋。血が微量とんだ。鮮血が僅かだけ、宙を舞う。
数匹、威勢の良い妖が前に立ち塞がる。だが、しょせん雑魚の端くれ。
しかし妖の数は減るどころか増える一方。少女に纏わりついて邪魔をする奴らもいる。その手で触れば、ほんの数十秒で消えてなくなるものの、その量が並大抵じゃない。
どんどんあとから追ってきたやつらが増えていく。害虫のように湧いて気持ちが悪い。この量はさすがに倒しきれないと悟り、どこか隠れる場所はないかと周囲を見渡した、その刹那。
「誰!?」
追ってきたあいつらではない。かといってここに蠢いている妖怪たちでもない。
冷涼な、邪気を全く含まない気配。冬の朝のような冷たさ。
問いかけても何も姿を現さなかった。妖たちはまだその謎の気配に気づいていない。
少女だけが僅かに感じるが、たいした力のない妖には分からないくらいのささやかなくらいの気配なのだろう。
出てきたのは、姿ではなく。重みのある、男の声。
「天蓬」
聞きなれない、言葉だった。
「天内 天衝 天輔」
さっきまでざわついていた妖の動きが、ぴたりと止まる。
「天禽 天心 天柱 天英 乾坤享元利貞」
一瞬にして。辺りの妖怪が消えた。
何が起こったのかわからないまま後ろ振り向くと一人。逆光で顔はよく見えないがすらりと伸びる人影。異形の力を持ちながらも、この気配は妖ではない。
若い。
まだ成人もしていない若い人間の男。ここは青年というほうが正しいか。見た目は普通の青年だ。
栗色の髪に、鳶色の瞳。
ラフなパーカー姿はごく普通の人間にしか見えない。けれどその体躯から感じられる力は並大抵のものではなかった。
雑居ビルの路地裏、先ほどまで蠢いていた魑魅魍魎たち。
決して綺麗とは言えない空間なのに、その場が澄んでいくのを感じた。まるで何か舞を舞ったかのような所作を終え、青年が少女の前に立つ。
少女はすぐに我に返った。
「今すぐにここから立ち去って、早く!」
「おいおい、助けてもらった相手への第一声がそれかよ。」
「いいから、早く! 人間がここにいたら、だめ…!」
「待てって、状況を説明しろ。そんな全身傷だらけで、一体何が…」
ここまで逃げてきた少女は傷だらけで、着ている服も服と呼べないくらいにボロボロだ。事情を聴こうと青年が、少女に手を伸ばしたその時。
「誰だ、お前」
青年の背後に、小さな炎が燃え盛る。さっきまで襲ってきた蝶が、ちりちりと燃えている。
青年の周りにうっすらと張られた結界が、その蝶の行く手を阻んだのがわかる。結界がなければ、その蝶は青年の首筋にあたるところだった。
文字通り、急所を狙った攻撃だったのだ。
少女の全身がおぞけだつ。
しかし青年はおびえる気配もなく、立ち去ろうとはしなかった。態勢を低くし手に札のようなものを握って身構える。
ふわり、と。夜の闇からあの女が出てきた。
「やっぱり予想通り。いきなり雑魚が消えたので、何事かと思ったら。あんた、只の人間じゃないのね。」
「凛…」
女の名を呼んだ少女の顔が強張る。一方で、彼は、笑っていた。
「へえ。お前、他の雑魚と違って、やりそうだな。
…砕雨」
青年から発せれらた言葉が、見えない力となってまるで弾丸のように真っ直ぐ空間を貫いた。
確かに当たった音がしたのに、噴煙から悠然と姿を現したその女は傷一つ負っていない。まるで、花畑に舞う蝶のように。手をひらひらと空中で仰いで微笑んでいる。
女の白銀の髪が夜の闇の中に不気味に光る。美しい顔立ちを際立たせるのは血のように真っ赤な切れ長の瞳だった。
凛と呼ばれたその美しい女はひどく不気味に、楽しそうに嗤う。
「まだこんな力を使える人間がこのご時世に残っていたのね!?」
前触れも無いまま大きく手を仰ぐ。同時に凄まじい爆風と何かの粉が押し寄せる。女の操る蝶から、鱗粉のようなものが飛び交い、襲い掛かってくる。
「逃げて、早く!!」
慌てて少女が叫んでも、粉を載せた爆風はそのまま辺りを覆いつくした。砂埃と粉で何が何だかは分からないが、あれに呑まれたら人間は愚か、人外の存在ですら危険であることは分かっていた。
「そんな…」
「ああ、いけない。せめて体くらい残しておかないと意味がないわね。少しは耐久性がある人間だとありがたいんだけど。」
「いやいや勝手に殺すなっての」
あの爆風に呑まれたのに無傷で地に足をつけている。対する凛は顔をひきつらせた。
信じられない。人間が、凛に遅れをとらずにいる。しかも無傷で。
「あなた、一体…」
まだ爆発で舞った土ぼこりがあたりを覆う。くすぶった景色を風が薙ぎ払う中、彼は何てことの無い様子で立っている。
「あんまり人間だからってなめんな」
凛と対等に渡り合う力とこの発言。さっきから明らかに一般人じゃない。人外との戦闘に心得がある人間だ。
そんな青年は凛との間合いを一気に開けたかと思うと、少女に手を伸ばす。
「来い!」
少女は、考えるよりも先に伸ばされた手を取る。その手の温かさで、自分の手が冷え切ったことを自覚する。
青年はそのままひょいと少女を担ぎ上げた。
小さな声でなにやら何かつぶやくと凛のいる方向に電撃を浴びせ、わずかに凛がひるんだその隙をついて戦線を離脱していった。
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