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終章※
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俺は猛省した。
自分の理性が力無い物であったことに、失望するやら絶望するやら、兎に角、項垂れるしか無かった。
ジストを大切に大切に扱いたいと望んでいたにも関わらず、理性を失い抱き潰してしまったのだ。
何度も貫き精を放ち、最後にジストが気を失ってしまったことで、やっと理性が引き戻された。
荒々しく貫いてしまった後孔が傷ついていないか、丁寧に確かめたが、赤く腫れてはいたものの、裂けたり出血したりはしていなくて、ほっと胸を撫で下ろした。
色々なものでドロドロにしてしまったジストの体を拭き清めていると、ジストが目を覚まし、瞼を何度か瞬かせた。
「ジスト、すまない!酷くしてしまった!」
体を起こそうとして、小さく呻いたジストの体を支える。
声を出そうとして、咳き込んだジストに、慌てて水差しから水を注いだグラスを渡す。
水を飲んで落ち着いたジストが、喉に手を当て、魔法をかけた。
「大丈夫、平気。鍛えてるから体力あるし、小さな傷くらいなら自分でも癒せるから…」
癒しの魔法で、喉の傷が治ったようで、滑らかに声が出ている。
「き…気持ち良かったし…凄く求められてるって、実感できて嬉しかった…。だから、謝らないで欲しい…」
頬を赤らめながらそう言って、照れ隠しのように、汚れたベッドや脱ぎ散らかされた衣服に浄化の魔法をかけている。
…………。
本当に、どれだけ可愛いかったら気が済むというのだろうか。
再び襲いかかったりしないように、軽く頭を振って、思考を切り替える。
それにしても…癒しと浄化魔法、便利だな。俺にも使えればな…。
ジストの為に色々してやりたくて、ついそんな事を思ってしまうが、使えないものは仕方がない。
薬や魔道具を準備しておく必要があるな。
いや、それよりも二度と傷つけたりしないよう、強い理性を育てねばならない。
「ジスト、後ろも治療を…。確かめたが…切れてはいないが、赤く腫れている」
「た…確かめたのか…。ぇ…うん、でも…」
恥ずかしそうに目を伏せながら続ける。
「せっかく抱いてもらったのに…すぐに癒したり浄化するのは…もったいないかな……」
ぐっ……!!!
今誓ったばかりであるのに、早速理性を飛ばしそうになって困る。
ジストの健気さの破壊力が凄い。
片手で顔を覆ってジストの姿が見えないようにし、感情を抑え、なんとか理性を保つ。
「いや、治してくれ。一応、出したものは掻き出して拭ったが…酷くしてしまったから、心配だ…」
「っな!」
勢いよく顔を起こしたジストが、ギュッとシーツを握った手と肩を、わななかせながら声を荒げた。
「勝手に搔き出すなんて酷いじゃないかっ」
えっ?!怒るところ、そこなのか?!
「せっかく…折角ヴィルに貰ったのに…もっと…実感していたいのに…」
青い瞳を潤ませながら悲しそうに呟いている。
俺の注いだ精が惜しいと泣いているのだ。
ぐぅぅっ………!
なけなしの理性を振り絞って、欲望を抑えつける。
一度、大きく深呼吸した後、まだ何やら可愛いことをぶつぶつと呟いているジストを抱きしめ、頭上にキスを落とす。
「これから、いくらでも、あげられるから…。念のために治しておいてくれ…」
尚渋るジストを説得し、不承不承ではあったが、どうにか頷いて貰い、癒しと浄化の魔法をかけてもらった。
二人で手を繋いでベッドに横になり、髪を撫でたり、軽いキスを繰り返したりして、じゃれ合っているうちに、ジストの機嫌もすっかり直り、甘えて胸にすり寄ってきた。
「そういえば…前にヴィルの部屋で見た…ヴィルの胸にかかっていた魔法だけど…どうしてあんなのかけてたんだ?」
目の前の俺の胸をペロリと舐めて、ジストが疑問を口にする。
「ああ…それは…」
事の顛末を説明する。
「……なるほど…」
「ジストを傷付けるつもりはなかったんだが……すまな…」
言いかけた俺の言葉にジストの声が被った。
「油断できないな……。ヴィルを狙っているヤツが多過ぎる……」
ジストは流れ落ちる金の髪の向こうから、不穏な光を帯びた瞳で虚空を見つめている。
えっ?!
「ヴィル、前髪を切ってくれっ。上げてもいいっ」
真剣な表情のジストが、焦ったような手つきで、俺の長めの前髪を搔き上げ、誓約紋を露出させる。
そして、ハッとしたように、動きを止めた後、手を離して項垂れた。
「ごめん…勝手な事を言った…。誰かに奪われそうで怖くて…。…ヴィルと両想いになれるなんて…今でも夢みたいだから……」
先ほどの勢いとは打って変わって、不安そうに声を震わせるジストの頬にキスを落とす。
そんなことで少しでもジストの安心が得られるというのなら、髪くらい、いくらでも切る。
「俺はジストのものだ。ジストしかいらない」
両手でジストの頬を挟んで、露出しているお互いの誓約紋を合わせる。
「愛してる」
ふわりと柔らかな光と幸福感が二人を包んだ。
ジストが諦めずに寄り添ってくれていたように、これからは俺も寄り添い、支えて、安心して寄り掛かって貰えるように、信頼を築いて行こうと思う。
憂鬱にただやり過ごしてきた日々を、鮮やかな虹が美しく彩ってくれた。
虹は儚く、すぐに姿を消してしまうものではある。
だが、俺の腕の中には、決して色褪せることのない光がある。俺を照らし、温めてくれる大切な光。
額を離してどんな空よりも美しい、深い青色の瞳を見つめる。
……………
ーー万感の想いを込めて、もう一度、愛を囁き、大切な光を抱きしめた。
END
自分の理性が力無い物であったことに、失望するやら絶望するやら、兎に角、項垂れるしか無かった。
ジストを大切に大切に扱いたいと望んでいたにも関わらず、理性を失い抱き潰してしまったのだ。
何度も貫き精を放ち、最後にジストが気を失ってしまったことで、やっと理性が引き戻された。
荒々しく貫いてしまった後孔が傷ついていないか、丁寧に確かめたが、赤く腫れてはいたものの、裂けたり出血したりはしていなくて、ほっと胸を撫で下ろした。
色々なものでドロドロにしてしまったジストの体を拭き清めていると、ジストが目を覚まし、瞼を何度か瞬かせた。
「ジスト、すまない!酷くしてしまった!」
体を起こそうとして、小さく呻いたジストの体を支える。
声を出そうとして、咳き込んだジストに、慌てて水差しから水を注いだグラスを渡す。
水を飲んで落ち着いたジストが、喉に手を当て、魔法をかけた。
「大丈夫、平気。鍛えてるから体力あるし、小さな傷くらいなら自分でも癒せるから…」
癒しの魔法で、喉の傷が治ったようで、滑らかに声が出ている。
「き…気持ち良かったし…凄く求められてるって、実感できて嬉しかった…。だから、謝らないで欲しい…」
頬を赤らめながらそう言って、照れ隠しのように、汚れたベッドや脱ぎ散らかされた衣服に浄化の魔法をかけている。
…………。
本当に、どれだけ可愛いかったら気が済むというのだろうか。
再び襲いかかったりしないように、軽く頭を振って、思考を切り替える。
それにしても…癒しと浄化魔法、便利だな。俺にも使えればな…。
ジストの為に色々してやりたくて、ついそんな事を思ってしまうが、使えないものは仕方がない。
薬や魔道具を準備しておく必要があるな。
いや、それよりも二度と傷つけたりしないよう、強い理性を育てねばならない。
「ジスト、後ろも治療を…。確かめたが…切れてはいないが、赤く腫れている」
「た…確かめたのか…。ぇ…うん、でも…」
恥ずかしそうに目を伏せながら続ける。
「せっかく抱いてもらったのに…すぐに癒したり浄化するのは…もったいないかな……」
ぐっ……!!!
今誓ったばかりであるのに、早速理性を飛ばしそうになって困る。
ジストの健気さの破壊力が凄い。
片手で顔を覆ってジストの姿が見えないようにし、感情を抑え、なんとか理性を保つ。
「いや、治してくれ。一応、出したものは掻き出して拭ったが…酷くしてしまったから、心配だ…」
「っな!」
勢いよく顔を起こしたジストが、ギュッとシーツを握った手と肩を、わななかせながら声を荒げた。
「勝手に搔き出すなんて酷いじゃないかっ」
えっ?!怒るところ、そこなのか?!
「せっかく…折角ヴィルに貰ったのに…もっと…実感していたいのに…」
青い瞳を潤ませながら悲しそうに呟いている。
俺の注いだ精が惜しいと泣いているのだ。
ぐぅぅっ………!
なけなしの理性を振り絞って、欲望を抑えつける。
一度、大きく深呼吸した後、まだ何やら可愛いことをぶつぶつと呟いているジストを抱きしめ、頭上にキスを落とす。
「これから、いくらでも、あげられるから…。念のために治しておいてくれ…」
尚渋るジストを説得し、不承不承ではあったが、どうにか頷いて貰い、癒しと浄化の魔法をかけてもらった。
二人で手を繋いでベッドに横になり、髪を撫でたり、軽いキスを繰り返したりして、じゃれ合っているうちに、ジストの機嫌もすっかり直り、甘えて胸にすり寄ってきた。
「そういえば…前にヴィルの部屋で見た…ヴィルの胸にかかっていた魔法だけど…どうしてあんなのかけてたんだ?」
目の前の俺の胸をペロリと舐めて、ジストが疑問を口にする。
「ああ…それは…」
事の顛末を説明する。
「……なるほど…」
「ジストを傷付けるつもりはなかったんだが……すまな…」
言いかけた俺の言葉にジストの声が被った。
「油断できないな……。ヴィルを狙っているヤツが多過ぎる……」
ジストは流れ落ちる金の髪の向こうから、不穏な光を帯びた瞳で虚空を見つめている。
えっ?!
「ヴィル、前髪を切ってくれっ。上げてもいいっ」
真剣な表情のジストが、焦ったような手つきで、俺の長めの前髪を搔き上げ、誓約紋を露出させる。
そして、ハッとしたように、動きを止めた後、手を離して項垂れた。
「ごめん…勝手な事を言った…。誰かに奪われそうで怖くて…。…ヴィルと両想いになれるなんて…今でも夢みたいだから……」
先ほどの勢いとは打って変わって、不安そうに声を震わせるジストの頬にキスを落とす。
そんなことで少しでもジストの安心が得られるというのなら、髪くらい、いくらでも切る。
「俺はジストのものだ。ジストしかいらない」
両手でジストの頬を挟んで、露出しているお互いの誓約紋を合わせる。
「愛してる」
ふわりと柔らかな光と幸福感が二人を包んだ。
ジストが諦めずに寄り添ってくれていたように、これからは俺も寄り添い、支えて、安心して寄り掛かって貰えるように、信頼を築いて行こうと思う。
憂鬱にただやり過ごしてきた日々を、鮮やかな虹が美しく彩ってくれた。
虹は儚く、すぐに姿を消してしまうものではある。
だが、俺の腕の中には、決して色褪せることのない光がある。俺を照らし、温めてくれる大切な光。
額を離してどんな空よりも美しい、深い青色の瞳を見つめる。
……………
ーー万感の想いを込めて、もう一度、愛を囁き、大切な光を抱きしめた。
END
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