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あれはきっと…
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「犯人達が戻ってくる前に少し試してみたい事があるんだけど、協力してくれる?」
少しでも何が出来て何が出来ないかを把握しておくと動きやすい。
今は、建物は収納しないけどなっ。
そんなことをして、うっかり人目についたら大変だ。
快く引き受けてくれたファリに鞘から抜いた剣を構えて貰い、その剣をアイテムボックスに入れてみる。
…うん、入った。
今度は背後に立ってもらって、同じように構えてもらい、意識だけ向けて収納できるか試してみたが、それは上手くいかなかった。
視界に入る範囲のものなら、人が持っている物でも収納できるみたいだ。
敵から武器を奪うのに有効だ。
とゆーか、泥棒し放題の恐ろしいスキルでもあるな。
しかしどんな道具であれ、使う者の心根次第で、人の為になる便利な物や、凶悪な凶器に姿を変えるものだ。必要以上に怯えていては足がすくんで前に進めなくなる。
もう一度、鞘に入っていない状態の剣をアイテムボックスに入れて、今度は取り出し時の検証をしてみる。
思った所に思った状態で取り出す訓練は、ここを抜け出す前にやっていたから感覚を掴めている。
剣の柄がちょうど自分の手のひらに乗るようにイメージして剣を取り出してみる。
イメージ通りに手の中に収まり、刃で怪我をすることもなく、しっかりと剣を掴むことが出来た。
「ファリ、今度は、ファリの手のひらに、この剣の柄部分を当てるようにして取り出すから、受け取ってみて。怪我しないように気をつけて」
一度アイテムボックスに入れた後、頷いたファリの開いた手のひらに剣の柄を合わせるようにイメージして取り出す。
スムーズに剣を受け渡せた。剣は無事にファリの手中に収まっている。
「敵の武器を奪い、自らの武器にすることも出来るという事か…。魔法の使えない相手なら、これだけで圧倒的優位に持ち込めそうだ」
ファリは掴んだ剣を見つめながら感想を呟く。
「カズアキ、もう一度収納した後、今度は少し離れたその辺りの空間に剣を出してみてくれ」
ファリが立っている場所の斜め上の方向を指差している。
「わかった、いくよっ」
剣をアイテムボックスに戻した後、指示された方向のファリの立ち位置から1、2メートルくらい離れた場所に剣を出現させる。
ファリが滑らかな動きで軽くジャンプして、難なく剣をキャッチし、足音もさせず優雅に着地する姿に思わず見惚れてしまう。
…か…カッコいい~。
「戦闘時は、取り出し位置の精度が保てないこともあるだろう。そういう時は、今のように離れた場所に出してもらっても武器を受け取ることが出来る」
さすがファリ、身体能力が高い。おれだったら絶対上手くキャッチ出来ない。
…ファリなら忍者にもなれそうだなぁ…。
って、何考えてんだか!
自分の思考回路の子供っぽさに、恥ずかしくなって居た堪れない。
こういう所もファリに子供扱いされてしまう一因なのではないだろうか?
「…っ、そうだね、その方が安全かも。今はこれだけに集中しているから出来るけど、気が散ってる時は難しいかもしれないし、時と場合によって使い分けると良さそうだよな」
ささっと、思考を切り替え、ファリが提示してくれた案に頷いた。
その後も他に試したいことがあったので、ファリと相談しながらテストしていたら、展開しているマップに反応が見えた。
「誰かこっちに向かって来る」
この裏路地は誘拐犯が取引に使うだけあって、入り組んだ場所にあり、めったに人が通らない。
青い点が四つ。
レベルが上がってから索敵範囲も広がったのでまだ少し離れているが、通っている路地のルートから考えて、この建物へ向かっていると思われる。
その点が犯人達だとするならば、部屋を出る時に居た犯人二人と拐われた二人の組み合わせか、襲撃された時に居たもう一人の犯人も含めた三人組と、攫われた貴族の男性一人の組み合わせということになる。
後者であった場合、捉えた獣人の従者を売りに奴隷商へ寄った可能性も考えられる。
その場合、おれが奴隷商でやったことがバレている可能性があり、不意打ちというアドバンテージが無くなり、より危険性が高まる。
どちらにせよ早急に決着をつける必要があるが、被害者の姿と状態を確認してからでないと無茶はできない。
おそらく隷属の首輪をつけられているだろうから、被害者自体も命令されてこちらを襲って来る可能性も高い。
なるべく被害者を傷つけないように、素早く犯人達だけ倒さなければならない。
打ち合わせ通り、おれはマントをしまって、効力を失っている隷属の首輪を身につけた。
壊れたものではあっても、それを首につける時、ファリはとても不快そうにしてくれていた。反対の立場だったら、と考えると、おれも同じように感じるので気持ちは分かる。
ファリには一旦部屋を出て貰う。
この部屋にはテーブルと椅子以外何も無いので、ファリが身を隠す場所が無いのだ。
犯人達がこの部屋を取引に使っている理由のひとつにもなっているだろう。
ここを取引場所としている以上、帰って来たら、建物内を調べるに違いないので、その間、ファリは身軽さを生かして、別室の窓から出て屋根の上へ登り、一旦身を隠しておく。そこで周辺の確認を終えたら、タイミングを見計らって屋内へ戻ってくる予定だ。
おれ達が備えている間に、青い点はどんどん近づいてきて、とうとうこの建物の前で止まった。
やはり犯人達に違いない。
少しでも何が出来て何が出来ないかを把握しておくと動きやすい。
今は、建物は収納しないけどなっ。
そんなことをして、うっかり人目についたら大変だ。
快く引き受けてくれたファリに鞘から抜いた剣を構えて貰い、その剣をアイテムボックスに入れてみる。
…うん、入った。
今度は背後に立ってもらって、同じように構えてもらい、意識だけ向けて収納できるか試してみたが、それは上手くいかなかった。
視界に入る範囲のものなら、人が持っている物でも収納できるみたいだ。
敵から武器を奪うのに有効だ。
とゆーか、泥棒し放題の恐ろしいスキルでもあるな。
しかしどんな道具であれ、使う者の心根次第で、人の為になる便利な物や、凶悪な凶器に姿を変えるものだ。必要以上に怯えていては足がすくんで前に進めなくなる。
もう一度、鞘に入っていない状態の剣をアイテムボックスに入れて、今度は取り出し時の検証をしてみる。
思った所に思った状態で取り出す訓練は、ここを抜け出す前にやっていたから感覚を掴めている。
剣の柄がちょうど自分の手のひらに乗るようにイメージして剣を取り出してみる。
イメージ通りに手の中に収まり、刃で怪我をすることもなく、しっかりと剣を掴むことが出来た。
「ファリ、今度は、ファリの手のひらに、この剣の柄部分を当てるようにして取り出すから、受け取ってみて。怪我しないように気をつけて」
一度アイテムボックスに入れた後、頷いたファリの開いた手のひらに剣の柄を合わせるようにイメージして取り出す。
スムーズに剣を受け渡せた。剣は無事にファリの手中に収まっている。
「敵の武器を奪い、自らの武器にすることも出来るという事か…。魔法の使えない相手なら、これだけで圧倒的優位に持ち込めそうだ」
ファリは掴んだ剣を見つめながら感想を呟く。
「カズアキ、もう一度収納した後、今度は少し離れたその辺りの空間に剣を出してみてくれ」
ファリが立っている場所の斜め上の方向を指差している。
「わかった、いくよっ」
剣をアイテムボックスに戻した後、指示された方向のファリの立ち位置から1、2メートルくらい離れた場所に剣を出現させる。
ファリが滑らかな動きで軽くジャンプして、難なく剣をキャッチし、足音もさせず優雅に着地する姿に思わず見惚れてしまう。
…か…カッコいい~。
「戦闘時は、取り出し位置の精度が保てないこともあるだろう。そういう時は、今のように離れた場所に出してもらっても武器を受け取ることが出来る」
さすがファリ、身体能力が高い。おれだったら絶対上手くキャッチ出来ない。
…ファリなら忍者にもなれそうだなぁ…。
って、何考えてんだか!
自分の思考回路の子供っぽさに、恥ずかしくなって居た堪れない。
こういう所もファリに子供扱いされてしまう一因なのではないだろうか?
「…っ、そうだね、その方が安全かも。今はこれだけに集中しているから出来るけど、気が散ってる時は難しいかもしれないし、時と場合によって使い分けると良さそうだよな」
ささっと、思考を切り替え、ファリが提示してくれた案に頷いた。
その後も他に試したいことがあったので、ファリと相談しながらテストしていたら、展開しているマップに反応が見えた。
「誰かこっちに向かって来る」
この裏路地は誘拐犯が取引に使うだけあって、入り組んだ場所にあり、めったに人が通らない。
青い点が四つ。
レベルが上がってから索敵範囲も広がったのでまだ少し離れているが、通っている路地のルートから考えて、この建物へ向かっていると思われる。
その点が犯人達だとするならば、部屋を出る時に居た犯人二人と拐われた二人の組み合わせか、襲撃された時に居たもう一人の犯人も含めた三人組と、攫われた貴族の男性一人の組み合わせということになる。
後者であった場合、捉えた獣人の従者を売りに奴隷商へ寄った可能性も考えられる。
その場合、おれが奴隷商でやったことがバレている可能性があり、不意打ちというアドバンテージが無くなり、より危険性が高まる。
どちらにせよ早急に決着をつける必要があるが、被害者の姿と状態を確認してからでないと無茶はできない。
おそらく隷属の首輪をつけられているだろうから、被害者自体も命令されてこちらを襲って来る可能性も高い。
なるべく被害者を傷つけないように、素早く犯人達だけ倒さなければならない。
打ち合わせ通り、おれはマントをしまって、効力を失っている隷属の首輪を身につけた。
壊れたものではあっても、それを首につける時、ファリはとても不快そうにしてくれていた。反対の立場だったら、と考えると、おれも同じように感じるので気持ちは分かる。
ファリには一旦部屋を出て貰う。
この部屋にはテーブルと椅子以外何も無いので、ファリが身を隠す場所が無いのだ。
犯人達がこの部屋を取引に使っている理由のひとつにもなっているだろう。
ここを取引場所としている以上、帰って来たら、建物内を調べるに違いないので、その間、ファリは身軽さを生かして、別室の窓から出て屋根の上へ登り、一旦身を隠しておく。そこで周辺の確認を終えたら、タイミングを見計らって屋内へ戻ってくる予定だ。
おれ達が備えている間に、青い点はどんどん近づいてきて、とうとうこの建物の前で止まった。
やはり犯人達に違いない。
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