アルバイターとJK

鳥飼2ー7

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お前って幸せそうだよな

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透き通るような青空の下。

何でこんな天気のいい日に店に引きこもって仕事をしなきゃいかんのかと、内心泣きたくなるような気分の中、今日も店に出勤し開店準備をする。

事務所から金庫を取り出しレジの横に置き、レジ開け行い同じ金庫内に仕舞っている高価な貴金属を専用のケースに入れて陳列する。

ここで一つ愚痴を言わせてもらうと、開店準備というのも楽じゃない。

俺が出勤してから店が開店するまでに大体一時間程度の時間はあるが、正直言って一時間では到底足りないのが現状だ。

知らん人はもっと早く来ればいいじゃんとか蹴り飛ばしたくなるような事を思う連中もいるかも知れんが、あまり早く来ると、タイムカードが切れずにただ無償で働く様になるだけだ。

俺は無償で働く程この店に尽くしている訳ではない。

いや、むしろここよりもいい条件の職場があったら秒で辞めてやるつもりでいる。

そんな事を思いつつも、そうこうしている内に同じ店で働く仲間が出勤してくる。

俺は出勤してきた仲間に軽く挨拶を済ませそれぞれ開店準備を進めていく。

とりあえず俺は駐車場に出てのぼりの設置とごみ拾いをする。

透き通るような青空を見上げて軽くため息を付きながらのぼりを設置し、店内からほうきとちりとりを持ってきて
ごみ拾いをする。

はっきり言うが、この店に来る客のレベルは最低レベルだと思っている。

どうやらここに来る客は、この店の駐車場をゴミ捨て場かゴミ集積場と勘違いしている脳みそが脱脂綿で出来ている連中が多いらしく、空き缶を始めとした店で買った商品の空箱や家庭ゴミなどが捨てられている事が多い。

あまりにも酷いと布団や家電製品や自転車などが捨てられていることもある。

今日はそこまで酷くは無いがやはり空き缶や吸殻がちらほらと捨てられている。

俺はゴミをさらっとちりとりで集めて店内へ戻る。

そんな事をやっているうちにあっという間に開店時間が近づいてくる。

時刻は9時58分。

開店まで2分だが、俺がふとカウンターから外を見てみると、俺を朝から憂鬱にさせる見覚えのある姿があった。

「……アイツもう来てんのかよ」

店の入り口前でスマホを見ながら開店の時間を待っているアイツの姿を見ていると、俺はある違和感を覚えた。

何でアイツは平日のど真ん中、しかもこんな日中に来ているんだ?

「あの野郎。やってんな?」

俺はそんな独り言をこぼしながら勝利を確信した。

今日こそアイツに一泡吹かせてやれると思うと、この憂鬱な数日間もなんとなく楽に感じた。

そしてついに10時を迎え店が開店し他の客数人に混じって入店し、アイツは俺の姿を見つけるなり手を振りながら俺の所へと駆け寄ってくる。

「おっはよーございまーす!お兄さん!」

「おう」

いつもの俺ならため息を付きながら悪態の一つもかましているところだが、今日の俺は勝者の笑顔を見せながら軽く挨拶を返す。

「あれ?お兄さん今日は機嫌が良さそうですけど、どうしたんですか?嫌いな人に死刑宣告でも出ました?」

「まぁ、それに近い所だな」

ここまで的確な答えを出して来るとは恐れ入ったが、もうそろそろコイツに現実って言うのを教えてやることにする。

「へぇ、どんな人です?写真とかあります?」

「おう。見たいか?」

「あるんですか!見たい見たいです!」

「待ってろ。今見せてやるよ」

そう言うと俺は、そばに置いてある昨日の夜買い取って置きっぱなしになっていた卓上鏡をコイツの前に置く。

「はい?」

案の定意味が分かりませんと言うような表情をしている。

「何だ。見たいんだろ?死刑宣告を受けた奴の顔をよ」

「いや、お兄さんこれ鏡ですよ?鏡を出しても写るのは私の顔だけですよ?」

コイツはまだ分かっていないようだ。だが、そうやって余裕そうな顔をしていられるのも今のうちだ。

「お兄さんもしかしてボケてます?若年性なんたらってやつですか?」

「まだ分からんか」

「はい?」

「なら、一つお前に質問がある」

「質問ですか?いいですよ?あ、スリーサイズとかならNGですよぉ?」

「誰がお前のスリーサイズなんざに興味があるんだよ。芸能人の破局報道並みに興味ねぇわ!」

「そんな事言ってぇ、本当は気になるんですよねぇ?もう、お兄さんのスケベ☆」

イライライラ……いい加減にしねぇとそのたわわに実ったメロン二つを引きちぎれるほど揉みしだいてやろうか?

と思うがけして声には出さない。常識のある大人として絶対に声には出さない。

「で、質問ってなんです?」

「あ、あぁ。ところでお前今何時だと思う?」

「え?時間ですか?今は10時ちょっと過ぎですね」

カウンター内に掛かっている時計を見ながら答える。

「んじゃ、次の質問だ。今日は何曜日だ?」

「今日は月曜日ですねぇ」

「お前さ。自分でまだ気づかんのか」

「はい?」

「お前やってんな?やってるよな?!」

「え?何言ってるのか意味不明なんですが」

「そこまで認めんのならいい。今からお前の学校に電話して、お宅のミニマム生徒がサボっますよって通報してやるからな」

俺はそう言いながら電話の受話器を取る。こいつの通う学校は制服を見ればなんとなくではあるが検討は付く。

「え?!ちょ、ちょっと待って下さいよぉ!!」

「今更無駄な言い訳はするな。もし、言い訳をしたいのならお前を迎えに来たお前の担任と生徒指導の先生に言うんだな」

さぁ、死刑宣告のお時間だ。

学生の本分をおろそかにした自分の愚かさを呪うがいい。

俺は容赦なく学校に通報するためにダイヤルを押していく。

「待って下さいって!サボリじゃないですよ!証拠だってありますってば!!」

そう言うと、制服のポケットからスマホを取り出しスマホの画面を操作し俺にある画像を見せてくる。

「ほら!これ見てくださいって!!嘘じゃないですから!」

「あぁ?何だ言い訳は聞かんぞっていま……」

俺は一応コイツが差し出しているスマホの画面を見る。

スマホの画面には写真が映っていて、その写真には(緊急職員会議及び保護者説明会により本日の授業は午後からになります)と書かれている張り紙があった。

「何だこれ……」

「分かってくれましたぁ?」

「お前……なにやらかしたんだよ」

「何で私が何かやった前提なんですか!酷くないです?!」

「何でって、お前ぐらいだろ何かやらかすの」

「もぉ、違いますよ。私じゃなくって同じ学年の子が、昨日なんか怪しい薬を持ってたとかで捕まったんですよ」

 「薬?!マジかよ……お前の学校はどうなってんだよ」

まさか学生の間でも出回ってんのかよ。道理でいつまで経っても無くならん訳だ。

「どうなってるって、逮捕されたのはその子だけですよ?」

「お前も悪いことは言わないから早く自首しろよ?」

「だから何で私が何かをやってる前提で話しをしてるんですか!!」

「はぁ……」

俺は思わずため息を漏らす。

別に学生が薬で逮捕されたのがショックな訳ではない。

俺が一番ショックなのは、今日こそは俺の目の前でニコニコとしているこのミニマム悪魔に一泡吹かせてやれると
思っていたのに、蓋を開けてみたらどっかの脳みそ単細胞生物が薬で捕まったってだけのはっきり言ってどうでもいい話だったって所だ。

「どうしたんですか突然ため息なんて付いて、ただでさえ幸薄そうな顔なのに、ため息なんて付いたら幸せが逃げちゃいますよ?」

「……うるせー。俺から幸せを遠ざけてるのは誰でもないお前だからな?」

「お兄さんそんなに私が……」

何かを言う途中で突然コイツのスマホが鳴り出した。

「あ、ちょっと待って下さいね。お友達からDMが来たので」

「俺は何を待つんだよ。用が無いなら帰れよ……」

すっかり俺のテンションは地に落ちてしまった。

こうなっては今俺の目の前でスマホを操作しているコイツが一刻も早く帰るのを待つしかない。

「あ、お兄さん!」

「何だよ……」

「今お友達からDMが来て、授業始まる前にご飯食べないってお誘いが来たので、来たばっかりで残念ですけど、私行きますね!」

「おう、そうかそうか。ならさっさと行った方がいいな」

「あ、でも一つだけ!」

そう言うと駄菓子コーナーの方へ駆け寄り一個だけお菓子を持ってくる。

毎回必ず買っていくアップルキャンディーだ。

「これだけ買っていきますね」

「お前って本当に好きだよな……」

俺は軽くレジ打ちを済ませる。

「レシートは?」

「いらないので、お兄さんのコレクションに加えて良いですよ」

「だから!要らんって!!」

俺はビリビリにレシートを粉砕しそのままゴミ箱に投げ捨てる。

「あ、お友達お店の近くまで来てるみたいなので、今度こそ行きますねぇ!」

どうやらコイツの友達とやらからまたDMが来たのだろう。再びスマホの画面を確認し、店の外に向かって走りだす。

「……お前って幸せそうだよな」

「え?何か言いました?」

「あぁ?何でもねぇよ!!」

「そうですか?では、またでーす!!」

軽く手を振りながらアイツは店を後にする。

「はぁ……さて、働くかぁ」

あまりにも疲労感がすごいが店はまだ開店したばかりだ。

俺はそのままいつもの何にも変わらない業務に戻っていった。

 
 お前って幸せそうだよな 終わり










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みんなの感想(1件)

坂本
2021.06.06 坂本

めっちゃjk絡んでくるやん。

よほど好かれてるんだなぁと思いました。

解除

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