アルバイターとJK

鳥飼2ー7

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アイツとの出会い

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「ありがとうございました」

素早くレジ打ちをして金額を提示し、商品を袋に入れてお客さんの前に置く。

お客さんは青いコイントレーに置かれたおつりを財布に入れ、買った商品が入った袋を持つとそのまま無言で店を出て行く。

こっち側からすると何か言ってほしい所だが、それは十人十色という言葉があるように、お客さんにも様々なタイプのお客さんが存在しているのでしょうがないと自分を納得させる。

俺もこの中古ショップでアルバイトで働き始めて10年になり、今では俺がこの店では一番の古参になる。

10年も働いているといろんな出来事があった。

若干嬉しくなる出来事もあれば、あまりにも理不尽なクレームを言われ、テメェの舌を引きちぎって犬に食わすぞと思った事もあった。

だが、この最近そんな俺でも過去一と言って良いほどの非常にめんどくさい事に巻き込まれている。

その中心人物が、俺の前に立っているこいつだ。

「あ、お兄さ~ん。今日も来ましたよぉ!」

レジカウンター前に立つ俺を見つけるなり大声を上げながら片手を振るこの子犬のような性格の女子。

身長は大体140~150cmぐらいの小柄で、ブラウンのセミロング、少しふっくら目の丸顔で子犬みたいな大きな瞳に、時より見せる笑みから見える八重歯が特徴的なこいつの名前は、矢島京(やしまみやこ)
近くの高校に通う2年生らしい。

こいつが始めて店に来たのは数日前の事だ。






俺がいつもの様に平穏な日々を祈りながら買い取った商品の品出しをしていると、この子犬の様な悪魔が俺のささやかな願いをぶち壊しにやって来た訳だ。

品出しをしている俺の後ろから突然話掛けてきたこいつは、「あのぉ。キャラクターグッズ系って何処に置いてます?」と、なにやら若干イラッとする笑みを見せながらたずねて来た。

正直俺は作業中に話しかけられるのが嫌いなのと、こいつの妙に人をイライラさせる笑みのおかげで若干イライラに拍車が掛かりつつも、「キャラクターグッズって、アニメとかのですか?」と、出来るだけイライラを表に出さないように聞き返した。

キャラクターと言ってもこの店では、アニメ系とその他のキャラクターでは置いてある場所が違うので今の質問ではどっちに案内すればいいのか分からないのだ。

「う~ん。じゃあアニメがいいです!アニメでお願いします!」

「あ、はい。分かりました。アニメ系ならこの生活雑貨コーナーの裏側の棚です」

何が「じゃあ」なのか分からなかったが、一刻も早く終わらせたいのでそっけなくではあるが、場所を教えて終わりにしたつもりだった。

「ん?まだなんかありました?」

場所も教えたからさっさと居なくなると思っていたのだが、なぜかこいつは俺をそのイライラスマイルを俺に向けている。

「はぁ。あの!」

そろそろ俺のフラストレーションが限界を迎えそうなので、どうしたいのか聞こうとしたら。

「あのう。お兄さんって、普段からそんなしゃべり方なんです?」

「は?」

まぁ、接客業としては0点なのは分かっているが、それでも我慢が出来んぐらい俺のイライラが限界値を突破したので、結構な低い声が出てしまった。

普通なら、こんな声をお客さんに対して出してしまったらクレーム待ったなしだが、こいつは表情一つ変えることなくニコニコを笑みを見せている。

「ふ~ん。お兄さんって、愛想悪いって言われたことありません?」

確信した。

こいつはまれに見る変な客だ。

しかも過去一レベルの。

そうと分かれば相手にしないのが得策だ。

「さぁ。もし、俺の接客が気に入らないならすみません。以後改めますので、申し訳ありませんでした」

俺はとりあえず謝罪と一礼して、こいつから離れようとする。

「あ、違います違います。私そんなクレーマーじゃないですよ」

は?クレーマーじゃなかったら等々こいつは本気で何なんだ?クレーマーの方がまだマシに思えるぐらいのヤバイ奴なのか?

「はぁ……それじゃ、何なんですか?」

こいつの正体を暴こうと恐る恐る聞いてみる。

すると、俺の目の前に立つこいつは、気味が悪い笑みを浮かべながら俺に近づいてくる。

「な、なんすか!」

俺はこいつから距離を置こうと後退りする。

さらにこいつは俺に近づいて来て等々俺は商品棚に追い詰められてしまう。

「へぇ……」

ニコニコと笑みを浮かべながら俺を見上げてくる。

「お兄さんって、可愛いですね♪」

「はぁ?!」

今まで言われたことの無い言葉に思わず大声を出してしまう。

そんな俺の感情を知ってか知らずか俺の目の前に立つこいつはそれだけを言うと、後ろに軽く跳躍し距離を取る。

「私このお店気に入りました!これから毎日通いますね!」

「え?」

その子犬の様な悪魔は俺にそれだけを伝えると、そのまま店を後にした。

俺はあまりの出来事にしばらくその場に立ち尽くしていた。


これがアイツ矢島京との始めての出会いであり、これから始まる地獄の日々のスタートでもあった。

























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