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はしがき
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私が稲荷千太郎から手紙をもらった理由は、面白い推理小説が書きたいという相談を彼に予めしていたからだった。
稲荷千太郎は、面白いネタがあったら教えますと私に言ったが、私がそんなことをすっかり忘れていたころ、稲荷千太郎から一通の手紙が届いた。
親愛なる隅田川一様、と始まるその手紙の内容は次の通りだった。
・・・「白船亭事件」を新聞でお読みになったことがきっかけで、隅田川様からお手紙を頂き、貴殿と交流が始まってから半年という時が流れました。「白船亭事件」は、私が行政書士という立場で、ひょんなことから事件に巻き込まれました。その後、新聞でこの事件が話題になってからというもの、私は時の人となりました。しかし、話題になっただけで、ろくな仕事もなく、相変わらずの貧乏が続いておりました。行政書士を辞めて探偵などにならなければ良かったと反省していた矢先のひとつの依頼が舞い込んで来ました。「白船亭事件」でお世話になった警視庁の村越警部からの紹介案件です。私の行き先は、瀬戸内海の小さな島である「奥島」という所でした。この「奥島」という島は地元民からは「人形島」と呼ばれており、そこには人形供養をする奇妙な寺があります。その寺に、妙な手紙と人形三体が東京から送られていたというのです。送り主は不明でした。村越警部を通じての依頼者は、この寺の住職です。私は、この「人形島」で、世にも奇妙な連続殺人事件に巻き込まれました。このお話しでよければ貴殿の小説のネタになると思います。よければお会いして、事の詳細をご説明に伺います。
稲荷千太郎より・・・・・・・・・・
私は、この話に興味を持ち、早速稲荷千太郎に連絡をとった。
稲荷千太郎は暇だったせいか、翌日に私の自宅へやって来た。
稲荷千太郎は相変わらず、ヨレヨレの紺色の背広を着て、頭髪はボサボサだった。どう見ても貧乏な探偵にしか見えない。
「お邪魔します」
稲荷千太郎はノソーと幽霊のように玄関に立っていた。
「稲荷さん。まあ、どうぞ中に上って」
「はい。では失礼します」
「珈琲か日本茶か・・・どっち飲みます?」
「では珈琲いただきます」
稲荷千太郎は、椅子に腰を下ろした。私は、珈琲を入れて彼の前に置いた。
「早速ですが、その人形島で何が起こったのですか?」
「では、結論から申します。人形が動いたのですよ。人形が動くと人が死ぬ。そういう事件です」
「はあ?人形が動く?」
いずれにせよ、稲荷千太郎から聞いたその話は奇妙な事件に違いはなかった。
稲荷千太郎から報告を受けた事実をそのまま私は小説にすることにした。
稲荷千太郎は、面白いネタがあったら教えますと私に言ったが、私がそんなことをすっかり忘れていたころ、稲荷千太郎から一通の手紙が届いた。
親愛なる隅田川一様、と始まるその手紙の内容は次の通りだった。
・・・「白船亭事件」を新聞でお読みになったことがきっかけで、隅田川様からお手紙を頂き、貴殿と交流が始まってから半年という時が流れました。「白船亭事件」は、私が行政書士という立場で、ひょんなことから事件に巻き込まれました。その後、新聞でこの事件が話題になってからというもの、私は時の人となりました。しかし、話題になっただけで、ろくな仕事もなく、相変わらずの貧乏が続いておりました。行政書士を辞めて探偵などにならなければ良かったと反省していた矢先のひとつの依頼が舞い込んで来ました。「白船亭事件」でお世話になった警視庁の村越警部からの紹介案件です。私の行き先は、瀬戸内海の小さな島である「奥島」という所でした。この「奥島」という島は地元民からは「人形島」と呼ばれており、そこには人形供養をする奇妙な寺があります。その寺に、妙な手紙と人形三体が東京から送られていたというのです。送り主は不明でした。村越警部を通じての依頼者は、この寺の住職です。私は、この「人形島」で、世にも奇妙な連続殺人事件に巻き込まれました。このお話しでよければ貴殿の小説のネタになると思います。よければお会いして、事の詳細をご説明に伺います。
稲荷千太郎より・・・・・・・・・・
私は、この話に興味を持ち、早速稲荷千太郎に連絡をとった。
稲荷千太郎は暇だったせいか、翌日に私の自宅へやって来た。
稲荷千太郎は相変わらず、ヨレヨレの紺色の背広を着て、頭髪はボサボサだった。どう見ても貧乏な探偵にしか見えない。
「お邪魔します」
稲荷千太郎はノソーと幽霊のように玄関に立っていた。
「稲荷さん。まあ、どうぞ中に上って」
「はい。では失礼します」
「珈琲か日本茶か・・・どっち飲みます?」
「では珈琲いただきます」
稲荷千太郎は、椅子に腰を下ろした。私は、珈琲を入れて彼の前に置いた。
「早速ですが、その人形島で何が起こったのですか?」
「では、結論から申します。人形が動いたのですよ。人形が動くと人が死ぬ。そういう事件です」
「はあ?人形が動く?」
いずれにせよ、稲荷千太郎から聞いたその話は奇妙な事件に違いはなかった。
稲荷千太郎から報告を受けた事実をそのまま私は小説にすることにした。
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