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第一章:エクスレイ日本支部

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 それからどれくらい経っただろうか。それ程かもしれないし、長い間そうしてたかもしれない。時間を確認してなかったから分からないけど、少なくとも気が付けばナナさんに言われた時間まではあと少しだった。
 そしてそのタイミングでナナさんから一通の連絡が……。

「特殊戦闘部の訓練生が着る服がクローゼットにありますので、それに着替えてから入隊式へ行ってくださいね」

 独り言と化した読み上げ声を部屋へ響かせると私は立ち上がりクローゼットへ。スライドして開けてみると、そこにはシンプルなデザインの動きやすそうなジャージが掛けてあった。合計、五着。その隣には無地のシャツが十着ほど並んでいる。
 まずジャージの上を手に取って眺めてみる。

「手触りは……いい感じ。伸縮性もありそう。――見た目は地味だけど、結構着心地はいいのかも」

 一人頷いた私は早速、服を脱いで着替えてみた。無地のシャツもスポーツ用だろう、着心地はバッチリだったしジャージもむしろ運動したくなってしまう程に良かった。

「おぉー。どこのだろう。もっと早く知ってれば家で着てたのに」

 わざわざ声に出しながら鏡の前でいい感じにフィットしたジャージを細かく見てみるが、やっぱりシンプルイズベストを掲げているかのようなデザインだ。個人的な意見を言わせてもらうならもう少し色とか模様が欲しい。

「なんだかジャージ登校思い出すなぁ。あの頃は楽しかったっけ」

 ほんの最近まで高校生だったのにも関わらず、私は遠い昔の事のように一人で溜息交じりに呟いていた。まるであの頃は私も若かったとでも言いたげな口調を意識して。だけど脳裏に浮かぶ記憶は余りにも鮮明過ぎる。

「ってもう行かないとか」

 出来る事ならそんな風にずっと部屋に引き籠っていたがったが、そういう訳にもいかず渋々と部屋の外へ。既に憂鬱になりながらもナナさんの言葉を思い出しながらまずはエレベーターに乗り込む。それから五階へと。
 エレベーターから降りるとさっきの階と同じように幾つものソファが左右に置かれていた。それに自販機も。それと私と同じジャージを姿の人や別の格好をした人が数人。ここに来てからナナさん以外に初めて人を見た。年齢はバラバラだけど、同じジャージの人は余り変わらないように見える。恐らく私と同じ新人だ――ってシャーロックばりの推理をかましたつもりだったけど、訓練生用のジャージって言ったし当たり前か。
 そしてエレベーターを降り横に伸びる廊下を挟んだ正面には、ホールのような空間が広がっていた。少し足を進めその空間の入り口手前まで行くとそこには想像以上の光景が……。

「なにこれ……」

 思わずそう呟いてしまったそれは、中央にベンチやテーブルなどが集合し周りにはチンアナゴのように地面から伸びたタッチパネル機械が並んでいる。そして入口の左右にはずらりと色々な自販機。
 だけどそんな事はどうでもいい。だって見上げた天井には皓々とした満天の星が広がっていたのだから。

「綺麗……」

 かと思ったけど、よく見ればそれは星ではなかった。それは色とりどりの箱。大きなリボンを頭に乗せたプレゼント箱だ。蓋の閉じたモノと閉じてないモノがあって忙しなく移動している。その行先は周りにある機械。誰かが立ってるとこを見ると操作してるんだろう。
 それが綺麗だし良く分からない初めての光景だったからつい見入ってしまっていたけど、私はすぐにここへ来た目的を思い出した。

「第一訓練場ってどこだろ」

 誰に尋ねる訳でも無く独り言を言いながら辺りを見回してみると、壁にある案内表示が目に止まった。どうやらこの空間は個人訓練場らしい。そしてエレベーターを出てから左手の通路へ進んだとこに第一から三までの訓練場があるってこの表示は言っていた。
 私はそれに従い通路を進んで行く。そこには左右に伸びた通路と見上げる程のガラス張り。でも不透明で中は見えない。案内にあった通り三部屋に分かれてはいたが、どっちが第一かはひと目見ただけじゃ不明。と思っていたが、気が付かなったのが不思議なくらいにそこにはそれぞれ壱、弐、参と大きく書かれていた。

「あっ……」

 思わず声を零し一人で何だか小恥ずかしくなりながらも、取り敢えず足を動かし左端の第一訓練所へ。
 自動ドアを通り中へ入ってみると、そこはただただ何も無い空間が広がっていた。強いて言えば、一段程度の舞台とマイクの無いスタンドが置かれた台、両隣にスピーカーがあるぐらいだ。でもこの部屋の物というよりこの為に運び込んだんだろう。少し浮いてる気がする。しかも壁の代わりにガラス張りなんて入り口をしてるくせに広さは意外とそうでもない。
 そして中には既に同じジャージの人がいた。数は二十人いないぐらいだろうか。二、三人で集まり話して人達もいれば、一人壁に凭れ掛かり座ってる人や立ってる人。そこにはまるで高校一年の初日みたいな懐かしさすら感じる雰囲気が漂っていた。年齢は恐らく同い年からいっても二十五ぐらいだろうか。といってもサッと見ただけで殆ど予想だけど……。
 そんな私の後方からは(ロビーに居た人達か)更に数人が中へとやって来た。どうすればいいか分からず入口に突っ立つ私の横を通り過ぎ中央辺りへ。まだ始まる気配がないのを感じたのだろうその場でお喋りを始めた。
 するとそれから少し間を空けて――後方でドアが開いたかと思うと正面のスピーカーが声を上げた。

「それでは整列して下さい」
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