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第一章:エクスレイ日本支部
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「着いたー!」
新幹線から降りただけで私は妙な達成感に満たされていた。同時に予想以上の寒さが襲い掛かる。とにかく私は少し縮こまりながらも一旦駅から外へ。
実はこの日、駅まで迎えが来てくれてるらしい。あの名前だけ理事長からのメールによるとここまで迎えが来てそのままクリスマス防衛機関の日本支部まで連れてってくれるとか。
だから私はリュックを背負いキャリーバッグを手にしながら辺りを見回した。
「初めまして太交美沙さん」
すると丁度右手を見ていた時に、後ろの方から声を掛けられた。振り返ってみるとそこには白髪交じり清潔な髪型をしたおじさんが立っていた。皺で折り畳む様に柔らかな笑みを浮かべたスリーピーススーツのよく似合う格式高そうな人。どこぞの大企業の役員って言われても何ら不思議はない。
「ど、どうも」
風貌だけで緊張の走った私は明らかに圧倒されながらも返事を何とかした。
「私は安居院晴信です」
そう言って差し出された手。その名前に聞き覚えを感じながらも私は手を握り返した。握手の間に何度かその名前を繰り返すとすぐに記憶の検索がヒット。
「もしかして夜星大学の理事長さん?」
「えぇ。こうして直接お会いするのは初めてですが、メールでは何度か」
「えっ? あれって名前だけで実際は秘書とか別の人がやってたんじゃないんですか?」
驚きの余り思っていた事が口から零れ落ちていく。
「いやいや。私が直接送っていましたよ。もしよかったら私の名前を検索してみては? 少なくとも大学のホームページには私の写真が載っていますので」
そう言われた私は失礼と思いつつもスマホで検索をかけてしまった。大学のホームページへいき、理事長の写真を見てみる。そしてここまできたらと写真と目の前の男性を何度か見比べてみた。
「本物だ……すみませんでした!」
確認が出来るとこれまでの無礼を込めた重い頭を下げた。もし本当に重くなってたら私の首は耐えきれず頭が地面に埋まってしまっていたかもしれない。
「気にする必要はないですよ。では早速行きましょうか」
そう言って理事長さんは私のキャリーバッグを持ってくれ、近くに停めてあった車へ。トランクに荷物を入れると私は助手席に乗った。そして理事長さんの運転で出発。
「あの、もしかして私みたいな人の迎えって毎回理事長さんがしてるんですか?」
理事長さんが私みたいなのを直々に迎えるなんてなんだか変な文章を読んでいるようだ。
でも理事長さんはそんな質問に笑って答えた。
「安居院でいいですよ。送迎は出しますが、私が直接来たのは貴方だからですよ」
「私?」
別に私はどこぞの御曹司でも無ければ当然王族の者でもない。ただの一般人中の一般人だ。理事長は疎かわざわざ迎えに来てくれるってだけで手厚い支援だと思ってしまう程に。そう言う意味では私には何もない。
「あのサンタクロースさんが直々に推薦した人なんですからね」
前言撤回するしかないようだ。確かに私はサンタさんに会って、サンタさんが紹介してくれた。クリスマス防衛機関とやらはサンタさんが創設したらしいから、創設者であり社長が直々に推薦した新入社員って感じなのかもしれない。そう考えたら理事長が直接、迎えに来てくれるのも少しは納得できる気がする。私って意外とすごかったり?
「そういうのって無いんですか?」
「ゼロではないですが珍しいですね」
「じゃあどうやって人数を増やしてるんですか? 誰も知らないから自分からっていうのは無理ですし」
「素質のある人材を見つけ招待する者がいます」
まるで一見さんお断りの完全招待制のお店みたい。
「それより今後ですが、貴方は基本的に支部内で機関員としての訓練を受けます。ですが、色々と理由を付け出来る限り減らしているとはいえ、大学としての費用も頂いているので勉学の方も怠る訳にはいきません。もちろん四年後にはしっかり卒業証書をお渡ししますし」
「えーっと。私って勉強するんですか?」
「そうなります。確か、経営学科希望でしたので卒業までにしっかりその知識は身に着けてもらいます。もちろん大学に通うのではなく、支部内で出来るように特別なカリキュラムでのものになりますが」
てっきりその辺りはしなくていいと思ってたからある程度、適当に選んだっていうのは言えない。何より勉強もしっかりしないといけないという事実に落胆を隠せないでいた。
「ですのでそちらの方もよろしくお願いします」
「はい。頑張ります」
「それともしご両親が貴方の元を訪れる場合は大学寮の部屋を用意しますのでこちらへご連絡を」
そう言って安居院さんは名刺を一枚差し出してくれた。それは安居院さんの名刺だった。
「もしかして安居院さんに直接って事ですか?」
今日まで何度かやり取りしてたとは言えそれは何だか気が引ける。だってその時は別の誰かだと思ってた訳だし。
「いえ。その裏にある番号かメールへ。特別な部署の者が対応してくれます」
「そうなんですね。分かりました」
少しホッとしながら私は名刺を仕舞った。
「私の方からは以上です。詳細は追々という事で。エクスレイに関しては着いてから説明があるのでそちらに。大学に関して何か質問はありますか?」
「いえ。大丈夫です」
「では何かありましたら先程の名刺にあった連絡先へどうぞ」
「はい。ありがとうございます」
そして引き続き私は安居院さんの運転でクリスマス防衛機関日本支部へと向かった。
新幹線から降りただけで私は妙な達成感に満たされていた。同時に予想以上の寒さが襲い掛かる。とにかく私は少し縮こまりながらも一旦駅から外へ。
実はこの日、駅まで迎えが来てくれてるらしい。あの名前だけ理事長からのメールによるとここまで迎えが来てそのままクリスマス防衛機関の日本支部まで連れてってくれるとか。
だから私はリュックを背負いキャリーバッグを手にしながら辺りを見回した。
「初めまして太交美沙さん」
すると丁度右手を見ていた時に、後ろの方から声を掛けられた。振り返ってみるとそこには白髪交じり清潔な髪型をしたおじさんが立っていた。皺で折り畳む様に柔らかな笑みを浮かべたスリーピーススーツのよく似合う格式高そうな人。どこぞの大企業の役員って言われても何ら不思議はない。
「ど、どうも」
風貌だけで緊張の走った私は明らかに圧倒されながらも返事を何とかした。
「私は安居院晴信です」
そう言って差し出された手。その名前に聞き覚えを感じながらも私は手を握り返した。握手の間に何度かその名前を繰り返すとすぐに記憶の検索がヒット。
「もしかして夜星大学の理事長さん?」
「えぇ。こうして直接お会いするのは初めてですが、メールでは何度か」
「えっ? あれって名前だけで実際は秘書とか別の人がやってたんじゃないんですか?」
驚きの余り思っていた事が口から零れ落ちていく。
「いやいや。私が直接送っていましたよ。もしよかったら私の名前を検索してみては? 少なくとも大学のホームページには私の写真が載っていますので」
そう言われた私は失礼と思いつつもスマホで検索をかけてしまった。大学のホームページへいき、理事長の写真を見てみる。そしてここまできたらと写真と目の前の男性を何度か見比べてみた。
「本物だ……すみませんでした!」
確認が出来るとこれまでの無礼を込めた重い頭を下げた。もし本当に重くなってたら私の首は耐えきれず頭が地面に埋まってしまっていたかもしれない。
「気にする必要はないですよ。では早速行きましょうか」
そう言って理事長さんは私のキャリーバッグを持ってくれ、近くに停めてあった車へ。トランクに荷物を入れると私は助手席に乗った。そして理事長さんの運転で出発。
「あの、もしかして私みたいな人の迎えって毎回理事長さんがしてるんですか?」
理事長さんが私みたいなのを直々に迎えるなんてなんだか変な文章を読んでいるようだ。
でも理事長さんはそんな質問に笑って答えた。
「安居院でいいですよ。送迎は出しますが、私が直接来たのは貴方だからですよ」
「私?」
別に私はどこぞの御曹司でも無ければ当然王族の者でもない。ただの一般人中の一般人だ。理事長は疎かわざわざ迎えに来てくれるってだけで手厚い支援だと思ってしまう程に。そう言う意味では私には何もない。
「あのサンタクロースさんが直々に推薦した人なんですからね」
前言撤回するしかないようだ。確かに私はサンタさんに会って、サンタさんが紹介してくれた。クリスマス防衛機関とやらはサンタさんが創設したらしいから、創設者であり社長が直々に推薦した新入社員って感じなのかもしれない。そう考えたら理事長が直接、迎えに来てくれるのも少しは納得できる気がする。私って意外とすごかったり?
「そういうのって無いんですか?」
「ゼロではないですが珍しいですね」
「じゃあどうやって人数を増やしてるんですか? 誰も知らないから自分からっていうのは無理ですし」
「素質のある人材を見つけ招待する者がいます」
まるで一見さんお断りの完全招待制のお店みたい。
「それより今後ですが、貴方は基本的に支部内で機関員としての訓練を受けます。ですが、色々と理由を付け出来る限り減らしているとはいえ、大学としての費用も頂いているので勉学の方も怠る訳にはいきません。もちろん四年後にはしっかり卒業証書をお渡ししますし」
「えーっと。私って勉強するんですか?」
「そうなります。確か、経営学科希望でしたので卒業までにしっかりその知識は身に着けてもらいます。もちろん大学に通うのではなく、支部内で出来るように特別なカリキュラムでのものになりますが」
てっきりその辺りはしなくていいと思ってたからある程度、適当に選んだっていうのは言えない。何より勉強もしっかりしないといけないという事実に落胆を隠せないでいた。
「ですのでそちらの方もよろしくお願いします」
「はい。頑張ります」
「それともしご両親が貴方の元を訪れる場合は大学寮の部屋を用意しますのでこちらへご連絡を」
そう言って安居院さんは名刺を一枚差し出してくれた。それは安居院さんの名刺だった。
「もしかして安居院さんに直接って事ですか?」
今日まで何度かやり取りしてたとは言えそれは何だか気が引ける。だってその時は別の誰かだと思ってた訳だし。
「いえ。その裏にある番号かメールへ。特別な部署の者が対応してくれます」
「そうなんですね。分かりました」
少しホッとしながら私は名刺を仕舞った。
「私の方からは以上です。詳細は追々という事で。エクスレイに関しては着いてから説明があるのでそちらに。大学に関して何か質問はありますか?」
「いえ。大丈夫です」
「では何かありましたら先程の名刺にあった連絡先へどうぞ」
「はい。ありがとうございます」
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