クリスマス防衛機関エクスレイ

佐武ろく

文字の大きさ
上 下
9 / 15
第一章:エクスレイ日本支部

しおりを挟む
「着いたー!」

 新幹線から降りただけで私は妙な達成感に満たされていた。同時に予想以上の寒さが襲い掛かる。とにかく私は少し縮こまりながらも一旦駅から外へ。
 実はこの日、駅まで迎えが来てくれてるらしい。あの名前だけ理事長からのメールによるとここまで迎えが来てそのままクリスマス防衛機関の日本支部まで連れてってくれるとか。
 だから私はリュックを背負いキャリーバッグを手にしながら辺りを見回した。

「初めまして太交美沙さん」

 すると丁度右手を見ていた時に、後ろの方から声を掛けられた。振り返ってみるとそこには白髪交じり清潔な髪型をしたおじさんが立っていた。皺で折り畳む様に柔らかな笑みを浮かべたスリーピーススーツのよく似合う格式高そうな人。どこぞの大企業の役員って言われても何ら不思議はない。

「ど、どうも」

 風貌だけで緊張の走った私は明らかに圧倒されながらも返事を何とかした。

「私は安居院晴信です」

 そう言って差し出された手。その名前に聞き覚えを感じながらも私は手を握り返した。握手の間に何度かその名前を繰り返すとすぐに記憶の検索がヒット。

「もしかして夜星大学の理事長さん?」
「えぇ。こうして直接お会いするのは初めてですが、メールでは何度か」
「えっ? あれって名前だけで実際は秘書とか別の人がやってたんじゃないんですか?」

 驚きの余り思っていた事が口から零れ落ちていく。

「いやいや。私が直接送っていましたよ。もしよかったら私の名前を検索してみては? 少なくとも大学のホームページには私の写真が載っていますので」

 そう言われた私は失礼と思いつつもスマホで検索をかけてしまった。大学のホームページへいき、理事長の写真を見てみる。そしてここまできたらと写真と目の前の男性を何度か見比べてみた。

「本物だ……すみませんでした!」

 確認が出来るとこれまでの無礼を込めた重い頭を下げた。もし本当に重くなってたら私の首は耐えきれず頭が地面に埋まってしまっていたかもしれない。

「気にする必要はないですよ。では早速行きましょうか」

 そう言って理事長さんは私のキャリーバッグを持ってくれ、近くに停めてあった車へ。トランクに荷物を入れると私は助手席に乗った。そして理事長さんの運転で出発。

「あの、もしかして私みたいな人の迎えって毎回理事長さんがしてるんですか?」

 理事長さんが私みたいなのを直々に迎えるなんてなんだか変な文章を読んでいるようだ。
 でも理事長さんはそんな質問に笑って答えた。

「安居院でいいですよ。送迎は出しますが、私が直接来たのは貴方だからですよ」
「私?」

 別に私はどこぞの御曹司でも無ければ当然王族の者でもない。ただの一般人中の一般人だ。理事長は疎かわざわざ迎えに来てくれるってだけで手厚い支援だと思ってしまう程に。そう言う意味では私には何もない。

「あのサンタクロースさんが直々に推薦した人なんですからね」

 前言撤回するしかないようだ。確かに私はサンタさんに会って、サンタさんが紹介してくれた。クリスマス防衛機関とやらはサンタさんが創設したらしいから、創設者であり社長が直々に推薦した新入社員って感じなのかもしれない。そう考えたら理事長が直接、迎えに来てくれるのも少しは納得できる気がする。私って意外とすごかったり?

「そういうのって無いんですか?」
「ゼロではないですが珍しいですね」
「じゃあどうやって人数を増やしてるんですか? 誰も知らないから自分からっていうのは無理ですし」
「素質のある人材を見つけ招待する者がいます」

 まるで一見さんお断りの完全招待制のお店みたい。

「それより今後ですが、貴方は基本的に支部内で機関員としての訓練を受けます。ですが、色々と理由を付け出来る限り減らしているとはいえ、大学としての費用も頂いているので勉学の方も怠る訳にはいきません。もちろん四年後にはしっかり卒業証書をお渡ししますし」
「えーっと。私って勉強するんですか?」
「そうなります。確か、経営学科希望でしたので卒業までにしっかりその知識は身に着けてもらいます。もちろん大学に通うのではなく、支部内で出来るように特別なカリキュラムでのものになりますが」

 てっきりその辺りはしなくていいと思ってたからある程度、適当に選んだっていうのは言えない。何より勉強もしっかりしないといけないという事実に落胆を隠せないでいた。

「ですのでそちらの方もよろしくお願いします」
「はい。頑張ります」
「それともしご両親が貴方の元を訪れる場合は大学寮の部屋を用意しますのでこちらへご連絡を」

 そう言って安居院さんは名刺を一枚差し出してくれた。それは安居院さんの名刺だった。

「もしかして安居院さんに直接って事ですか?」

 今日まで何度かやり取りしてたとは言えそれは何だか気が引ける。だってその時は別の誰かだと思ってた訳だし。

「いえ。その裏にある番号かメールへ。特別な部署の者が対応してくれます」
「そうなんですね。分かりました」

 少しホッとしながら私は名刺を仕舞った。

「私の方からは以上です。詳細は追々という事で。エクスレイに関しては着いてから説明があるのでそちらに。大学に関して何か質問はありますか?」
「いえ。大丈夫です」
「では何かありましたら先程の名刺にあった連絡先へどうぞ」
「はい。ありがとうございます」

 そして引き続き私は安居院さんの運転でクリスマス防衛機関日本支部へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた

羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件 借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...