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序章:クリスマスの秘密
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「儂という存在がそうであるように、あのランプスもまた多くの人間が知らぬ世界の真実じゃ」
「あれは一体何なんですか?」
「ランプスは儂らとは相反する存在」
サンタさんはそう言うと手綱を振るい雪舟を走らせた。
「奴らの目的も正体も良くは分かっておらんがな。ただ分かっている事は、奴らは特殊なエネルギーに反応し、引き寄せられて来る。そして人間を襲うという事じゃ。このエネルギーを餌にしとるのか、普段はどこにおるのかもまだまだ謎だらけ」
その物語のような話も不思議と私はすんなり受け入れられていた。今ならサンタさんがどんな話をしようと全て信じてしまいそうだ。
「じゃあサンタさんは世界も守ってるって事なんですね!」
「ほっほっほ。儂も全知全能の神ではないからの。一人では不可能じゃ」
「って事はサンタさんに馴鹿さん以外の仲間が?」
「そうじゃ。皆のお陰で毎年クリスマスを無事迎え、無事終える事が出来る」
サンタファミリーたるものが存在してる、そう思っただけで何だか心躍る。
そんな会話をしている間に又もや袋に呑まれ、私達は同じように夜空から夜空へ。多分、元の場所に戻ったんだろう。
「そして儂らには君の力も必要じゃ」
駆け抜けていく星空の景色を眺めていたからか、私はちゃんと聞き取れていなかったらしい。
「何ですか?」
「君は卒業したらどうするかは決めておるのか?」
「いやぁ……何となくの候補はあるんですけどまだちょっとって感じですかね。多分、大学に行くと思いますけど」
進路や将来、今の私も含めそれ関係の質問にはついつい苦い顔をしてしまう人は少なくないはず。
「それなら……どうじゃ?」
そう言ってサンタさんは一枚の封筒を私へと差し出した。それは赤色に雪の降る可愛らしい封筒。何の事か分からなかったが、取り敢えず封筒を受け取る。
「儂という存在を信じ続ける君のような人間は稀じゃ。そしてそんな人間を儂らは必要としてる。もし君が望むのなら、儂が招待しよう」
「えーっと……」
突然の事に私はまず理解すら追い付ていなかった。
「つまり……私もサンタファミリーに?」
ふとそんな結論を思い付くと何だか幸せな気持ちが溢れ出してきた。
「詳しくはそれが教えてくれる。クリスマスを受け取る側から今度は届ける側に、という事じゃな」
「届ける側……」
多分そう言う事ではないだろうが、脳裏では自分がサンタとなって世界中にプレゼントを届ける絵が浮かんでいた。思わずニヤケてしまう。
「考えてみてくれ」
するといつの間に着いたのか、雪舟は私の家の前に止まっていた。
「儂らはいつでも君を待っておるからの」
「……はい」
取り敢えずそう返事をするしかなかった私は少し名残惜しさを感じながら雪舟を降りた。その後、最後にザ・サンタクロースの組み合わせを拝んでおこうと振り返った。
じっくり全体を見ていると、とある欲望が私の中で生まれそれに突き動かされるがまま声が口から飛び出していた。
「あの」
サンタさんは問いかけるような視線を私へ向けながら続きを言うのを待っている。
「最後に馴鹿さん撫でていいですか?」
「それは本人に訊いてみるといい」
ほっほっほ、と笑ったサンタさんがそう言うと私は雪舟の前の馴鹿さんの元へ。近くで見ると思ったより大きい。
「馴鹿さん。触らせて貰ってもいいかな?」
そう尋ねると馴鹿のまん丸い目が私を見つめた。じぃーっと愛らしくも凛々しいその顔を見ているだけでも癒される。しかも頭上に生えた角は立派でカッコいいときた。
「私の名前はルドルフだ」
「えっ?」
その声は確かに馴鹿の方から聞こえた。でも私の中にある常識がそれを素直には受け入れてくれない。
「今、喋った……?」
「天下のサンタクロース様が乗った雪舟を引いて、空も走れるんだ。今更喋ったぐらいで驚くか?」
すると目の前の彼に引き続き、隣の彼も雑な口調で少し笑いながら言葉を発した。一瞬、自分の頭がバグってしまったんじゃないかとさえ思ったけど――確かに動く口に合わせ言葉は聞こえてた。
「馴鹿さんではなく、ルドルフだ」
「あっ……すみませんでした」
「俺様はダッシャー」
「よろしくお願いします」
まだ頭の整理は追い付かず、どうしていい分からないまま私はただただ言葉に反応して軽く頭を下げていた。
するとそんな私の方へルドルフさんはお辞儀でもするように顔を近づけて来た。更なる追い打ちで何が何だか分からない。
「爪には気を付けてくれ。それと余り激しくはしてくれるな」
「え?」
「珍しいな。ルドがじいさん以外に触らせるなんてよ」
「どうやらルドルフの許可が下りたようじゃな」
すっかり忘れてしまっていたが、最初に触らせて欲しいと言ったことへの答えらしい。サンタさんに言われ遅れて気が付いた。
「それじゃあ、失礼します」
私は会釈をしてからそっと手を伸ばした。まずは指先がその感触と捉え、それから掌全体へと広がっていく。柔らかな感触がありつつも少し硬いのもあって――でも全体的に温かい。どこか優しくずっと触っていたくなるような、どんどん幸せな気持ちが溢れてくる。
でも確かに言われてみれば今更サンタさんと一緒にいる馴鹿と会話が出来たとこで不思議じゃないのかも。なんて頭の隅でさっきの戸惑いが雑に処理されるぐらいには、それは至福の瞬間だった。
「はぁー。最高……」
そしてついつい私は頬擦りをするように抱き着きながら撫でていた。
でも余りにも長い間触り続けるのも失礼かと思い、名残惜しさを堪えつつその感触から離れた。
「ありがとうございました」
最後はしっかり頭を下げてお礼を忘れない。
「うむ。悪くは無かった」
そう言われると何だか撫でるのに自信が出て来るような気がする。
「それじゃあ先程の件、考えてみてくれ。儂らはいつでも君を待っておるからの」
「はい。まさかこうしてまた会えるなんて。光栄でした」
「体には気を付けるんじゃぞ」
サンタさんは言葉の後に手綱を振るった。
「それと良い子でな」
ほっほっほ、そして笑い声と共にサンタさんは夜空へと消えて行った。
「あれは一体何なんですか?」
「ランプスは儂らとは相反する存在」
サンタさんはそう言うと手綱を振るい雪舟を走らせた。
「奴らの目的も正体も良くは分かっておらんがな。ただ分かっている事は、奴らは特殊なエネルギーに反応し、引き寄せられて来る。そして人間を襲うという事じゃ。このエネルギーを餌にしとるのか、普段はどこにおるのかもまだまだ謎だらけ」
その物語のような話も不思議と私はすんなり受け入れられていた。今ならサンタさんがどんな話をしようと全て信じてしまいそうだ。
「じゃあサンタさんは世界も守ってるって事なんですね!」
「ほっほっほ。儂も全知全能の神ではないからの。一人では不可能じゃ」
「って事はサンタさんに馴鹿さん以外の仲間が?」
「そうじゃ。皆のお陰で毎年クリスマスを無事迎え、無事終える事が出来る」
サンタファミリーたるものが存在してる、そう思っただけで何だか心躍る。
そんな会話をしている間に又もや袋に呑まれ、私達は同じように夜空から夜空へ。多分、元の場所に戻ったんだろう。
「そして儂らには君の力も必要じゃ」
駆け抜けていく星空の景色を眺めていたからか、私はちゃんと聞き取れていなかったらしい。
「何ですか?」
「君は卒業したらどうするかは決めておるのか?」
「いやぁ……何となくの候補はあるんですけどまだちょっとって感じですかね。多分、大学に行くと思いますけど」
進路や将来、今の私も含めそれ関係の質問にはついつい苦い顔をしてしまう人は少なくないはず。
「それなら……どうじゃ?」
そう言ってサンタさんは一枚の封筒を私へと差し出した。それは赤色に雪の降る可愛らしい封筒。何の事か分からなかったが、取り敢えず封筒を受け取る。
「儂という存在を信じ続ける君のような人間は稀じゃ。そしてそんな人間を儂らは必要としてる。もし君が望むのなら、儂が招待しよう」
「えーっと……」
突然の事に私はまず理解すら追い付ていなかった。
「つまり……私もサンタファミリーに?」
ふとそんな結論を思い付くと何だか幸せな気持ちが溢れ出してきた。
「詳しくはそれが教えてくれる。クリスマスを受け取る側から今度は届ける側に、という事じゃな」
「届ける側……」
多分そう言う事ではないだろうが、脳裏では自分がサンタとなって世界中にプレゼントを届ける絵が浮かんでいた。思わずニヤケてしまう。
「考えてみてくれ」
するといつの間に着いたのか、雪舟は私の家の前に止まっていた。
「儂らはいつでも君を待っておるからの」
「……はい」
取り敢えずそう返事をするしかなかった私は少し名残惜しさを感じながら雪舟を降りた。その後、最後にザ・サンタクロースの組み合わせを拝んでおこうと振り返った。
じっくり全体を見ていると、とある欲望が私の中で生まれそれに突き動かされるがまま声が口から飛び出していた。
「あの」
サンタさんは問いかけるような視線を私へ向けながら続きを言うのを待っている。
「最後に馴鹿さん撫でていいですか?」
「それは本人に訊いてみるといい」
ほっほっほ、と笑ったサンタさんがそう言うと私は雪舟の前の馴鹿さんの元へ。近くで見ると思ったより大きい。
「馴鹿さん。触らせて貰ってもいいかな?」
そう尋ねると馴鹿のまん丸い目が私を見つめた。じぃーっと愛らしくも凛々しいその顔を見ているだけでも癒される。しかも頭上に生えた角は立派でカッコいいときた。
「私の名前はルドルフだ」
「えっ?」
その声は確かに馴鹿の方から聞こえた。でも私の中にある常識がそれを素直には受け入れてくれない。
「今、喋った……?」
「天下のサンタクロース様が乗った雪舟を引いて、空も走れるんだ。今更喋ったぐらいで驚くか?」
すると目の前の彼に引き続き、隣の彼も雑な口調で少し笑いながら言葉を発した。一瞬、自分の頭がバグってしまったんじゃないかとさえ思ったけど――確かに動く口に合わせ言葉は聞こえてた。
「馴鹿さんではなく、ルドルフだ」
「あっ……すみませんでした」
「俺様はダッシャー」
「よろしくお願いします」
まだ頭の整理は追い付かず、どうしていい分からないまま私はただただ言葉に反応して軽く頭を下げていた。
するとそんな私の方へルドルフさんはお辞儀でもするように顔を近づけて来た。更なる追い打ちで何が何だか分からない。
「爪には気を付けてくれ。それと余り激しくはしてくれるな」
「え?」
「珍しいな。ルドがじいさん以外に触らせるなんてよ」
「どうやらルドルフの許可が下りたようじゃな」
すっかり忘れてしまっていたが、最初に触らせて欲しいと言ったことへの答えらしい。サンタさんに言われ遅れて気が付いた。
「それじゃあ、失礼します」
私は会釈をしてからそっと手を伸ばした。まずは指先がその感触と捉え、それから掌全体へと広がっていく。柔らかな感触がありつつも少し硬いのもあって――でも全体的に温かい。どこか優しくずっと触っていたくなるような、どんどん幸せな気持ちが溢れてくる。
でも確かに言われてみれば今更サンタさんと一緒にいる馴鹿と会話が出来たとこで不思議じゃないのかも。なんて頭の隅でさっきの戸惑いが雑に処理されるぐらいには、それは至福の瞬間だった。
「はぁー。最高……」
そしてついつい私は頬擦りをするように抱き着きながら撫でていた。
でも余りにも長い間触り続けるのも失礼かと思い、名残惜しさを堪えつつその感触から離れた。
「ありがとうございました」
最後はしっかり頭を下げてお礼を忘れない。
「うむ。悪くは無かった」
そう言われると何だか撫でるのに自信が出て来るような気がする。
「それじゃあ先程の件、考えてみてくれ。儂らはいつでも君を待っておるからの」
「はい。まさかこうしてまた会えるなんて。光栄でした」
「体には気を付けるんじゃぞ」
サンタさんは言葉の後に手綱を振るった。
「それと良い子でな」
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