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第五章:遊女と私
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そんな自分が情けなくて私は彼の手から逃れた。
「だからこう言う事にします」
でも八助さんはすぐに離れた私の手を取った。そして今度はそんな私の手を自分の顔へ。掌に感じる頬の温もりと柔らかな肌。その感触は嬉しく心地好いはずなのに、何故か今は自分に嫌厭すら感じてしまう。いや、何故かじゃなくて理由は分かってる。
だからすぐにでも彼から手を離してしまいたかったがそれを許さぬと言うように私の手を彼の手が包み込んでいた。
「もし夕顔さんの手が穢れてたとしても、その手で触れる事で僕が同じように穢れてしまうとしても。僕は構いません。今もそうなように例え穢れたとして気付かないと思います。もし気付いたとしてもそれも僕はあなたの手を握り続け、触れられ、言葉を口にして欲しいと思はず。だって穢れるとしても僕にとってはそっちの方が考えるまでもなく価値があるから。でも夕顔さんにとって重要なのはそこじゃないって事は分かってます。だからどすればいいかを一緒に考えませんか? 例えば……もういっその事、目一杯触れて想いを口にして穢してしまうとか。そうしたらもう穢れるなんて心配しなくて済むしそれに、夕顔さんにこうやって触れられるなら言葉を聞けるなら別にいくら穢れようと構いません。あとは……。気にならなくなるまで何度もっていうのは流石に力技過ぎますよね。んー。なら他には……」
八助さんはまるで自分事のように考えては案を口にしてくれていた。でも私は(彼には悪いと思うけど)その案をちゃんと聞けてなくてただそうやって私の事を一途に想ってくれている彼の姿を見つめていた。突然、あんな手紙を書いたのにも関わらずこうやって会いに来てくれて私の問題を一緒にどうにかしようとしてくれてる。その姿に恋い慕う気持ちが胸を強く打つのを感じた。私は少しばかり恍惚としていたかもしれない。
そんな気持ちを感じながら私は、そんな歩みより寄り添おうとしてくれる八助さんに比べて自分はどうなんだという疑心も感じていた。私は彼のように傍に居る為に何かしようとしているのだろうか? 自分の問題を解決する術すら見つけられず、自ら自分の気持ちを抑え込んではその辛さに悶え最後まで彼に伝える事が出来なかった。彼から伝えられる喜びを教えてもらったのにも関わらず私はそれをほとんど与えられてない。しかも原因は私の我が儘であり心の弱さ。なのに彼は未だ私に嫌気を差すどころか私の分まで歩み寄ろうとしてくれてる。
「――八助はん」
こんな状況なら無理矢理にでも距離を埋め例えちゃんとした本物じゃなくても八助さんに少しでもお返しをすべきなんだろう。
私は彼の声を遮るともう片方の手を彼の空いてる頬へ伸ばした。両手で顔を包み込むように挟む。
「だからこう言う事にします」
でも八助さんはすぐに離れた私の手を取った。そして今度はそんな私の手を自分の顔へ。掌に感じる頬の温もりと柔らかな肌。その感触は嬉しく心地好いはずなのに、何故か今は自分に嫌厭すら感じてしまう。いや、何故かじゃなくて理由は分かってる。
だからすぐにでも彼から手を離してしまいたかったがそれを許さぬと言うように私の手を彼の手が包み込んでいた。
「もし夕顔さんの手が穢れてたとしても、その手で触れる事で僕が同じように穢れてしまうとしても。僕は構いません。今もそうなように例え穢れたとして気付かないと思います。もし気付いたとしてもそれも僕はあなたの手を握り続け、触れられ、言葉を口にして欲しいと思はず。だって穢れるとしても僕にとってはそっちの方が考えるまでもなく価値があるから。でも夕顔さんにとって重要なのはそこじゃないって事は分かってます。だからどすればいいかを一緒に考えませんか? 例えば……もういっその事、目一杯触れて想いを口にして穢してしまうとか。そうしたらもう穢れるなんて心配しなくて済むしそれに、夕顔さんにこうやって触れられるなら言葉を聞けるなら別にいくら穢れようと構いません。あとは……。気にならなくなるまで何度もっていうのは流石に力技過ぎますよね。んー。なら他には……」
八助さんはまるで自分事のように考えては案を口にしてくれていた。でも私は(彼には悪いと思うけど)その案をちゃんと聞けてなくてただそうやって私の事を一途に想ってくれている彼の姿を見つめていた。突然、あんな手紙を書いたのにも関わらずこうやって会いに来てくれて私の問題を一緒にどうにかしようとしてくれてる。その姿に恋い慕う気持ちが胸を強く打つのを感じた。私は少しばかり恍惚としていたかもしれない。
そんな気持ちを感じながら私は、そんな歩みより寄り添おうとしてくれる八助さんに比べて自分はどうなんだという疑心も感じていた。私は彼のように傍に居る為に何かしようとしているのだろうか? 自分の問題を解決する術すら見つけられず、自ら自分の気持ちを抑え込んではその辛さに悶え最後まで彼に伝える事が出来なかった。彼から伝えられる喜びを教えてもらったのにも関わらず私はそれをほとんど与えられてない。しかも原因は私の我が儘であり心の弱さ。なのに彼は未だ私に嫌気を差すどころか私の分まで歩み寄ろうとしてくれてる。
「――八助はん」
こんな状況なら無理矢理にでも距離を埋め例えちゃんとした本物じゃなくても八助さんに少しでもお返しをすべきなんだろう。
私は彼の声を遮るともう片方の手を彼の空いてる頬へ伸ばした。両手で顔を包み込むように挟む。
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