48 / 51
序章:現代桃太郎
【弐拾捌】どろぼう猫の食あたり22
しおりを挟む
アランは銃を桃に向けたまま、いつでも撃てるよう引き金に指を添えながら話し始める。
「悪いな。新たな依頼が入った。依頼主はそれを欲している」
「だから渡せと?」
「別に渡さなくてもいい。その場合はお前の死体から拾うだけだ。それが嫌ならそれを置いて下がれ」
桃はすぐには従わずどうするのがベストかを考えた。
だがあまり時間は掛けず、すぐに今のところは従うと判断を下す。
「分かりました」
そう答えると緩慢と床に石を置き両手を上げながらマノンの一歩手前まで下がっていき少し重なるように立ち止まった。これで宝石との距離は六mほど。
「お前も手を挙げてろ」
銃を向けられそう言われたマノンは渋々といった感じで両手を上げた。それを確認したアランは桃らに注意を払いながら宝石に近づいていく。
そして宝石の前で足を止めたアランはしゃがみ手を伸ばした。宝石を拾い上げると確認するために一瞬アランの視線が落ちる。
その瞬間――マノンは桃の背にあった銃を一丁抜いた。それを触覚で感じ取った桃も少し遅れもう一丁を抜く。二つの銃口はアランをしっかりと捉えていた。
「やはりそれは返してもらいます」
マノンが銃を抜いたことに僅かに遅れて気が付いたアランは瞬時に立ち上がると片足を一歩下げ体を横にしながら依然と銃を向け続けた。
そして隠すように遠ざけた宝石をポケットへ入れる。
「欲しければご自分で狛井組から盗み出してください」
どうするか考えていたのかアランが黙っている間、二丁の銃と一丁の銃は一触即発の雰囲気の中で睨み合っていた。
「――全く。上手くいかない時はとことん上手くいかないものだ」
沈黙の末、諦めたようにそう言ったアランは銃を下げポケットに入れていた手を出した。そしてそのポケットから取り出したモノを桃へと投げる。
「これでいいだろ。俺は次の仕事も控えている」
そう言いながら下げた銃でさりげなく意識を失っている青と赤モヒカンの頭を撃ち抜く。
そして言い終えると踵を返し入ってきた入り口へ歩き出した。だが――。
「おい! 本物返せよ」
マノンのその言葉に足を止めたアランは半分だけ振り返ると、体は横にしたまま顔を二人の方に向ける。まだ銃を構えた桃とその横に並んだマノンの手にはアランが投げた宝石が握られていたが、それをただの石ころのように投げ捨てた。
「こんな偽物で騙せるわけねーだろ。それに動きも怪し過ぎなんだよ」
「さすがはヴシュテイン一家というところか。それもその道のプロ、それもかなりの腕利きが作った代物なんだがな」
「では今度は本物を返してもらいましょうか」
アランはもう一度ポケットに手を入れ、次は桃らが求めている宝石を取り出すと投げて渡した。それを受け取ったマノンはその宝石を色々な角度から確認する。
「どうですか?」
「よし。本物だ」
「もういいか? 次の仕事がある」
「えぇどうぞ」
やっと銃を下げた桃に背を向けアランは部屋から出て行った。
「悪いな。新たな依頼が入った。依頼主はそれを欲している」
「だから渡せと?」
「別に渡さなくてもいい。その場合はお前の死体から拾うだけだ。それが嫌ならそれを置いて下がれ」
桃はすぐには従わずどうするのがベストかを考えた。
だがあまり時間は掛けず、すぐに今のところは従うと判断を下す。
「分かりました」
そう答えると緩慢と床に石を置き両手を上げながらマノンの一歩手前まで下がっていき少し重なるように立ち止まった。これで宝石との距離は六mほど。
「お前も手を挙げてろ」
銃を向けられそう言われたマノンは渋々といった感じで両手を上げた。それを確認したアランは桃らに注意を払いながら宝石に近づいていく。
そして宝石の前で足を止めたアランはしゃがみ手を伸ばした。宝石を拾い上げると確認するために一瞬アランの視線が落ちる。
その瞬間――マノンは桃の背にあった銃を一丁抜いた。それを触覚で感じ取った桃も少し遅れもう一丁を抜く。二つの銃口はアランをしっかりと捉えていた。
「やはりそれは返してもらいます」
マノンが銃を抜いたことに僅かに遅れて気が付いたアランは瞬時に立ち上がると片足を一歩下げ体を横にしながら依然と銃を向け続けた。
そして隠すように遠ざけた宝石をポケットへ入れる。
「欲しければご自分で狛井組から盗み出してください」
どうするか考えていたのかアランが黙っている間、二丁の銃と一丁の銃は一触即発の雰囲気の中で睨み合っていた。
「――全く。上手くいかない時はとことん上手くいかないものだ」
沈黙の末、諦めたようにそう言ったアランは銃を下げポケットに入れていた手を出した。そしてそのポケットから取り出したモノを桃へと投げる。
「これでいいだろ。俺は次の仕事も控えている」
そう言いながら下げた銃でさりげなく意識を失っている青と赤モヒカンの頭を撃ち抜く。
そして言い終えると踵を返し入ってきた入り口へ歩き出した。だが――。
「おい! 本物返せよ」
マノンのその言葉に足を止めたアランは半分だけ振り返ると、体は横にしたまま顔を二人の方に向ける。まだ銃を構えた桃とその横に並んだマノンの手にはアランが投げた宝石が握られていたが、それをただの石ころのように投げ捨てた。
「こんな偽物で騙せるわけねーだろ。それに動きも怪し過ぎなんだよ」
「さすがはヴシュテイン一家というところか。それもその道のプロ、それもかなりの腕利きが作った代物なんだがな」
「では今度は本物を返してもらいましょうか」
アランはもう一度ポケットに手を入れ、次は桃らが求めている宝石を取り出すと投げて渡した。それを受け取ったマノンはその宝石を色々な角度から確認する。
「どうですか?」
「よし。本物だ」
「もういいか? 次の仕事がある」
「えぇどうぞ」
やっと銃を下げた桃に背を向けアランは部屋から出て行った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。



私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる