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序章:現代桃太郎
【拾玖】AOF15
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「もうあなたの勝機はありませんよ。投降をオススメします」
「もう金など要らん。お前らとあの小娘の首を送りつけ俺らに盾突いたことを後悔させてやる。その後、奴も八つ裂きにしてやる」
ミテュロスが憤怒の炎にその身を焼かれ聞く耳を持っていない事は、誰が見ても明らか。当然、桃も降伏への期待は惜しみながらも捨て去った。
そして仲間を二人もやられ仇を取るという強い意志なのか、均衡していた鍔迫り合いから徐々に押され始める桃。
だが押し込まれ体がのけ反り始めた段階で彼はひょいっと、すり抜けるように横へ跳び込みその場から離れた。着地後、片膝を着き既に視線はミテュロスへと警戒を払っている。
一方、緩慢な動作で桃を見遣るミテュロスは、床に食い込んだ両刃大斧をじっくりと抜いて構た。それに答えるように立ち上がり刀を構える桃。
数秒の沈黙の中、対峙する双方はただ互いを睨み合ったまま。
そしてその時、息でも合わすかのように二人は同時に動き出した。鏡写しのようにシンクロしながら斜線を引くように振り下ろされた刀と両刃大斧が互いの一撃を受け止める。
それが開戦の合図となりそこから二人は火花を散らした。激しい攻防は一息たりとも休むことなく繰り広げられたが、それによって一つまた一つと傷を増やしていったのはミテュロス。
だが、どれだけ傷を負おうが斬り合いの手が緩む事はなかったが、終わりが近いことを桃は感じていた。
そして桃の刀は斬り合いの最中、ミテュロスの左腕を斬り落とす。半分にされた二の腕から血液を垂らし、少し顔を歪めながらもミテュロスは片手で両刃大斧を振り続け戦い続けた。
しかし決着は既に秒読み。桃は残ったもう片方の腕を斬り捨てると成す術を無くしたミテュロスの胴体を斬った。深く赤い線が肩から腰に掛け斜に刻まれる。両腕と最後の斬り傷、無数の小さな傷から我先にと溢れ出る血液と共に膝から崩れ落ちたミテュロスはそのまま前のめりに倒れていった。
「ふぅ。どうしていつもこうなってしまうんでしょうか」
毎回、穏便に済ませたいと思いつつも結局は実力行使となってしまうことに溜息が零れる。
戦いが終わり刀から滴る血を払う前に一息ついていた桃だったが……。
「桃さんっ! 危ない!」
突如、焦燥感に駆られた蘭玲の大声が左側から聞こえたかと思うと、体ごとそちらを向いた桃の眼前にはヌンジェの姿が。飛ばされ自由を失ったその体が今まさに自分へとぶつかろうとしていたのだ。
そんな状況にも関わらず落ち着き払った桃は、殆ど反射的にヌンジェを一刀両断。切り分けられた体は左右を通過していった。
「ごめんなさい。桃さんがいるって分からなくて……」
声だけでなく近づいて来た蘭玲は申し訳ないという謝罪の表情を浮かべていた。
だが桃は全く気にしておらず、むしろ彼女の無事を安堵する気持ちの方が強かった。
「大丈夫ですよ」
そう言いながら微笑みそして蘭玲の頬に付いた血を指で拭う。
「そちらは片付きましたか?」
「はい」
まだまだ元気といった感じに返事をした蘭玲の後方、壁際には瓦礫と血にまみれ倒れる四目の姿があった。
「ケガはありませんか?」
「大丈夫です。桃さんも大丈夫そうですね」
「えぇ。問題ありませんよ。ではとりあえずはひと段落ですね」
溜息をつくように息を吐きながら刀の血を払い鞘に納める桃。
だが戦いは終わり一息ついてはいたものの、依然と警戒心は張り巡らせたまま何が起ころうと対処できるようにしていた。
「二人共無事で良かったですけど、手がかりが無くなっちゃいましたね。どうしますか?」
「そうですね。ですが口ぶりからこのビルにいる可能性は高そうです」
「でもこの階までは確認したけどいませんでしたよね? ――もしかして隠し部屋でもあるとか。あとは上の階?」
「んー。今にも崩れそうなほどオンボロなこのビルに隠し部屋ですか。無いとは言えませんがどうでしょうね」
顎に手を添えながら考えていた桃を蘭玲が叩いて呼ぶ。
「どうしました?」
「あそこじゃないですか?」
蘭玲の指差す方向(入ってきた入り口とは反対側)には錆びついたドアが一枚。
「意外と近くにありましたね。ありがとうございます。蘭玲」
そして二人はそのドアへ近づくがそこには鍵がかかっていた。
「さて一体誰が鍵を持っているのでしょうか」
後ろを振り返り五体の御伽を順に眺めながら顎に手を添える桃。考えながらも血塗れの中から探し出すという作業に彼は若干嫌気が差していた。
「ちょっといいですか」
すると蘭玲はそう言いながら少し横へズレるように手を振った。言われるがまま少しドアから離れると、蘭玲はドアの正面に立ち片足を上げる。
そして体重を乗せながら足を突き出すと鍵周りのコンクリートごとドアを蹴破った。
「このような廃ビルで律義に鍵を開ける必要もありませんか」
「そうですよ。というか内装的にはドアが無い方がいいですって」
「もはや内装がどうこう以前の問題だと思いますがね」
そんなことを言いながら桃は早速、ドアがあった場所を通り中へ。
そこは長方形型の小さな個室となっており、その奥の隅では小さな女の子がブランケットの上に体育座りで更に体を小さくしていた。
「もう金など要らん。お前らとあの小娘の首を送りつけ俺らに盾突いたことを後悔させてやる。その後、奴も八つ裂きにしてやる」
ミテュロスが憤怒の炎にその身を焼かれ聞く耳を持っていない事は、誰が見ても明らか。当然、桃も降伏への期待は惜しみながらも捨て去った。
そして仲間を二人もやられ仇を取るという強い意志なのか、均衡していた鍔迫り合いから徐々に押され始める桃。
だが押し込まれ体がのけ反り始めた段階で彼はひょいっと、すり抜けるように横へ跳び込みその場から離れた。着地後、片膝を着き既に視線はミテュロスへと警戒を払っている。
一方、緩慢な動作で桃を見遣るミテュロスは、床に食い込んだ両刃大斧をじっくりと抜いて構た。それに答えるように立ち上がり刀を構える桃。
数秒の沈黙の中、対峙する双方はただ互いを睨み合ったまま。
そしてその時、息でも合わすかのように二人は同時に動き出した。鏡写しのようにシンクロしながら斜線を引くように振り下ろされた刀と両刃大斧が互いの一撃を受け止める。
それが開戦の合図となりそこから二人は火花を散らした。激しい攻防は一息たりとも休むことなく繰り広げられたが、それによって一つまた一つと傷を増やしていったのはミテュロス。
だが、どれだけ傷を負おうが斬り合いの手が緩む事はなかったが、終わりが近いことを桃は感じていた。
そして桃の刀は斬り合いの最中、ミテュロスの左腕を斬り落とす。半分にされた二の腕から血液を垂らし、少し顔を歪めながらもミテュロスは片手で両刃大斧を振り続け戦い続けた。
しかし決着は既に秒読み。桃は残ったもう片方の腕を斬り捨てると成す術を無くしたミテュロスの胴体を斬った。深く赤い線が肩から腰に掛け斜に刻まれる。両腕と最後の斬り傷、無数の小さな傷から我先にと溢れ出る血液と共に膝から崩れ落ちたミテュロスはそのまま前のめりに倒れていった。
「ふぅ。どうしていつもこうなってしまうんでしょうか」
毎回、穏便に済ませたいと思いつつも結局は実力行使となってしまうことに溜息が零れる。
戦いが終わり刀から滴る血を払う前に一息ついていた桃だったが……。
「桃さんっ! 危ない!」
突如、焦燥感に駆られた蘭玲の大声が左側から聞こえたかと思うと、体ごとそちらを向いた桃の眼前にはヌンジェの姿が。飛ばされ自由を失ったその体が今まさに自分へとぶつかろうとしていたのだ。
そんな状況にも関わらず落ち着き払った桃は、殆ど反射的にヌンジェを一刀両断。切り分けられた体は左右を通過していった。
「ごめんなさい。桃さんがいるって分からなくて……」
声だけでなく近づいて来た蘭玲は申し訳ないという謝罪の表情を浮かべていた。
だが桃は全く気にしておらず、むしろ彼女の無事を安堵する気持ちの方が強かった。
「大丈夫ですよ」
そう言いながら微笑みそして蘭玲の頬に付いた血を指で拭う。
「そちらは片付きましたか?」
「はい」
まだまだ元気といった感じに返事をした蘭玲の後方、壁際には瓦礫と血にまみれ倒れる四目の姿があった。
「ケガはありませんか?」
「大丈夫です。桃さんも大丈夫そうですね」
「えぇ。問題ありませんよ。ではとりあえずはひと段落ですね」
溜息をつくように息を吐きながら刀の血を払い鞘に納める桃。
だが戦いは終わり一息ついてはいたものの、依然と警戒心は張り巡らせたまま何が起ころうと対処できるようにしていた。
「二人共無事で良かったですけど、手がかりが無くなっちゃいましたね。どうしますか?」
「そうですね。ですが口ぶりからこのビルにいる可能性は高そうです」
「でもこの階までは確認したけどいませんでしたよね? ――もしかして隠し部屋でもあるとか。あとは上の階?」
「んー。今にも崩れそうなほどオンボロなこのビルに隠し部屋ですか。無いとは言えませんがどうでしょうね」
顎に手を添えながら考えていた桃を蘭玲が叩いて呼ぶ。
「どうしました?」
「あそこじゃないですか?」
蘭玲の指差す方向(入ってきた入り口とは反対側)には錆びついたドアが一枚。
「意外と近くにありましたね。ありがとうございます。蘭玲」
そして二人はそのドアへ近づくがそこには鍵がかかっていた。
「さて一体誰が鍵を持っているのでしょうか」
後ろを振り返り五体の御伽を順に眺めながら顎に手を添える桃。考えながらも血塗れの中から探し出すという作業に彼は若干嫌気が差していた。
「ちょっといいですか」
すると蘭玲はそう言いながら少し横へズレるように手を振った。言われるがまま少しドアから離れると、蘭玲はドアの正面に立ち片足を上げる。
そして体重を乗せながら足を突き出すと鍵周りのコンクリートごとドアを蹴破った。
「このような廃ビルで律義に鍵を開ける必要もありませんか」
「そうですよ。というか内装的にはドアが無い方がいいですって」
「もはや内装がどうこう以前の問題だと思いますがね」
そんなことを言いながら桃は早速、ドアがあった場所を通り中へ。
そこは長方形型の小さな個室となっており、その奥の隅では小さな女の子がブランケットの上に体育座りで更に体を小さくしていた。
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