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序章:現代桃太郎
【肆】AOF2
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「お騒がせしました」
「いえ。西城先輩が言っていた通り賑やかですね」
そう言ってお世辞とは無縁な微笑みを浮かべる高見。
「私にとってはこの騒がしさもいつの間にか日常となってしまいましたがね」
そう桃は笑みを返す。
「足止めして申し訳ありません。どうぞ」
そして高見は三人掛けソファに腰を下ろし、桃はテーブルを挟み並んだ二つの一人用ソファの内の一つに腰を下ろした。
「何か飲まれますか? コーヒー、紅茶、緑茶、ココア。その他にもある程度物ならありますが」
「ではコーヒーでお願いします」
「かしこまりました」
それに対し返事をしたのは桃ではなく傍に来ていた陽咲だった。
「それで今回はどのようなご用件で?」
「はい。今回はEOCBからの依頼でして……」
そう言いながら高見は掌をテーブルへと着けた。
すると彼のスマホレットが反応し、テーブルにフォルダーアイコンがいくつか表示される。テーブル自体がモニターとしての役割を果たしスマホレットからフォルダーを読み込んだのだ。
それを確認すると高見は手を離し、右手でひとつのフォルダーを桃の方へスライドさせた。フォルダーはテーブルの中を滑っていき桃の元までいくと自動で開封。桃がテーブルの縁を摘まみ手前に引くと一部分だけが切り離されタブレットとなった。
そのタブレットをそのまま持ち上げると渡されフォルダーの中を見始める桃。
「概要など全てそこに書かれているのですが、今回の依頼はある誘拐事件の解決です」
「お待たせしました」
コーヒーを運んできた陽咲は高見の前に湯気と共に香りを漂わせるカップを置いた。
「ありがとうございます」
高見は座りながら会釈と共にお礼を言うとカップを手に取り一口。その間に桃は資料へ目を通していた。
「この事件は一般の警察に出された捜索願から始まったのですが、調査を進めていくにつれある場所が浮かび上がったため我々へと回ってきました」
高見の説明に桃は一度顔を上げた。
「エリアL(リマ)ですか」
「はい。まだ確定ではありませんがその可能性は高いようです」
心で溜息を零した一瞬の間を空けながらも桃は質問を投げかける。
「深さはどの程度でしょう?」
「これはまだ憶測ではありますがC4だと思われます」
「一番外側ですか」
安堵と共に返事をすると、桃は残りの部分へ目を通していく。
そしてある程度目を通したところで顔を上げた。
「では依頼は、被害者の発見と保護ということでよろしいですか?」
「そうです」
「了解しました。では早速取り掛からせていただきます」
「よろしくお願いします。では私は仕事に戻らなければいけないので」
高見が立ち上がると桃もタブレットを持ちながら立ち上がり後に続いてドアへと向かった。
「何かあればご連絡ください。それとC三より深くなる際、一度ご連絡頂ければこちらももしもの場合に備えておきますので」
「はい。では西城さんによろしくお伝えください」
「分かりました。ではこれで」
最後に丁寧なお辞儀をした高見はAOFを後にした。
そしてドアを閉めた桃は自分のデスクへ。タブレットを置き椅子に腰を下ろした。
「さて。――今日はやる事が二つあるので同時進行しましょうか」
「ふぁれ? ふぉかひはひはあふほか?」
「飲み込んでから離してください」
言われた通りリオはまず口の中のバーガーをお茶で流し込む。
「さっきの依頼の他に何かあるのか?」
「依頼というわけではないのですが、大家さんの猫がいなくなってしまったらしいのでその捜索です。大家さんには色々とお世話になっているので」
桃は話しながらタブレットにスマホレット側の手を乗せた。
「とにかく、今回は二手に分かれます。EOCBの依頼ですので私は事件の方を担当しますがあなたたちはどうしますか?」
その問いかけに蘭玲が真っ先に手を挙げた。
「アタシは桃さんと一緒が良いです!」
「では私と蘭玲で事件の方を、リオと陽咲で猫の捜索をお願いします」
「分かりました」
「りょーかい」
異議は無くそれぞれが返事を返した。
「何かありましたら連絡を。それと食べたら出発しますよ蘭玲」
「はーい」
蘭玲は返事をすると大きな口を開けてバーガーを食べた。
「いえ。西城先輩が言っていた通り賑やかですね」
そう言ってお世辞とは無縁な微笑みを浮かべる高見。
「私にとってはこの騒がしさもいつの間にか日常となってしまいましたがね」
そう桃は笑みを返す。
「足止めして申し訳ありません。どうぞ」
そして高見は三人掛けソファに腰を下ろし、桃はテーブルを挟み並んだ二つの一人用ソファの内の一つに腰を下ろした。
「何か飲まれますか? コーヒー、紅茶、緑茶、ココア。その他にもある程度物ならありますが」
「ではコーヒーでお願いします」
「かしこまりました」
それに対し返事をしたのは桃ではなく傍に来ていた陽咲だった。
「それで今回はどのようなご用件で?」
「はい。今回はEOCBからの依頼でして……」
そう言いながら高見は掌をテーブルへと着けた。
すると彼のスマホレットが反応し、テーブルにフォルダーアイコンがいくつか表示される。テーブル自体がモニターとしての役割を果たしスマホレットからフォルダーを読み込んだのだ。
それを確認すると高見は手を離し、右手でひとつのフォルダーを桃の方へスライドさせた。フォルダーはテーブルの中を滑っていき桃の元までいくと自動で開封。桃がテーブルの縁を摘まみ手前に引くと一部分だけが切り離されタブレットとなった。
そのタブレットをそのまま持ち上げると渡されフォルダーの中を見始める桃。
「概要など全てそこに書かれているのですが、今回の依頼はある誘拐事件の解決です」
「お待たせしました」
コーヒーを運んできた陽咲は高見の前に湯気と共に香りを漂わせるカップを置いた。
「ありがとうございます」
高見は座りながら会釈と共にお礼を言うとカップを手に取り一口。その間に桃は資料へ目を通していた。
「この事件は一般の警察に出された捜索願から始まったのですが、調査を進めていくにつれある場所が浮かび上がったため我々へと回ってきました」
高見の説明に桃は一度顔を上げた。
「エリアL(リマ)ですか」
「はい。まだ確定ではありませんがその可能性は高いようです」
心で溜息を零した一瞬の間を空けながらも桃は質問を投げかける。
「深さはどの程度でしょう?」
「これはまだ憶測ではありますがC4だと思われます」
「一番外側ですか」
安堵と共に返事をすると、桃は残りの部分へ目を通していく。
そしてある程度目を通したところで顔を上げた。
「では依頼は、被害者の発見と保護ということでよろしいですか?」
「そうです」
「了解しました。では早速取り掛からせていただきます」
「よろしくお願いします。では私は仕事に戻らなければいけないので」
高見が立ち上がると桃もタブレットを持ちながら立ち上がり後に続いてドアへと向かった。
「何かあればご連絡ください。それとC三より深くなる際、一度ご連絡頂ければこちらももしもの場合に備えておきますので」
「はい。では西城さんによろしくお伝えください」
「分かりました。ではこれで」
最後に丁寧なお辞儀をした高見はAOFを後にした。
そしてドアを閉めた桃は自分のデスクへ。タブレットを置き椅子に腰を下ろした。
「さて。――今日はやる事が二つあるので同時進行しましょうか」
「ふぁれ? ふぉかひはひはあふほか?」
「飲み込んでから離してください」
言われた通りリオはまず口の中のバーガーをお茶で流し込む。
「さっきの依頼の他に何かあるのか?」
「依頼というわけではないのですが、大家さんの猫がいなくなってしまったらしいのでその捜索です。大家さんには色々とお世話になっているので」
桃は話しながらタブレットにスマホレット側の手を乗せた。
「とにかく、今回は二手に分かれます。EOCBの依頼ですので私は事件の方を担当しますがあなたたちはどうしますか?」
その問いかけに蘭玲が真っ先に手を挙げた。
「アタシは桃さんと一緒が良いです!」
「では私と蘭玲で事件の方を、リオと陽咲で猫の捜索をお願いします」
「分かりました」
「りょーかい」
異議は無くそれぞれが返事を返した。
「何かありましたら連絡を。それと食べたら出発しますよ蘭玲」
「はーい」
蘭玲は返事をすると大きな口を開けてバーガーを食べた。
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