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未確認飛行物体19
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一方でマルクも早速客室に戻り仲間達にこのことを伝えようとしたが、そんな彼をヴァレンスの声が止めた。
「マルクよ」
「はい。何でしょう?」
「まずはイザニエルに話を聞くとよいだろう。天来の書が古い書物であるならば彼が何か知っているかもしれん」
「分かりました」
「頼んだぞ」
「はい」
そしてマルクはまず真っすぐ客室に戻ると皆に次なる目的を伝えた。
「天来の書ですか? 聞いたことないですね」
「アタシもないわね」
「俺も無いな」
「同じく」
多少の期待もあったがその期待に沿うことはなく天来の書について知っている者はいなかった。
「もしかしたらと思ったけどやっぱりみんな知らないかぁ。でもとりあえずイザニエルさんに話しを聞いてみることにするよ。それからどうするか考えよう」
「では私もご一緒していいでしょうか? イザニエル様と言えば大預言者ノーラダース様の預言書を受け継ぐ優秀な予言者様です! 一度お目にかかってみたかったんですよ」
そう語るフローリーの表情は煌々としていた。
「予言なんて嘘くさいけどね」
だがアリアはフローリーとは裏腹に少し冷めた様子。
「そんな事ありませんよ。ノーラダース様といえば魔術師としてもとても優秀だったと聞きます。そんなお方の数々の予言が見事的中したとなれば私も知らない未知の魔術を用いたに違いありません! そんなお方の予言書を受け継ぐ言わば直系のイザニエル様もまた優秀な魔術師に違いありません。いえ、そうでないとしても是非お会いしてみたいものです!」
「随分と尊敬しているみたいだね。僕は全然構わないしそれじゃあ早速行こうか」
「はい!」
そしてイザニエルに会いに二人は預言者の部屋へと向かった。
ドアをノックし返ってきた返事に中へ入ると、そこには顔の上半分を覆うマスクを付けローブのような服を身に纏った男が一人。
「やぁ。勇者マルク・ミルケイ君とフローレンス・クレラテオ君。いや、君は皆のようにフローリーと呼んだ方が良いかな?」
すると未来を言い当てる予言者たる由縁を見せつけるように自己紹介をする前に二人の名前を軽々とした口調で言い当ててみせたイザニエル。
だが勇者一行ともなればその名は各地に広がり、実際そこまで驚くべきことではなかった。
「突然の訪問失礼いたします」
「いや、いーよ。それにしてもこのタイミングで僕の元を訪れたということは天来の書についてかな?」
先程は知れ渡った勇者とその一行の回復師を務めるフローリーの名前を言い当ているという他の者にも出来そうな事だったが、これは違った。四ヶ国の王でさえ魔王の口からその単語が出て来るまで知らなかった天来の書の存在を、マルクが口にする前に言い当てたそれはまるで未来を見通していると言っているようだった。
「――はい……。その天来の書を探そうと思っているのですが、どこにあるのかご存じなのでしょうか?」
「いや、知らないよ。残念ながらね」
しかしこちらがその名を出す前に彼の口から天来の書が出てきたことで期待を膨らましてしまっただけに、その呆気ない返事に少し落胆的な気持ちになったマルク。
「そうですか」
「だけど!」
だがイザニエルは落ち込むにはまだ早いと言いたげな声を出す。
「知ってるかもしれない人を知ってるよ」
近そうで遠そうな人物ではあったが、今のマルクはどんな些細な手掛かりでさえ嬉しい情報。
「その方とは?」
「東の森に住んでいる一人好きな魔女。ちょっと厳しくて口が悪いところもあるけど良い人だよ」
「東の森ですか?」
「場所を口頭で説明するのはちょっと難しいけどその森の奥に彼女は住んでる。彼女なら何か知ってるかもしれない。――確証は無いけど」
最後に念を押すようにマルクをしっかりと指差し彼はそう付け加えた。
「分かりました。ありがとうございます」
「森に入ったらただただ真っすぐ進むといいよ。そうすればいずれ見つけてもらえる。それともし彼女に会えたら僕がよろしく言ってたって伝えといてよ」
「分かりました」
「あの! イザニエル様! 一つご質問をしてもよろしいでしょうか?」
すると本題が終わるのを見計らっていたのか後ろに立っていたフローリーがマルクの横に並ぶと輝かせた表情をイザニエルへと向けた。
「あぁもちろんだとも。だけど僕がなぜこんなにも素敵かってのを教えてあげるには時間が足りないから残念だけど諦めてくれ」
「いえ、それも素敵な質問ですが予言者様は幅広く魔術にも精通していると聞きます。イザニエル様も噂通りそうなのでしょうか?」
イザニエルの言葉を悪気はないのだろうフローリーはスルリと躱して見せた。
だが彼自身にもそれを気にしている様子は無い。
「その噂が何なのかは分からないけど、まぁそれなりに勉強はしてきたしそこら辺の魔術師並みには扱えるよ」
「もしかしてあのモルアーツで学びを!?」
「いや僕は並行して他の勉強もあったからね専属の家庭教師が教えてくれたんだ」
……
それからイザニエルと少し話をしたフローリーと共にマルクは客室へ。戻る間も終始フローリーは満足気な笑みを浮かべ続けていた。
「マルクよ」
「はい。何でしょう?」
「まずはイザニエルに話を聞くとよいだろう。天来の書が古い書物であるならば彼が何か知っているかもしれん」
「分かりました」
「頼んだぞ」
「はい」
そしてマルクはまず真っすぐ客室に戻ると皆に次なる目的を伝えた。
「天来の書ですか? 聞いたことないですね」
「アタシもないわね」
「俺も無いな」
「同じく」
多少の期待もあったがその期待に沿うことはなく天来の書について知っている者はいなかった。
「もしかしたらと思ったけどやっぱりみんな知らないかぁ。でもとりあえずイザニエルさんに話しを聞いてみることにするよ。それからどうするか考えよう」
「では私もご一緒していいでしょうか? イザニエル様と言えば大預言者ノーラダース様の預言書を受け継ぐ優秀な予言者様です! 一度お目にかかってみたかったんですよ」
そう語るフローリーの表情は煌々としていた。
「予言なんて嘘くさいけどね」
だがアリアはフローリーとは裏腹に少し冷めた様子。
「そんな事ありませんよ。ノーラダース様といえば魔術師としてもとても優秀だったと聞きます。そんなお方の数々の予言が見事的中したとなれば私も知らない未知の魔術を用いたに違いありません! そんなお方の予言書を受け継ぐ言わば直系のイザニエル様もまた優秀な魔術師に違いありません。いえ、そうでないとしても是非お会いしてみたいものです!」
「随分と尊敬しているみたいだね。僕は全然構わないしそれじゃあ早速行こうか」
「はい!」
そしてイザニエルに会いに二人は預言者の部屋へと向かった。
ドアをノックし返ってきた返事に中へ入ると、そこには顔の上半分を覆うマスクを付けローブのような服を身に纏った男が一人。
「やぁ。勇者マルク・ミルケイ君とフローレンス・クレラテオ君。いや、君は皆のようにフローリーと呼んだ方が良いかな?」
すると未来を言い当てる予言者たる由縁を見せつけるように自己紹介をする前に二人の名前を軽々とした口調で言い当ててみせたイザニエル。
だが勇者一行ともなればその名は各地に広がり、実際そこまで驚くべきことではなかった。
「突然の訪問失礼いたします」
「いや、いーよ。それにしてもこのタイミングで僕の元を訪れたということは天来の書についてかな?」
先程は知れ渡った勇者とその一行の回復師を務めるフローリーの名前を言い当ているという他の者にも出来そうな事だったが、これは違った。四ヶ国の王でさえ魔王の口からその単語が出て来るまで知らなかった天来の書の存在を、マルクが口にする前に言い当てたそれはまるで未来を見通していると言っているようだった。
「――はい……。その天来の書を探そうと思っているのですが、どこにあるのかご存じなのでしょうか?」
「いや、知らないよ。残念ながらね」
しかしこちらがその名を出す前に彼の口から天来の書が出てきたことで期待を膨らましてしまっただけに、その呆気ない返事に少し落胆的な気持ちになったマルク。
「そうですか」
「だけど!」
だがイザニエルは落ち込むにはまだ早いと言いたげな声を出す。
「知ってるかもしれない人を知ってるよ」
近そうで遠そうな人物ではあったが、今のマルクはどんな些細な手掛かりでさえ嬉しい情報。
「その方とは?」
「東の森に住んでいる一人好きな魔女。ちょっと厳しくて口が悪いところもあるけど良い人だよ」
「東の森ですか?」
「場所を口頭で説明するのはちょっと難しいけどその森の奥に彼女は住んでる。彼女なら何か知ってるかもしれない。――確証は無いけど」
最後に念を押すようにマルクをしっかりと指差し彼はそう付け加えた。
「分かりました。ありがとうございます」
「森に入ったらただただ真っすぐ進むといいよ。そうすればいずれ見つけてもらえる。それともし彼女に会えたら僕がよろしく言ってたって伝えといてよ」
「分かりました」
「あの! イザニエル様! 一つご質問をしてもよろしいでしょうか?」
すると本題が終わるのを見計らっていたのか後ろに立っていたフローリーがマルクの横に並ぶと輝かせた表情をイザニエルへと向けた。
「あぁもちろんだとも。だけど僕がなぜこんなにも素敵かってのを教えてあげるには時間が足りないから残念だけど諦めてくれ」
「いえ、それも素敵な質問ですが予言者様は幅広く魔術にも精通していると聞きます。イザニエル様も噂通りそうなのでしょうか?」
イザニエルの言葉を悪気はないのだろうフローリーはスルリと躱して見せた。
だが彼自身にもそれを気にしている様子は無い。
「その噂が何なのかは分からないけど、まぁそれなりに勉強はしてきたしそこら辺の魔術師並みには扱えるよ」
「もしかしてあのモルアーツで学びを!?」
「いや僕は並行して他の勉強もあったからね専属の家庭教師が教えてくれたんだ」
……
それからイザニエルと少し話をしたフローリーと共にマルクは客室へ。戻る間も終始フローリーは満足気な笑みを浮かべ続けていた。
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