エイリアンの侵略に人類は魔王と手を組んだ

佐武ろく

文字の大きさ
上 下
14 / 21

未確認飛行物体13

しおりを挟む
「意外と綺麗だったよね」

 最上階に上がり魔王の間までの真っすぐに伸びたレッドカーペットを歩いて
 いるとふとアメリアが呟いた。その言葉にマルクは共感を覚え立ち止まるとアメリアの方を振り返る。

「それは僕も思いました」
「何が言いたい?」
「僕たちが魔王城から逃げる際、魔物とアレから下りてきたと思われる人型が至る所で戦っていたのでもっとその痕跡が残っているかと思ってました」
「ということは制圧後、片付けたということか」
「でないとここまで綺麗なのはおかしいです」
「ここまで綺麗にしたということはここを拠点にしようとしている可能性は高い。だがだとしたら見張りが一人も居ないのは気になる」
「もしかしたら私達ここに入って来た時から監視されてたりして」

 アメリアは冗談交じりといった感じで言ったようだが彼女の方を向いたアーサーはそう思ってないようだ。

「気は抜くな」

 そう一言言うと再び足を進め始める。

「魔王の間を確認したら一度退く」

 そして魔王の間までの残りの道を進んでいくとそこではまるで訪れた者に威厳を知らしめるかのような両開きドアが三人を待ち構えていた。そのドアの前で立ち止まるとアーサーがアメリアの顔を見て一度頷く。彼女はドアの前まで行き正面入り口の時のように魔杖を翳した。

「待ち伏せは居ないかもしれないですけど、魔術で姿を隠してる可能性もあるので確実に安全とは言えないですね」

 振り返ったアメリアはそう報告し二人の後ろに戻った。
 アメリアと入れ替わりドアの前で並んだアーサーとマルクは同時にドアへ片手を伸ばす。

「開けるぞ」

 アーサーの確認にマルクは聖剣の柄を握り頷く。そして二人が手に力を入れるとそっとドアは開き始めた。緊張感漂う中ドアの開く音だけが鳴り響く。
 開かれたドアの向こう側に広がっていたのは、薄暗くも床があり戦闘のせの字も感じられない綺麗な状態の魔王の間。それはマルクが初めて足を踏み入れた時と同じ光景だった。
 ただ違う点があるとすれば依然壊れた天井から飛行物体が顔を覗かせ、玉座に魔王が座っていないということだけ。

「床が元通りになってる」

 死体や血痕を掃除することは数日あれば可能だろうが抜け落ちた床を元通りにするのは無理だろう。それ故、マルクは目の前の光景に目を疑う。
 そして誰も居ない静まり返った魔王の間へ警戒しながらもアーサーとマルク、そしてアメリアは足を踏み入れていった。
 少し足を進めたが敵らしき気配は依然と感じられなかった為、マルクは聖剣から手を離した。

「誰も居ないみたいですね」
「あれを見ろ」

 その声にアーサーを見ると魔王の間の奥、丁度玉座がある方を指差していた。彼の指に導かれるように視線をその先へ向けると、玉座の後ろには思わず目を見開いてしまうモノがあった。

「何だ……あれ」

 そこにあったのは巨人のものかと思わせる程に巨大な心臓のようなモノ。一定のリズムで脈打つように動き天井や床、壁に血管のようなモノを伸ばしている。それは薄暗さも相俟ってか不気味で不吉。

「うぇ。気持ち悪い」

 アメリアも一歩後ろで眉を顰めていた。
 するとそんなアメリアが急に表情を一変させアーサーとマルクの前に飛び出す。二人の視線を背に受けながらも魔杖を構え少し青みがかった透明なバリアを出現させた。
 その壁のようなバリアは現れた直後、何かを吸収するように防いだ。恐らく不意を突いた攻撃だろう。

「あそこからですよ」

 攻撃を防いだバリアが消えるとアメリアはそれが飛んできた方向を指差した。その指はあの心臓のようなモノを指していたが、指先はそのもう少し下の方へ向いている。
 そこにあったのは何者かが腰掛けた玉座。薄暗い所為でその姿はよく見えない。だが攻撃を受けた以上敵である可能性は高く三人は警戒を強めた。

「#$%#”&!)”%”」

 するとその何者かが発しているのか恐らく言語だと思われるが訳の分からない言葉が甲高い声で聞こえてきた。

「どうしましょう?」

 相手がこちらの言語を理解出来るのかは分からないが念の為、小声でアーサーに指示を仰ぐ。

「今回は敵の数や兵器などの確認だ。退くぞ」
「分かりました」

 アーサーの即決に二人は頷く。

「アメリア、あれに魔術攻撃を頼む。その間に一気にここを出るぞ」
「どれぐらいの強さで撃ちますか?」
「殺す気でいけ」
「了解でーっす」

 指示を聞いたアメリアは自分の前(床から少し浮かせた状態)で魔杖を構えるともう片方の手を魔石部分に翳した。それから小声で呪文のようなものを唱え始めると彼女の足元が円形で光り始め、ローブがはためきだす。更に呪文を唱えていくと彼女の上空には巨大な円形の魔法陣が出現。その魔法陣は玉座に座る何者かに向け弓を引くように引っ張られ円錐へと形を変えた。
 そしてアメリアが魔杖を両手で握り尖端部分を軽く叩くように床に着けると円錐から光の槍が発射。目で終えぬ速度で光槍が放たれるのと同時に三人は出口へと走り出した。
 直後、背後から光槍の着弾を知らせる破壊音が爆音で響き渡る。その音を聞きながら走り続ける三人だったが、突如現れた人影がドアとの間に立ち塞がる。
 しかしアーサーは立ち止まることなくその人影へ一気に接近するとエクスカリバーを抜いた。そして無駄の一切ない熟練された動きでエクスカリバーは対象へと斬りかかる。
 だが鞘から抜かれたエクスカリバーの鋭い一閃は、立てられたたった一本の指で止められてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界VS宇宙人~召喚オタJK、チート無しスキル無しスマホ有りでUFOと戦うハメに~

寛村シイ夫
ファンタジー
アグレッシブ女子高生のヒマリが召喚された異世界では今まさに空飛ぶ円盤の襲来を受けていた! エルフや魔術師、オークにヴァンパイア等。ファイアーボールやドラゴンとUFOとの戦い。 異世界オールスターと共にヒマリは宇宙人を撃退できるか! - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 元気に笑えて泣けるお話です。ぜひ読んでやってください! お気に入り登録・感想もどうぞお気軽に! 挿絵は今後随時追加していきます。 【やや厚めの文庫本1冊分の長さです】

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...