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未確認飛行物体13
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「意外と綺麗だったよね」
最上階に上がり魔王の間までの真っすぐに伸びたレッドカーペットを歩いて
いるとふとアメリアが呟いた。その言葉にマルクは共感を覚え立ち止まるとアメリアの方を振り返る。
「それは僕も思いました」
「何が言いたい?」
「僕たちが魔王城から逃げる際、魔物とアレから下りてきたと思われる人型が至る所で戦っていたのでもっとその痕跡が残っているかと思ってました」
「ということは制圧後、片付けたということか」
「でないとここまで綺麗なのはおかしいです」
「ここまで綺麗にしたということはここを拠点にしようとしている可能性は高い。だがだとしたら見張りが一人も居ないのは気になる」
「もしかしたら私達ここに入って来た時から監視されてたりして」
アメリアは冗談交じりといった感じで言ったようだが彼女の方を向いたアーサーはそう思ってないようだ。
「気は抜くな」
そう一言言うと再び足を進め始める。
「魔王の間を確認したら一度退く」
そして魔王の間までの残りの道を進んでいくとそこではまるで訪れた者に威厳を知らしめるかのような両開きドアが三人を待ち構えていた。そのドアの前で立ち止まるとアーサーがアメリアの顔を見て一度頷く。彼女はドアの前まで行き正面入り口の時のように魔杖を翳した。
「待ち伏せは居ないかもしれないですけど、魔術で姿を隠してる可能性もあるので確実に安全とは言えないですね」
振り返ったアメリアはそう報告し二人の後ろに戻った。
アメリアと入れ替わりドアの前で並んだアーサーとマルクは同時にドアへ片手を伸ばす。
「開けるぞ」
アーサーの確認にマルクは聖剣の柄を握り頷く。そして二人が手に力を入れるとそっとドアは開き始めた。緊張感漂う中ドアの開く音だけが鳴り響く。
開かれたドアの向こう側に広がっていたのは、薄暗くも床があり戦闘のせの字も感じられない綺麗な状態の魔王の間。それはマルクが初めて足を踏み入れた時と同じ光景だった。
ただ違う点があるとすれば依然壊れた天井から飛行物体が顔を覗かせ、玉座に魔王が座っていないということだけ。
「床が元通りになってる」
死体や血痕を掃除することは数日あれば可能だろうが抜け落ちた床を元通りにするのは無理だろう。それ故、マルクは目の前の光景に目を疑う。
そして誰も居ない静まり返った魔王の間へ警戒しながらもアーサーとマルク、そしてアメリアは足を踏み入れていった。
少し足を進めたが敵らしき気配は依然と感じられなかった為、マルクは聖剣から手を離した。
「誰も居ないみたいですね」
「あれを見ろ」
その声にアーサーを見ると魔王の間の奥、丁度玉座がある方を指差していた。彼の指に導かれるように視線をその先へ向けると、玉座の後ろには思わず目を見開いてしまうモノがあった。
「何だ……あれ」
そこにあったのは巨人のものかと思わせる程に巨大な心臓のようなモノ。一定のリズムで脈打つように動き天井や床、壁に血管のようなモノを伸ばしている。それは薄暗さも相俟ってか不気味で不吉。
「うぇ。気持ち悪い」
アメリアも一歩後ろで眉を顰めていた。
するとそんなアメリアが急に表情を一変させアーサーとマルクの前に飛び出す。二人の視線を背に受けながらも魔杖を構え少し青みがかった透明なバリアを出現させた。
その壁のようなバリアは現れた直後、何かを吸収するように防いだ。恐らく不意を突いた攻撃だろう。
「あそこからですよ」
攻撃を防いだバリアが消えるとアメリアはそれが飛んできた方向を指差した。その指はあの心臓のようなモノを指していたが、指先はそのもう少し下の方へ向いている。
そこにあったのは何者かが腰掛けた玉座。薄暗い所為でその姿はよく見えない。だが攻撃を受けた以上敵である可能性は高く三人は警戒を強めた。
「#$%#”&!)”%”」
するとその何者かが発しているのか恐らく言語だと思われるが訳の分からない言葉が甲高い声で聞こえてきた。
「どうしましょう?」
相手がこちらの言語を理解出来るのかは分からないが念の為、小声でアーサーに指示を仰ぐ。
「今回は敵の数や兵器などの確認だ。退くぞ」
「分かりました」
アーサーの即決に二人は頷く。
「アメリア、あれに魔術攻撃を頼む。その間に一気にここを出るぞ」
「どれぐらいの強さで撃ちますか?」
「殺す気でいけ」
「了解でーっす」
指示を聞いたアメリアは自分の前(床から少し浮かせた状態)で魔杖を構えるともう片方の手を魔石部分に翳した。それから小声で呪文のようなものを唱え始めると彼女の足元が円形で光り始め、ローブがはためきだす。更に呪文を唱えていくと彼女の上空には巨大な円形の魔法陣が出現。その魔法陣は玉座に座る何者かに向け弓を引くように引っ張られ円錐へと形を変えた。
そしてアメリアが魔杖を両手で握り尖端部分を軽く叩くように床に着けると円錐から光の槍が発射。目で終えぬ速度で光槍が放たれるのと同時に三人は出口へと走り出した。
直後、背後から光槍の着弾を知らせる破壊音が爆音で響き渡る。その音を聞きながら走り続ける三人だったが、突如現れた人影がドアとの間に立ち塞がる。
しかしアーサーは立ち止まることなくその人影へ一気に接近するとエクスカリバーを抜いた。そして無駄の一切ない熟練された動きでエクスカリバーは対象へと斬りかかる。
だが鞘から抜かれたエクスカリバーの鋭い一閃は、立てられたたった一本の指で止められてしまった。
最上階に上がり魔王の間までの真っすぐに伸びたレッドカーペットを歩いて
いるとふとアメリアが呟いた。その言葉にマルクは共感を覚え立ち止まるとアメリアの方を振り返る。
「それは僕も思いました」
「何が言いたい?」
「僕たちが魔王城から逃げる際、魔物とアレから下りてきたと思われる人型が至る所で戦っていたのでもっとその痕跡が残っているかと思ってました」
「ということは制圧後、片付けたということか」
「でないとここまで綺麗なのはおかしいです」
「ここまで綺麗にしたということはここを拠点にしようとしている可能性は高い。だがだとしたら見張りが一人も居ないのは気になる」
「もしかしたら私達ここに入って来た時から監視されてたりして」
アメリアは冗談交じりといった感じで言ったようだが彼女の方を向いたアーサーはそう思ってないようだ。
「気は抜くな」
そう一言言うと再び足を進め始める。
「魔王の間を確認したら一度退く」
そして魔王の間までの残りの道を進んでいくとそこではまるで訪れた者に威厳を知らしめるかのような両開きドアが三人を待ち構えていた。そのドアの前で立ち止まるとアーサーがアメリアの顔を見て一度頷く。彼女はドアの前まで行き正面入り口の時のように魔杖を翳した。
「待ち伏せは居ないかもしれないですけど、魔術で姿を隠してる可能性もあるので確実に安全とは言えないですね」
振り返ったアメリアはそう報告し二人の後ろに戻った。
アメリアと入れ替わりドアの前で並んだアーサーとマルクは同時にドアへ片手を伸ばす。
「開けるぞ」
アーサーの確認にマルクは聖剣の柄を握り頷く。そして二人が手に力を入れるとそっとドアは開き始めた。緊張感漂う中ドアの開く音だけが鳴り響く。
開かれたドアの向こう側に広がっていたのは、薄暗くも床があり戦闘のせの字も感じられない綺麗な状態の魔王の間。それはマルクが初めて足を踏み入れた時と同じ光景だった。
ただ違う点があるとすれば依然壊れた天井から飛行物体が顔を覗かせ、玉座に魔王が座っていないということだけ。
「床が元通りになってる」
死体や血痕を掃除することは数日あれば可能だろうが抜け落ちた床を元通りにするのは無理だろう。それ故、マルクは目の前の光景に目を疑う。
そして誰も居ない静まり返った魔王の間へ警戒しながらもアーサーとマルク、そしてアメリアは足を踏み入れていった。
少し足を進めたが敵らしき気配は依然と感じられなかった為、マルクは聖剣から手を離した。
「誰も居ないみたいですね」
「あれを見ろ」
その声にアーサーを見ると魔王の間の奥、丁度玉座がある方を指差していた。彼の指に導かれるように視線をその先へ向けると、玉座の後ろには思わず目を見開いてしまうモノがあった。
「何だ……あれ」
そこにあったのは巨人のものかと思わせる程に巨大な心臓のようなモノ。一定のリズムで脈打つように動き天井や床、壁に血管のようなモノを伸ばしている。それは薄暗さも相俟ってか不気味で不吉。
「うぇ。気持ち悪い」
アメリアも一歩後ろで眉を顰めていた。
するとそんなアメリアが急に表情を一変させアーサーとマルクの前に飛び出す。二人の視線を背に受けながらも魔杖を構え少し青みがかった透明なバリアを出現させた。
その壁のようなバリアは現れた直後、何かを吸収するように防いだ。恐らく不意を突いた攻撃だろう。
「あそこからですよ」
攻撃を防いだバリアが消えるとアメリアはそれが飛んできた方向を指差した。その指はあの心臓のようなモノを指していたが、指先はそのもう少し下の方へ向いている。
そこにあったのは何者かが腰掛けた玉座。薄暗い所為でその姿はよく見えない。だが攻撃を受けた以上敵である可能性は高く三人は警戒を強めた。
「#$%#”&!)”%”」
するとその何者かが発しているのか恐らく言語だと思われるが訳の分からない言葉が甲高い声で聞こえてきた。
「どうしましょう?」
相手がこちらの言語を理解出来るのかは分からないが念の為、小声でアーサーに指示を仰ぐ。
「今回は敵の数や兵器などの確認だ。退くぞ」
「分かりました」
アーサーの即決に二人は頷く。
「アメリア、あれに魔術攻撃を頼む。その間に一気にここを出るぞ」
「どれぐらいの強さで撃ちますか?」
「殺す気でいけ」
「了解でーっす」
指示を聞いたアメリアは自分の前(床から少し浮かせた状態)で魔杖を構えるともう片方の手を魔石部分に翳した。それから小声で呪文のようなものを唱え始めると彼女の足元が円形で光り始め、ローブがはためきだす。更に呪文を唱えていくと彼女の上空には巨大な円形の魔法陣が出現。その魔法陣は玉座に座る何者かに向け弓を引くように引っ張られ円錐へと形を変えた。
そしてアメリアが魔杖を両手で握り尖端部分を軽く叩くように床に着けると円錐から光の槍が発射。目で終えぬ速度で光槍が放たれるのと同時に三人は出口へと走り出した。
直後、背後から光槍の着弾を知らせる破壊音が爆音で響き渡る。その音を聞きながら走り続ける三人だったが、突如現れた人影がドアとの間に立ち塞がる。
しかしアーサーは立ち止まることなくその人影へ一気に接近するとエクスカリバーを抜いた。そして無駄の一切ない熟練された動きでエクスカリバーは対象へと斬りかかる。
だが鞘から抜かれたエクスカリバーの鋭い一閃は、立てられたたった一本の指で止められてしまった。
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