エイリアンの侵略に人類は魔王と手を組んだ

佐武ろく

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未確認飛行物体8

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 それからヘクトラは自分の任務へと戻り、マルクは客室に戻って四ヶ国国王会議の開始を待つ。
 時刻にして十四時半。兵士の一人が客室に訪れマルクに会議の開始を告げた。そしてその兵士に連れられ向かった場所は城の最上階。見張り兵が開いた両開きドアを通り、マルクは部屋の中へと足を踏み入れる。
 そこは床と天井全てが真っ白で壁は無く、ガラス張りの広々とした部屋。だがそのガラスの向こう側にある景色はセルガラ王国――ではなく青空と青い海の絶景だった。
 そのまるで海のど真ん中に瞬間移動でもしたような景色に思わず目を奪われるマルク。

「来たかマルクよ。こっちじゃ」

 その声に部屋の中央辺りを見遣るマルク。
 そこには広々とした空間を贅沢に使っているというべきか無駄遣いというべきか角の丸い長方形のテーブルが一つ(短辺がドアにむくように)置いてあるだけ。
 マルクは呼ばれるがままそのテーブルへと近づいて行った。

「お待たせして申し訳ありません。マルク・ミルケイと申します」

 マルクは会釈をすると席に着く前にテーブルを囲い座る面々を一見した。
 右手前に座るのはセルガラ王国国王ヴァレンス・セルガラ。
 その隣に腰かけるのは、金髪のミドルヘアにライオンの如き双眸、国章の描かれた黒いマントを付けた黒き鎧を身に纏う青年。ログロット王国の若き国王であり常に最前線に立つことから騎士王の異名を持つアーサー・アウレリア。
 そして彼の正面に座っているのが、様々な簪で飾り付けされた頭にジト目。打掛を着て華奢な手に煙管を持った大人の魅力という言葉が良く似合う女性。その美しさは多くの男性だけでなく女性――性別問わず全てを魅了してしまう温羅靖《うらやす》国の国王であり鬼一《きいち》一族の現当主、鬼一陽花里。
 そして四ヶ国国王の最後の一人。高級シングルスリーピーススーツと後ろに流した黒髪のオールバック。コートを羽織り、掛けているアビエーターサングラスと顎にある短い傷痕が威圧感を与える少し歳のいった男性。彼の前には灰皿とハット帽が置いてあり、手に葉巻持つグレルラン王国ベイノバ・レイヴン。
 その四つの大国の王が一堂に会する場に参加したマルクは当然ながら緊張していた。

「では全員集まったことだ始めるとしよう。どうした? マルクよ。座って良いぞ」

 その許可を待っていたというよりその場の空気にまだ慣れていない所為で少し立ち尽くしてしまっていたマルクはヴァレンスにそう言われると椅子を引き席に着いた。

「失礼します」
「ではこれより緊急四ヶ国国王会議を始める。まずは今回急な招集に応じてくれたこと感謝する」
「こんな状況じゃ仕方ねーだろ」

 ベイノバは煙を吐くと渋声でそう言いながら灰皿に葉巻を置いた。

「そちは暇そうやからなぁ」

 すると小鳥の囀りのように綺麗な声で陽花里が茶々を入れてきた。

「こっちにだってやることはある」
「無駄話は終わってからにしろ。兵を待たせている」
「では早速本題に移るとしよう。まず状況説明をこの勇者マルクにしてもらう。頼んだぞ」
「はい」

 マルクはセルガラ王国を出発してから再び戻って来るまでのことを簡潔に話した。

「ですがマードファスも深手を負っていますのでそうすぐには動き出せないでしょう」
「現状、三つ巴ということか」
「だが魔王がその新手と手を組むという可能性もある」
「そうなったら今以上に厄介になるなぁ」
「ならばその新手が動き出す前に魔王を仕留めに行くべきなのじゃろうか?」
「弱ってるならばそれがいいが、所在不明な魔王をそう易々と探し出せるのか?」
「恐らく厳しいかと」

 一瞬、会話は途切れ仕切り直すかのように辺りは沈黙に包み込まれた。

「やけどその新手の目的も戦力も分からへんうちは下手に手だしするんは得策やないからなぁ」
「もし僕とマードファスを襲ったあの光が何度でも撃てるとすれば現状、攻め落とすのはかなり厳しいと思います」
「そうなるとやはり最悪の展開はベイノバも言っておったが魔王と新手が手を組むことじゃろう」
「だろうな。だが突然現れたかと思えば何の警告も無しに攻撃してきたことを考えると話の通じる相手じゃなさそうだ」
「どうするにせよ新手の偵察と魔王の捜索。この二つはやらないといけないと思うが?」
「アーサーの言う通りやなぁ。今は動かんとしてもそれはやっといた方がええわ」

 流石は一国を治める王。さほど時間は掛からず話はある程度まとまりを見せ始めた。
 そしてアーサーの意見に陽花里が賛成し、マルクも賛成の意を示そうとしたその時。

「魔王様を捜索される必要はありませんよ」

 その声はこの部屋に一つしかないドアの方から聞こえた。突如現れた謎の声にその場全員分の注目が集まる。
 ドアの前に立っていたのは、マードファスのと似ていたが形状の違うツノを蟀谷から生やし、目は黒い球結膜の黄色い虹彩、白い髪に肌は紫っぽく高貴な服装をしている魔族。手には普通の杖を持っており皆の視線が自分に向くと丁寧にお辞儀をして見せた。

「何者だ? それよりどこから入ってきやがった?」
「魔王を探す必要がないとはどういうことだ?」

 これまた流石は国王と言うべきか突然の魔族の出現に対しても誰一人、冷静さを欠くことは無かった。

「こういうことだ」

 すると今度は聞き覚えのある声と共にテーブルを叩く音が鳴り響いた。その声と音は揺さぶるようにドアとは真逆、丁度マルクの正面の席から聞こえ当然ながら五人の視線はほぼ同時に音の方へ。
 皆の視線の先にいたのは、テーブルに両足を乗せ我が物顔で座る魔王マードファスだった。
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