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未確認飛行物体6
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セルガラ王国に着くと彼らはその足でお城にある謁見の間へと通された。
そこでは王座に腰かけたヴァレンスが勇者一行を待っていた。威厳を感じさせる白髭を貯えた長い白髪の老人であり、高貴な格好をした如何にも王様といった雰囲気のヴァレンスの前に一列で並んだ一行からマルクは一歩前へ。
「勇者マルク・ミルケイよ。お主が無事戻ってきたということは魔王を倒すことができたのじゃな?」
尋ねる形ではあったもののその声は既に勝利への歓喜が顔を覗かせていた。
「それが。あと一歩のところまで追い詰めたのですが……」
「もしや、仕留め損ねたというのか?」
威厳を保ちながらも穏やかな表情を浮かべていたヴァレンスの顔は一変。一驚に喫する。
「はい。申し訳ございません」
申し訳なさそうなマルクの言葉にヴァレンスのみならず兵士も思わず驚きの声を漏らし、謁見の間が少しざわつきを見せる。
「ですがそれ以上に厄介な事が起きようとしているかもしれません」
更に続けたその言葉に、不安を呟く兵士とヴァレンスの注目が再びマルクへと集まった。
「どういうことじゃ?」
「僕らがマードファスを逃がしてしまったのは魔王城上空に突如現れた得体の知れない飛行物体から攻撃を受けたからです」
ヴァレンスがすぐに返事をしなかったのは恐らくマルクの言葉を理解するのに少々時間が掛かったからだろう。
「得体の知れない飛行物体とな?」
「はい。円盤型の飛行物体が今も魔王城上空に浮遊しております。あれが何かは僕らにも分かりません。ですがあまり友好的ではないかと」
「まだ魔王の脅威すら続いておると言うのに新たな問題事とは……」
思わず頭を抱えるヴァレンス。
「ですがマードファスも相当な深手を負っていると思われますので、そうすぐには動き出せないかと」
「不幸中の幸いといったところか。――うむ。とりあえず今日のところは傷を癒すといい。城の者に食事と部屋を用意させよう」
「ありがとうございます。それと仲間の一人が遅れてやってきますのでその者にも同じように食事をお願いいたします」
「伝えておこう」
「ありがとうございます」
マルクが頭を下げると後ろで三人も続けて頭を下げた。
そしてヴァレンスの命を受けた兵士に連れられ謁見の間を出た四人は客室へ案内された。
そこは入って右手にソファやテーブルなどが置いてあり、奥の方には六つのベッドが三つずつ両側に並べられた豪華な客室。その客室に感動の声を漏らしている四人にここまで案内をしてくれた兵士は一礼してから持ち場へ。
そして四人が部屋に入りソファで体を休めているとノック音が響く。マルクの返事で開いたドアから中に入ってきたのはメイド。彼女はマルクらの方を向くと丁寧に頭を下げた。
「ただ今お食事のご用意をさせていただいておりますので、その間にもしよろしければ浴場の方で疲れを癒されてはいかがでしょうか?」
「良いわね。こういう疲れた時は湯船に浸かりたいわ」
「そうですね。ゆっくりと浸かりたいですね」
お風呂という言葉にアリアとフローリーは声を弾ませた。
「ではお言葉に甘えていただきます」
「かしこまりました。ではこちらへどうぞ」
四人はメイドに続いて部屋を出るとお城の浴場まで案内された。
「こちらが浴場となっております。こちら側が男性用、こちらが女性用となっております。ただ、今の時間は皆さまの貸し切りとなっていますのでごゆっくりどうぞ。そしてセルガラ城の湯は特別な配合をしていますので疲労回復だけでなく傷などにも良く効きます。ですので少々染みますがしっかり浸かっていただくと治りが早くなるかと思いますよ」
「分かりました。ありがとうございます」
説明を終えたメイドは一礼をし、その場を後にした。
その後にマルクはもう一度二つの入り口がある浴場を見遣る。
「今はゆっくりと浸かって休もうか」
「そうですね」
「あぁー。早く汗流してあったかい湯船に浸かりたいわ」
「それじゃまたあとで」
そしてマルクと宗弥、アリアとフローリーはそれぞれの浴場へと別れた。
そこでは王座に腰かけたヴァレンスが勇者一行を待っていた。威厳を感じさせる白髭を貯えた長い白髪の老人であり、高貴な格好をした如何にも王様といった雰囲気のヴァレンスの前に一列で並んだ一行からマルクは一歩前へ。
「勇者マルク・ミルケイよ。お主が無事戻ってきたということは魔王を倒すことができたのじゃな?」
尋ねる形ではあったもののその声は既に勝利への歓喜が顔を覗かせていた。
「それが。あと一歩のところまで追い詰めたのですが……」
「もしや、仕留め損ねたというのか?」
威厳を保ちながらも穏やかな表情を浮かべていたヴァレンスの顔は一変。一驚に喫する。
「はい。申し訳ございません」
申し訳なさそうなマルクの言葉にヴァレンスのみならず兵士も思わず驚きの声を漏らし、謁見の間が少しざわつきを見せる。
「ですがそれ以上に厄介な事が起きようとしているかもしれません」
更に続けたその言葉に、不安を呟く兵士とヴァレンスの注目が再びマルクへと集まった。
「どういうことじゃ?」
「僕らがマードファスを逃がしてしまったのは魔王城上空に突如現れた得体の知れない飛行物体から攻撃を受けたからです」
ヴァレンスがすぐに返事をしなかったのは恐らくマルクの言葉を理解するのに少々時間が掛かったからだろう。
「得体の知れない飛行物体とな?」
「はい。円盤型の飛行物体が今も魔王城上空に浮遊しております。あれが何かは僕らにも分かりません。ですがあまり友好的ではないかと」
「まだ魔王の脅威すら続いておると言うのに新たな問題事とは……」
思わず頭を抱えるヴァレンス。
「ですがマードファスも相当な深手を負っていると思われますので、そうすぐには動き出せないかと」
「不幸中の幸いといったところか。――うむ。とりあえず今日のところは傷を癒すといい。城の者に食事と部屋を用意させよう」
「ありがとうございます。それと仲間の一人が遅れてやってきますのでその者にも同じように食事をお願いいたします」
「伝えておこう」
「ありがとうございます」
マルクが頭を下げると後ろで三人も続けて頭を下げた。
そしてヴァレンスの命を受けた兵士に連れられ謁見の間を出た四人は客室へ案内された。
そこは入って右手にソファやテーブルなどが置いてあり、奥の方には六つのベッドが三つずつ両側に並べられた豪華な客室。その客室に感動の声を漏らしている四人にここまで案内をしてくれた兵士は一礼してから持ち場へ。
そして四人が部屋に入りソファで体を休めているとノック音が響く。マルクの返事で開いたドアから中に入ってきたのはメイド。彼女はマルクらの方を向くと丁寧に頭を下げた。
「ただ今お食事のご用意をさせていただいておりますので、その間にもしよろしければ浴場の方で疲れを癒されてはいかがでしょうか?」
「良いわね。こういう疲れた時は湯船に浸かりたいわ」
「そうですね。ゆっくりと浸かりたいですね」
お風呂という言葉にアリアとフローリーは声を弾ませた。
「ではお言葉に甘えていただきます」
「かしこまりました。ではこちらへどうぞ」
四人はメイドに続いて部屋を出るとお城の浴場まで案内された。
「こちらが浴場となっております。こちら側が男性用、こちらが女性用となっております。ただ、今の時間は皆さまの貸し切りとなっていますのでごゆっくりどうぞ。そしてセルガラ城の湯は特別な配合をしていますので疲労回復だけでなく傷などにも良く効きます。ですので少々染みますがしっかり浸かっていただくと治りが早くなるかと思いますよ」
「分かりました。ありがとうございます」
説明を終えたメイドは一礼をし、その場を後にした。
その後にマルクはもう一度二つの入り口がある浴場を見遣る。
「今はゆっくりと浸かって休もうか」
「そうですね」
「あぁー。早く汗流してあったかい湯船に浸かりたいわ」
「それじゃまたあとで」
そしてマルクと宗弥、アリアとフローリーはそれぞれの浴場へと別れた。
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