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未確認飛行物体2

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 だが眼前に広がる衝撃的な光景に目を奪われ過ぎてマルクある重大な事を忘れていた。
 すぐ隣にはあの魔王がいる。この世界を恐怖に陥れた張本人である魔王を倒す為にここまで旅をしてきたマルクとその仲間達。しかしそれを一瞬忘れさせる程に今の状況とその光景は奇怪で驚愕的だった。しかもまだ上が敵かどうか定かではないが、隣にいる魔王は完全に敵。いつ襲われてもおかしくないとマルクは慌てながら身構え隣を向いた。
 だがマルクが思っている以上に現状は異常だというこを、眉を顰めながら空を見上げるマ―ドファスの姿は語っていた。そしてこの状況をどうすべきか、マルクがほんの数秒思考を巡らせている間にも又もや戦況は一変。
 二人の周辺には(それが瞬間移動かワープかは定かではないが)突如、人型の何かが姿を現した。それはコートとそれに付いたフードを被り、無駄がなく動きやすそうな格好をした全身黒ずくめの人型。更に顔の部分には真っ白で無表情の仮面を付けている。そして手には円の形を思わせるのマルクが見たこともない武器。
 それは当然と言うべきか、現れたのは一体ではなく絶体絶命と題名が付けられそうな程の人数だった。

「(人のような形をしているけど、上のアレから来たなら人かどうかは分からないか)」

 そしてすっかりマルクとマ―ドファスを包囲したその人型は持っていた武器を二人に向け構えた。
 ――攻撃が来る。それは分かっていたもののマルクにはこの未知の武器が一体どのような攻撃を仕掛けてくるか予想すらできなかった。それ故、どう対処すべきかもすぐには思い浮かばない。
 だがそう迷っている時間も無さそうだと一人していた自問自答を止めようとしたその時。視界の端で同じく脅威を感じたのだろうマ―ドファスが組んだ両手を頭上に振り上げるのが見えた。
 そして床に叩きつけた両手を中心にして魔力が這うように広がり一瞬にして壁まで到達。すると床は凸凹になりながら崩れ出した。その所為でバランスを崩したマルクはその場にしゃがむが、そのまま周りの武器を構えた人型とと共に下の階へと落ちてしまった。
 何とか無事だったものの辺りは瓦礫で滅茶苦茶となり、舞い上がった粉塵の所為で状況を上手く把握出来ない。取り敢えず体を起こしたマルクは周囲を見回した。彼の中で発芽していた心配の種は、マ―ドファスの行方でも人型の事でも、上空に依然と見える謎の飛行物体でもない。
 ここまで共に旅をし勇敢に戦ってきた仲間達の安否だった。だが粉塵は中々晴れず仲間どころか人影すら見えない。

「アリア? ゴウ?」

 自分の生存と大体の位置を知らせる事になるのは分かっていたが、その情報を差し出しても仲間の安否を気にかけたマルクは大声で名前を呼んだ。
 だが返事は返ってこない。その代わりと言わんばかりに横から粉塵に紛れたあの人型が襲い掛かる。その気配に直前で気が付いたマルクは構えた聖剣で攻撃を受け止めた。

「クッ!」

 それは先程と同じ人型ではあったものの持っていた武器は異なり剣。剣身は刀のように細いが両刃、目立った鍔はなく刃から柄頭までほぼ直線。そしてその剣は聖剣の光さえも呑み込んでしまいそうな程に光沢のない黒色をしていた。
 そんな剣との鍔迫り合いを、マルクは体も上手く使いながら一瞬に力を込め押し返し終わらせた。相手の態勢は崩れ剣を握る両手が頭上へ弾かれた。それにより胴に生まれた大きな隙を聖剣が容赦なく狙う。一閃により体へ血の斜線が引かれた人型は赤い血を流しながら崩れるように倒れていった。
 そして辺りの粉塵が薄れ視界が晴れ始める中、マルクは後ろを振り返った。徐々に粉塵が薄れていくにつれ人影が見え始め、次第にその姿がハッキリと見えていく。
 それはあの人型だった。だが手に持っていた武器は未知の物ではなくつい先ほど襲い掛かってきた人型と同じ黒く細い剣。その野次馬のように集まった人型は数えるのも面倒になりそうな数だった。

「とにかくみんなを見つけて早くここから脱出しないと」

 そう呟きながらもまず優先しなくてはならない目の前の人型から視線を外さず聖剣を構える。そんな彼に反応し人型の群も一斉に剣を構えた。
 動き出したのはどちらが先か分からないほどほぼ同時。マルクはすぐに人型の波に呑み込まれた。
 自分が圧倒的に不利であることを理解していたマルクは戦いながらどう勝つかではなくどう仲間を連れこの場を脱するかを考えていた。だがあくまでも現状で自分が生き残ることが優先。なるべく足を動かし一人に対しての戦闘時間を出来る限り短くしながらも辺りに注意を払う。
 剣と剣がぶつかり合う金属音が絶え間なく鳴り響き、鮮血が宙や床に吐き捨てられるように飛び散る。思考を巡らせながらも確実に数を減らしているはずだが全くと言っていいほど変わっている実感はない。
 しかも魔王との激戦による疲労に加え、止まること無く動き続けていたことで次第に息は上がり、足は錘が付けられたように重くなっていく。時間経過と共にそれはより荒く、より重く。

「くッ! このままだと……」

 ついには瞬間瞬間への対処で手一杯となり、思考する余裕すらなくなってしまった。
 そして目の前の人型を斬りその場から離れようとしたその時――蓄積された疲労の所為で脚に十分な力が入らずバランスが崩れてしまう。
 そんな肉体を支えたのは彼の強靭な精神だった。そのお陰で何とか倒れずに済んだもののその数秒というロスは大きく背後には既に別の人型が立っていた。
 振り向きその姿を確認した頃には剣は既に振り上げられマルクと目を合わせた。

「(間に合わない)」

そんな諦め混じりの言葉がマルクの脳裏を過る。
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